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11~20話

過去と現在【下】

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「……まあ、祭り好きな連中ばっかだからな」

「ルークに便乗して騒いでただけってこと?」

「それもでかいだろうな。――だが、チェリアが第六の全員に好かれてんのは事実だ」

「全員に!?」

 きっぱりと断言したディノに驚く。
 全員ともなると、さすがに私の魅力だけでは説明がつかない気がする。
 実験中の薬に『魅了』の作用が出るようなものはあっただろうか……?

「みんなチェリアには感謝してっからな」

「――――えっ、感謝?」

 んん? 恋愛感情でなく、感謝??

「ああ。第六部隊のためにいつも良質な薬を納めてくれるだろ」

「? そんなの担当なんだから当たり前じゃない。何も特別なことはしてないわ」

 別に第六部隊を特別扱いしているつもりはない。
 第一の担当になれば第一のために、第二の担当になれば第二のために、同じように尽力していただろう。

「その『当たり前』が、俺らにとっちゃあ『特別』だったんだ」

「……どういうこと?」

 そうしてディノから聞いたのは、魔法薬師たちのあるまじき実態だった。



 直接王族の命に関与することもある王宮魔法薬師は選民意識が強く、いかに『命の価値』の重い人間に関われるかがステータスとなっている。

 そんな環境で、平民出身者の集まる第六部隊に進んで関わろうとする人間などいるはずもなく。
 魔法薬師長の命令で嫌々第六部隊の担当とされた魔法薬師は、ある者は納品をすっぽかし、またある者は出来損ないの粗悪品をかき集めて寄越したのだという。

 難関試験を突破してお城に上がり、二年の見習い期間を経てようやく魔法薬師を名乗ることが許されたばかりのひよっこに、騎士団一個隊の担当などという大役が回ってきたのもそのせいだ。
 三年前、延々と平民に携わる無益さを愚痴りながら担当を押しつけた前任者は、ひどく清々した顔をしていたものである。

 そのため、他の魔法薬師たちが平民出身者を差別しているのは知っていた。
 残念ながら人の好悪ばかりは、周りが口を出してどうにかなるものでもない。

 しかし――だからといって薬の納品をおろそかにするなど言語道断だ!!

「信っじられない! 人の命をなんだと思ってるのかしら!? 同じ魔法薬師として許せないわ!」

 そもそも『命の重さ』なんて考え方がおかしいのだ。
 転んで擦りむいた国王と、重傷を負った平民が並んでいたなら、間違いなく平民の元に駆けつける。

「もう過ぎたことだ。今はチェリアがいる」

「もちろんよ! たーんと頼ってちょうだい!」

「ははっ。――そんなチェリアだから好きなんだ」

「――! っ……みんなに感謝されてるってことね!」

 面と向かって『チェリアが好き』なんて言うものだから、一瞬変な誤解をしそうになったではないか!
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