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11章 禁則領域 『異世界創造の主要』
書の1前半 掟、破りますか?『負けるとヤバイんですよね』
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■書の1前半■ 掟、破りますか? will be breaking away from placed properly
「あたしから言わせるとね、どうしてそこまで全否定するかなぁってトコなのよ」
「だぁから、怖いんだろ。『幸せに』出来ない可能性の方が高いと思っていてどうにも自信が無い。……俺と一緒に居ちゃダメだ。そう信じている事はあっちもこっちも同じで……」
なんか巫山戯てるな。
自分の事なのに『こっち』に来るとまるで、他人事のように言えてしまう。
大陸座イシュタルトとのトラブルが終わってちょっと疲れて、俺は崩れかけた壁に寄り掛かってアインと話をしている。
小竜のアインさんは例によって可愛く小首をかしげて俺の頭上から言った。
「んー……まぁ『あっち』の都合はまずいいわ。こっちの都合だけで考えましょう。……ヤトが今どういう状況になっているか、私はちゃんと把握してると思うけど一応、その確認取ってもいい?」
「……どうぞ」
俺は恐る恐る、頭上に両手を掛けて乗っかっているチビドラゴンに言葉を促す。
「その体、代替なのよね。いっちばん最初にログインしたヤトの体じゃ、ないのよね」
「恐らくは」
「切り替わったのってタトラメルツ?」
「だろうと思うが記憶があやふやだ、ログも全部戻ってこねぇ」
「ようするに、そういう風に混乱しているのはログを残すべき経験を行う肉体が切り替わったから?」
「かもしれねぇ」
アイン、何も考えていないようで中身はちゃんと……何っていうか、ちゃんと考えられるヒトだ。ようするにアインさんだって事なんだけど。外見10歳未満のチビドラゴンだけど、条件転生したという仕掛けがある通りだな。
アインの中身は経験値的には年齢不詳だ。外見に合わせて日々のほほんとしているけれど実際、このチビドラゴンは頭がいい。
「代替を用意したのはナドゥなのね」
「そういう事を出来るのは奴くらいだろ……今の世界情勢やら文化レベル的に」
リオさんの話を聞くに代替……ようするにコピー。肉体の、精神が伴わない複製技術というのは三界接合というらしい。
この技術は違法だって話だ。魔導都市において『表上は』扱っては行けない技術として正式な技法がシンク、ようするに失われている。そういう違法技術を使う訳でもないのに追っかけたリオさんは異端として魔導協会を追い出されたと言っていた。
「もちろん、どうしてニセモノの方にヤトが、青旗が付いちゃったのかって事は……」
「わからん」
アインは俺の頭上でため息を漏らした。
「赤旗に感染しているのに青い旗で上書修正、って状況になったのはその所為なのね」
「……そうなんだろう」
曖昧な事しか言えなくてすまねぇな……。
レッド、奴はどうなのだろう。この俺の曖昧な応答を、そうです、その通りですと答えるのだろうか。
そう答えるだけの理論をすでに揃えているのだろうか。
……違うか。
理論が揃いつつあったのだろうと思う。それでも感情で、そうであって欲しくはないと奴は願ったのかもしれない。だから、それを決定付けてしまう場面を奴は……避けたんだ。
本当に『俺』が戻るべき体、本当の俺っていうのはこの世界では、どっちなんだ?意識の方が本物だと俺は信じているが、体と心が別々になってしまって片方が置き去りにされた時、自分だって認識が出来なくなった方が偽物だと言い切る事は出来ないだろう?別々になる事自体がアレだとはいえ。どっちも本物だ。どっちも俺には違いない。しかしそれで別の、完全に偽物と云える方に心が宿ってしまって『俺』になっちまっている現在進行形、この状態はどうなんだ。事態をややこしくするだけで何も良い事が無い。
なら、そんな事は無かった事にすればいいんだ。
混乱していたのか、それとも冷静だったのか……俺は、自分の死に掛けの、本当の体に止めを刺してしまった事を、今もまだ……なんというか、戸惑っているな。
本当にそれでよかったのか、って。
「……殺しちゃったのよね」
「ああ……」
殺してみろと挑発された気がしたんだ。
あの腐った目で、出来るものならこの俺から存在の場を奪ってみろと呪われた。辛い立場だろう事は把握できる、ひとえにそれも俺だからだ。それなのに俺は『殺せ』とは願わない、いや。願えない。
あの時『俺』に出来るのは挑発だけだった。そうやって俺は、奴から挑発され……その挑発に乗った。
「ありゃもうダメだ。肉体的にも精神的にも、あいつじゃ魔王八逆星をぶっ倒せないだろうし……この世界も救えない」
そうする事が、ひっくり返って奴にとっての救いになるのだと信じたのだろう。
過去を振り返ってみても、あの時の自分の事がよく、理解出来ない。最適解だったと思っている。生かしておいたって絶対ロクな事にならないぞ、アベルになんか会わせて見ろ。あいつは、どっちも救うと言い出すだろう。あの死にかけの『俺』が、俺の立場を脅かす事になる。
そんな事、俺は……多分望んでいない。それはソレが俺だからこそ、分かっている事じゃないか。
でも本当に……最適解だったのかと、今更躊躇している自分も居る。
「ヤト、がんばっているのね」
「がんばっている?……なんだそれ?」
俺は頭上のアインを見ようと目を上に上げるが、辛うじて見えるのは彼女の下顎だけだった。
「本当はもうゲームオーバーになってたんだよね。それで素直に別のキャラクターで始めればいいのに。それも出来たのに、あたし達がお別れしたくないから……がんばっちゃったんでしょ」
ようやくつながった絆を失いたくない。時に人はそういう縁でもって救われ、繋がれ、がんじがらめだ。
俺は笑っていた。可笑しい事を言うぜアイン。
「そりゃがんばるだろ。リセット押すような安易なプレイは出来ねぇよ。リセット押さなくて済むなら、例え茨の道でもがんばっちまう、俺はそういう……そういうキャラだからさ」
プレイヤーの奴はともかく。
「本当にそう思っている?」
「勿論だ、だから……今は信じる。俺がヤトだってな、誰から何を後ろ指差されたって……負けねぇ」
アインはとん、と俺の頭から飛び降りた。
俺が座り込んでいるのは崩れたクルエセル闘技場の外れにある芝生の上、雑草も混ざったその景色の中で、赤いチビドラゴンはスキップを踏むように俺に振り返る。
「よし、じゃぁこの話はいったん終わりよ。次の事を改めて聞くわ」
「……何をだよ」
びしり、と羽で指される。
「どうしてそれでも『幸せには出来ない』とかって逃げるのよ!アベちゃんの問題から!」
「うっ!」
そ、そこをまだ責めますかアインさん!
「何?種族的な事とか気にしてるの?種族なんて関係ない!とかアタシに言ったじゃない」
「も、勿論種族的な事とは関係ないぞっ!だから、ええと……所属社会的な事も問題ではなく……」
「いーじゃない!どうして努力するとか、がんばるとか、前向きに善処するとか、口先だけでも良いからそうアベちゃんに言ってやれないのっ!?」
かなり激しく感情的に罵られ、俺はそっぽを向いてしまった。
「口先だけじゃまずいだろ?」
「そんな事ないわよ」
「嘘だったって、そんな事後から言えない。嘘ついたらいつまでも嘘を突き通さないといけないんだぞ……いつまでもだ」
「レッドはどうなるのよ、散々『嘘でした☆』とか言う子もいるんだから」
「奴はそうやって実は嘘でしたと言うのが、言うに言えなくて苦労したんだろ。違うのか?」
俺の言葉にアインは少し考えるように小さな腕を組む。……いや、実際にはちゃんと組めてない、手もとい前足が短いので届いてないんだけどその仕草が無駄に可愛い。
「どうしてそこまでしてダメなの?」
「……アベルが好きなのは……俺じゃないんだよ」
溜息混じりに漏らした答えに、アインはあきれたように首を少し突き出す。
「はぁ?じゃぁ他に誰が好きなのよ」
な、なんだか……この話はもう嫌だ。こっちが赤面するわっ!
ええい、仕方がないので説明してやるぅッ!
「……アイツが好きになった奴は悉く死んだんだ。一人は病死、もう一人は……エトオノをツブした罪で打ち首」
「何それ……そうなの?」
俺が冗談を言っているようには見えなかったようで、アインはその先を説明するように促してきた。
「ああ、そこは嘘じゃぁない。死んだんだよ。アイツが追いかけている人物はもう死んでいるんだ。ようするに……あいつはそこを勘違いしている。その勘違いをあいつが解かない限り俺とはすれ違い続ける事になるんだ」
それで恐らくアインはからくりに気が付いた様だ。
俺とアベルとテリーの関係性、エズに来て何やら不審な俺の行動、バーのマスタの言動。
間違いなく俺に呼びかけたと思われる、謎の名前。
間違いなくこのチビドラゴンの中の人、頭が良い。
「……じゃぁ、改めてやり直せばいいのに」
「それが出来ないんだろ、俺には」
やっぱり人事のように俺は、言う。
「どうして『そいつ』がそういう事になったのか、どうしてそういう覚悟をしたかって事があるんだ。俺は……『そいつ』の行為をこれ以上アイツに踏みにじられたくない。理解しないのはどこまでもアイツだ」
アベルの事を思って選んだ結果。その結果を受け入れて欲しいんだ、俺は。
「でもさ、相手アベちゃんだもん。理解しないって事がヤトは分かってない」
……なんだそれは?
何を言われているのか分からず俺は怪訝な顔をしてしまう。
「ごめん、どっちもこっちも混ぜるけど……ヤトは分かってないのよ。アベちゃんの方向音痴、直りそうもないでしょ?それと同じ。彼女は理解できないの。貴方が理解して欲しいと思っている事、全く理解できないのよ。それを理解させようって思っても無理」
「んな、理不尽な!」
「そうねぇ、そうなのかも。理屈じゃないのよきっと。あたしはまぁ、それなりに萌える理屈があってドキドキするわけだけど。でもどうしてそれに萌えているのかは必死になって考えても結局答えなんて出ないもの。好きなものは好き、そう言う事」
ぴょんと両足を揃えて小さくジャンプ、アインは足を投げ出している俺の前に近づく。
「理屈なんてどうでもいいでしょ。感情はどうなの?」
感情。
俺はそれを考えた途端胸が苦しくなり、俯いてアインから顔を背ける。
「何度も言わせるな……俺が好きなのはお前だ」
「ヤト!」
「でも、誰よりも守りたいのはアイツだ。誰よりも幸せになって欲しいと願っている人はアイツだ」
そっぽを向いた先に、壁が在ってそこにしがみつくように生えている蔦に、赤と白の花が付いているのが目に映る。逃げる様に、そいつを見ている。鮮やかな赤い色、それは……アイツを象徴する色だ。
龍族種の先祖返り種、とか云われている。真っ赤な深紅の瞳と、燃えたつような赤い髪。
「アベルはさぁ、色々と不幸すぎるんだよ。だから、……ごめん、俺が本当に守りたい相手は好きな人じゃないんだ。アイン……お前じゃない」
思いのほか素直に言えた事で逆に、俺はさらに胸が苦しくなって口が無様に歪む。
「……そこは謝る所じゃないわ」
さらに両手で顔を押さえる。
「……努力なんて無駄だ。何よりホントは嘘付きたくねぇ。俺ぁ死ぬ。奴より先に死ぬんだ。生きたいだなんて我が儘は言えない、言いたくない。でも俺は……ホントは、生きていたくないんだ」
心の底に潜んでいる願望をゆっくりと引き上げる。
「最悪の連続でもう楽になりたいと願ったらやっぱり、そこは死にたいって事になるだろ?誰だってそうだ、そうだよな?何で俺はこんなに足掻かなきゃいけないて苦笑いしながら、俺は何時死ねるんだろうとか自分の消滅を待っている。昔からそうだったんだろう。そうだって気がついてなかっただけだ。どうしても生きていくという想像が出来ないんだよ。未来が描けないんだ。自分が何をしたいのかよく分からない、そういう生き方はするなといろんな人に尻叩かれながら……」
それでも、そんな願いを忘れた瞬間があって。
誰かの為に何かが出来たら、俺はそれが幸せかもしれない。
何も出来ない、何をすればいいのか分からないこの俺が、誰かの幸せの為に何か出来るとするなら……。
それは素晴らしい事のように思えたんだ。
がむしゃらに成れた。がんばれちゃった。それで全ての辛い思いを忘れていられた。
それは俺と誰かが幸せになる方法じゃない。
それは、俺が一人幸せと感じる事だった。
誰かと手を取って、二人で幸せと言える事じゃぁなかった。
そう云う事だ。
「がんばってみる、でも無理だったと言うのが辛い」
「……ヤト」
「だったら突き放しておきたい。彼女には、諦めるって手段があるし方法があるだろ?俺はそれを選んで貰いたいと願っている。それがアイツに願う俺の幸せだ。……もうほっといてくれ」
「ダメよ、放っておけないわよ!ヤトがそういうキャラだってのはよく分かったけど、一方でアベちゃんも『ああいうキャラ』ってのがあたし、分かってるもん!」
アインに頭を小突かれて俺は項垂れていた頭を抑える。
「分かるもの、アベちゃん、ヤトが思うようには絶対折れてないわよ?」
「………かもしれん」
俺もこれで付き合い長いもんで、そんな奴の態度が予測できてしまったりするのだ。
実に、絶望的である。
「どうするつもり?」
「となりゃ、まぁ何時も通りにするしかねぇんだろうなぁ……」
ようやく苦笑になった顔を上げる。
「何時も通りって?」
「だから、何時も通り……さ」
うぅう……ん。
……なんだこの音。
目覚まし……じゃねぇ。本日バイトは休みだ、目覚ましは惰眠をむさぼるべく止めてある。携帯着信音でもねぇ、なんだこのうるさい音。工事?
……あぁ、ブザー。
誰かがトビラの前に来てますよお客さんですよ出てくださいご在宅の方~というブザー音ですか。
ようやく呼び鈴の音と認識しつつ俺は、起きるつもりが無くて寝返りを打った。
新聞契約お断りだぜ、どうせセールスだろ。俺はテレビなんぞみねぇし政治経スポーツ情報あと芸能ニュースも興味ねぇ。ゲームがあればそれでいい、うぜぇ。
なんで呼び鈴なんてものを常備させやがるんだ家のトビラには。憎々しい、配線切って置こうか……いや、備品壊したら敷金減るから電気配線を引っこ抜く程度にしておこう。
基本的にブザーを鳴らすような客は居留守を使う事にしている。俺の大切な睡眠を邪魔するんじゃねぇよ。
そのように布団を被るが……。
くそ、まだ諦めてねぇ……せっかくの眠気が覚めてきたじゃねぇか畜生。
被った布団を耳元できっちりと閉めた時、耳に付けていたMFCデバイスツールの違和感に気が付く。
……そういやR・リコレクトしてたんだった。
ん?ドコ反復してたんだっけ?
ブザーがようやく鳴りやんだ。ふぅ、とため息を漏らした所今度は扉を叩く音に切り替わる。
くそ、いい加減にしろ!いねぇっつってんだろ!
「ちょっと!開けなさいよ!」
くぐもった声が聞こえてきて俺の背筋に冷たいものが走り抜けた。
ついでに、今見ていた夢の内容をぼんやりと思い出したりしていた。何か、想い出すスイッチが入りやがったんだな。
入って欲しくないスイッチなんだが。
息を潜めそれでも居留守を使う俺。そうです、俺チキン属性ですから。
そしたら枕元に投げてあった携帯がバイブレートする音に無駄に驚いてしまう。繰り返しますが俺はリアルでチキンなんです!
見たくないのだが見てしまう。メールか、畜生……どうせ何が書いてあるか分かっているのだが見てやるよ。
そんな具合で目をこすりながらメールを開く。案の定、阿部瑠からだ。
『そこにいるのはわかっているぞ!!!!』
あー……そういや、昨日、今日はバイト休みなんだと言ってしまった気がしてきた。俺、軽率過ぎる。
頭を掻いて仕方が無く返信。
『朝から何の用だ』
『朝じゃない、もう昼』
ばかやろう、テメェの用件を聞いているんだ。ツッコミを待ってるんじゃねぇこのアホ!どアホ!
ガチャガチャドアノブを回す音がするので俺は、仕方がないからこのどーでもいいツッコミに返信。
『待て、リアルに今起きた。30分待て』
そんなに待てない、と返って来るかと思ったがそうではなく。
『了解、じゃぁ30分後また来るわ』
俺は慌てて飛び起きた。
ふふふ、バカめ!ならば俺は20分で身支度を調えさっさとこの部屋から脱出、見事貴様から逃げおおせてみせるわッ!
慌ててシャワーを浴び頭を洗って髭剃って、服を着て扉を開ける。
「あ?」
「あぁ、おはようございます」
トビラを開けた先には、携帯電話を弄っている……レッドが手摺りに寄りかかって待ち構えていた。
「早いですね?19分、30分待ってくださいではなかったのですか?」
「………?」
俺は状況判断が出来ておりませんしばらくお待ちください。
「この距離だと……瑠衣子さんはコンビニに着いた頃でしょうかね。引き留めましょうか」
そう言ってレッド、恐らく……動作からしてメールを打ち始めた。
「……え?」
まだ追いついておりません俺。もうしばらくお待ちください。
「外出、されるのでしょう?」
にっこり微笑んで尋ねられ……まぁ、確かに外に出る為に靴下履いてズック引っ掛けて鞄肩に掛けているのだから言い逃れは出来ない訳で……。
「昼も過ぎてますしボクら腹ぺこですよ。コンビニ弁当、正直好きじゃないんですよね」
メールでやり取りしたから扉の向こうにいる相手は阿部瑠一人だと思ったがそれは、単なる……俺の思い込みだよな。
しかし、なんでどうしてレッドが俺の家の前にいるのだろう?そこら辺がよく分からん。安易に自分家の住所を教える程俺は不用心ではない。テリーにばれてしまったのはかなりイタかったが、ナッツの紹介となると文句が言えなかったりする。
まさか、またテリーの野郎かっ?
「ああ、ちなみにボクが案内をお願いしました。瑠衣子さんに」
ふっとレッドがのろのろな速度で後ろをついて歩く俺を振り返る。
「……何が?」
「だから、どうしてボクが貴方の家にいるのだろうとか考えていたのでしょう?」
ザッツライトでございます……。
「すいません、事前に問い合わせるのが筋なのでしょうけど……瑠衣子さん曰く、OKの返事を待っていたら永遠に来ないわよと言われまして……この通り」
成る程強引に……こうなったと。アイツがしでかしそうな事だ。俺は額に手をやって長い前髪を掻き上げる。
「で、何の用だ?」
「……特に用事は」
なんだそれはと俺は呆れた顔を向ける。
「まぁ、お会い出来てごはんでも一緒に食べられたら良いかなと、それくらいです。お酒でもいいですよ」
「冗談言うな、俺は今晩狩り日だ」
ええと、ゲームな。別のゲームの定例だッ。
「アルコール、弱いのですか?」
「お前はどうなんだ」
「どうなのでしょう?好き好んで飲んだりはしないもので。……ご迷惑なら瑠衣子さんにはボクから言っておきますが、これからどちらにお出かけですか?」
いやだから、お前というかお前らから逃げるために……だな。
というか俺、逃げる先としてフツーにお前の縄張りのファミレスとか目指すつもりだったのに。
ようするに阿部瑠から逃げて、レッドやマツナギ、メージンらが会っている町まで移動してメシ食おうと思ってたんだけど。
この流れだと……そこに阿部瑠も行くんだよな……はぁ。
レッドが奴を誘ってしまったのだからしょうがない。
俺の安息の地はたった一週間で破られてしまったようです。
どうしてそこまで全否定するかな?
怖いんだろ?そう……出来ない可能性の方が高いと思っている。
自信がない。
ええと、何が?って。だから……
お前を幸せにする事は俺には出来ない。
そう云う事が。
ふつーさぁ、恋愛沙汰で破局したらそこで関係性はメタメタになるもんじゃねぇの?俺はその覚悟をして阿部瑠を振ったつもりだったんだけど、どうした事かグダグダとお友達関係が続いている。
俺が悪いのか奴が悪いのか……もぅよくわからん。
これがいつもの通りだ。
同じ趣味の話をしてグダグダと世間話になって、笑いながら冗談飛ばして軽くドつきあって。
まるで何事も無かったかのように友人としてが続く。
友人だよな?うん、友人以外のなにものでもない。
なら友人も辞めろ?うん……俺はそれを覚悟してチキンなりにかなり勇気を振り絞ったつもりだったのだがな。ぶっちゃけてさ、友人を辞めるのも結構面倒なんだぜ?
それに、俺は奴が嫌いというわけではないしな。ん?いやいや嫌いなんですけどね……うぐ、我ながら矛盾している。
というか、人を好きになるのも嫌いになるのも同じくらいにエネルギー使うんだよ。好きだ嫌いだって気を回すよりは、何も考えずに友人として付き合ってた方がエネルギー使わない気がする。
ようするにだ、エネルギー使いたくないわけよ俺は。好きになるのもメンドーだけど、嫌いだと言って距離を取るのに必死になったりするのもメンドーだろう。
ようするにだ、メンドーなのだ。メンドーなのが嫌なのだ。
あと……ええと、ごめん。
ちょっとキレイに言い過ぎたかもな。
ぶっちゃけると嫌いなんだけど嫌われるのは嫌なんだ。どんだけガキの理論だってのは分かっているが。嫌なものは嫌なのだからしょうがない。
俺は嫌いだが俺は奴から嫌われたくない。
なんだそれ。
振ったら嫌われるだろうに。でも、俺の本心は嫌われたくない、だ。
だからもの凄くがんばって俺は奴を振り払った。もの凄い覚悟をして俺は、がんばって面倒を承知で『お前を幸せにする事は俺には出来ない』と言ったつもりだった。
なのに何でそっちの方向に『がんばるのだ』と言われて、奴は……俺の言葉を受け入れてくれなかった。
俺はきっと人一倍好きだ嫌いだって事にびくついているだろう。世間は怖い、そのように逃げている自覚はモーレツにある。俺はこの俺の状況を改善するつもりがない。ええ、ありませんとも。てゆーか、改善できるはずねーだろって思ってるもんな。無理無理。
夕方になり、バイト上がりのマツナギと学生のメージンが面子に加わった様子を俺はぼんやり適当に受け入れながら、昨晩から今朝にかけて夢の領域で反復した経験を思い出している。
夢だからはっきりとはしていないが、俺は一人その反復を何度か行っている所為で夕方になってもまだ、トビラの世界の事を考えていた。
全部は無理だ。当然だ、情報量が多すぎる。
でも一つだけ、強烈な印象を受けて忘れられない所がある。
それはすでに現実にあった事で、それが夢の中で繰返されていて……。
なーんで俺は、あっちの世界でも彼女を振らなきゃいけないんだろう?そういう所な。
別の展開くらいあってしかるべきだろうよ。そもそもリアルと同じ背景に誰がした。誰がそんな事望んだ。
俺は現実ではチキンだ、ダメ人間だ。その自覚がはっきりあるが、仮想世界までこのチキンでダメな属性を持っていった憶えは無い。
ゲームの中で演じているキャラクターは間違いなく、俺がそうありたいと願う姿をしているはずだ。脚色してキャラメイキングしてもプレイヤーの癖はどうしたって出る。それに合わせてキャラクターが背負った背景が決まっていくようだった。
いや?それは俺達が異世界に乱入する前から決まっていた事だよな?そうでなければ理屈が合わない。
変だ、世界というのは俺の為に在るものじゃない。当たり前の話だ。
現実においては、世界の上に俺達がいる。
でも、今まで俺達が楽しみ、親しんできたコンピューターゲームというのはその当たりの事情がちょっと違う。ソフトという名前のゲームプログラムと、ハードというプログラムを走らせるマシン。それらをプレイヤーが組み合わせて動作させる事でそのゲームの『世界』が始まる。あるいは今だとソフトの替わりにネット環境に繋がる事が要求されるかな。
ともあれ、プレイヤーの為に世界がある。
ゲームの中にある仮想世界は、プレイヤーの為にある。
であるからしてゲーム上のシナリオで、普通はあり得ないような特殊な立場にプレイヤーが置かれ、プレイヤーの采配で『世界が回る』。
この在る意味特殊なセカイとジブンの関係性をリアルでも勘違いしちゃう奴がいたりして、そういう奴らの所為でゲーム脳だとか何とかゲーマーは叩かれたりするんだろうと思うが、どうなんだろうな。良い迷惑だ。
本当の世界というものはゲームみたいに容易く自分や、個人の都合でかき混ぜる事なんて出来ない。いや、今世界はそれが出来てしまう時代になっているのかもしれない……方法にもよるけど一個人の所為で少なからず社会が混乱したという事件は幾つかあったと思う。
電子掲示板に架空の虐殺予告なんか書いたアホがいて、それがアホな悪戯だった場合とアホな現実だった場合があって現実が惑わされている。
そのように社会を混乱させる手段が在る事が問題じゃねぇだろうと俺は思っているし、そのあたりの憶測は社会の一般とズレてはいないのかもしれない。
現実はゲームじゃない、だからたとえ出来たとしても、個人の都合で世界を狂わせてはいけないんだ。
それをやってもいいのは仮想現実、ゲームの中だけ。
世界を変える?その手段がある?誇大妄想も良い所だぜ。果たしてそれは誰の為だ。間違いなくそれは、変えたいと願う個人の為だろう。世界のためじゃない。世界というものはそのように、容易く個人の都合で変えても良いものじゃないし、そんな事は基本的に出来やしないんだ。
現実の世の中というものは、プレイヤーを中心にして世界が回っているゲームとは違う。
リアルでは、プレイヤーである自分自身はとても小さい。
巨大な、動かし難い世界の上にちょこんと乗っかっている、ただそれだけの存在なんだ。
それでもリアルをゲームと云う枠に見立てて考えたがる奴はいる。そうやって世界に天井があると定義したりするな。ご都合主義も良い所だろうに。
自分が行動する範囲、あるいは見知っている人間関係の中でだけで世界を作り、その世界を動かそうとする。
全てばかげている。
現実はゲームじゃない。仕組みが違う。俺はそうやってゲーム世界を嫌っている訳じゃない。むしろ逆だ。
言いなりにならない世界は面倒で怖いから、自由になる仮想世界を愛している。
現実世界をゲームに見立ててまでなんとか乗り切ろうとは考えていない。それはアホらしい。
だから俺は現実世界を見限って、そこでは遠慮無くチキンでダメな人間性を全面に押し出している。そんな自分を変えたくともどうにも変えられないワケだし。
「あたしから言わせるとね、どうしてそこまで全否定するかなぁってトコなのよ」
「だぁから、怖いんだろ。『幸せに』出来ない可能性の方が高いと思っていてどうにも自信が無い。……俺と一緒に居ちゃダメだ。そう信じている事はあっちもこっちも同じで……」
なんか巫山戯てるな。
自分の事なのに『こっち』に来るとまるで、他人事のように言えてしまう。
大陸座イシュタルトとのトラブルが終わってちょっと疲れて、俺は崩れかけた壁に寄り掛かってアインと話をしている。
小竜のアインさんは例によって可愛く小首をかしげて俺の頭上から言った。
「んー……まぁ『あっち』の都合はまずいいわ。こっちの都合だけで考えましょう。……ヤトが今どういう状況になっているか、私はちゃんと把握してると思うけど一応、その確認取ってもいい?」
「……どうぞ」
俺は恐る恐る、頭上に両手を掛けて乗っかっているチビドラゴンに言葉を促す。
「その体、代替なのよね。いっちばん最初にログインしたヤトの体じゃ、ないのよね」
「恐らくは」
「切り替わったのってタトラメルツ?」
「だろうと思うが記憶があやふやだ、ログも全部戻ってこねぇ」
「ようするに、そういう風に混乱しているのはログを残すべき経験を行う肉体が切り替わったから?」
「かもしれねぇ」
アイン、何も考えていないようで中身はちゃんと……何っていうか、ちゃんと考えられるヒトだ。ようするにアインさんだって事なんだけど。外見10歳未満のチビドラゴンだけど、条件転生したという仕掛けがある通りだな。
アインの中身は経験値的には年齢不詳だ。外見に合わせて日々のほほんとしているけれど実際、このチビドラゴンは頭がいい。
「代替を用意したのはナドゥなのね」
「そういう事を出来るのは奴くらいだろ……今の世界情勢やら文化レベル的に」
リオさんの話を聞くに代替……ようするにコピー。肉体の、精神が伴わない複製技術というのは三界接合というらしい。
この技術は違法だって話だ。魔導都市において『表上は』扱っては行けない技術として正式な技法がシンク、ようするに失われている。そういう違法技術を使う訳でもないのに追っかけたリオさんは異端として魔導協会を追い出されたと言っていた。
「もちろん、どうしてニセモノの方にヤトが、青旗が付いちゃったのかって事は……」
「わからん」
アインは俺の頭上でため息を漏らした。
「赤旗に感染しているのに青い旗で上書修正、って状況になったのはその所為なのね」
「……そうなんだろう」
曖昧な事しか言えなくてすまねぇな……。
レッド、奴はどうなのだろう。この俺の曖昧な応答を、そうです、その通りですと答えるのだろうか。
そう答えるだけの理論をすでに揃えているのだろうか。
……違うか。
理論が揃いつつあったのだろうと思う。それでも感情で、そうであって欲しくはないと奴は願ったのかもしれない。だから、それを決定付けてしまう場面を奴は……避けたんだ。
本当に『俺』が戻るべき体、本当の俺っていうのはこの世界では、どっちなんだ?意識の方が本物だと俺は信じているが、体と心が別々になってしまって片方が置き去りにされた時、自分だって認識が出来なくなった方が偽物だと言い切る事は出来ないだろう?別々になる事自体がアレだとはいえ。どっちも本物だ。どっちも俺には違いない。しかしそれで別の、完全に偽物と云える方に心が宿ってしまって『俺』になっちまっている現在進行形、この状態はどうなんだ。事態をややこしくするだけで何も良い事が無い。
なら、そんな事は無かった事にすればいいんだ。
混乱していたのか、それとも冷静だったのか……俺は、自分の死に掛けの、本当の体に止めを刺してしまった事を、今もまだ……なんというか、戸惑っているな。
本当にそれでよかったのか、って。
「……殺しちゃったのよね」
「ああ……」
殺してみろと挑発された気がしたんだ。
あの腐った目で、出来るものならこの俺から存在の場を奪ってみろと呪われた。辛い立場だろう事は把握できる、ひとえにそれも俺だからだ。それなのに俺は『殺せ』とは願わない、いや。願えない。
あの時『俺』に出来るのは挑発だけだった。そうやって俺は、奴から挑発され……その挑発に乗った。
「ありゃもうダメだ。肉体的にも精神的にも、あいつじゃ魔王八逆星をぶっ倒せないだろうし……この世界も救えない」
そうする事が、ひっくり返って奴にとっての救いになるのだと信じたのだろう。
過去を振り返ってみても、あの時の自分の事がよく、理解出来ない。最適解だったと思っている。生かしておいたって絶対ロクな事にならないぞ、アベルになんか会わせて見ろ。あいつは、どっちも救うと言い出すだろう。あの死にかけの『俺』が、俺の立場を脅かす事になる。
そんな事、俺は……多分望んでいない。それはソレが俺だからこそ、分かっている事じゃないか。
でも本当に……最適解だったのかと、今更躊躇している自分も居る。
「ヤト、がんばっているのね」
「がんばっている?……なんだそれ?」
俺は頭上のアインを見ようと目を上に上げるが、辛うじて見えるのは彼女の下顎だけだった。
「本当はもうゲームオーバーになってたんだよね。それで素直に別のキャラクターで始めればいいのに。それも出来たのに、あたし達がお別れしたくないから……がんばっちゃったんでしょ」
ようやくつながった絆を失いたくない。時に人はそういう縁でもって救われ、繋がれ、がんじがらめだ。
俺は笑っていた。可笑しい事を言うぜアイン。
「そりゃがんばるだろ。リセット押すような安易なプレイは出来ねぇよ。リセット押さなくて済むなら、例え茨の道でもがんばっちまう、俺はそういう……そういうキャラだからさ」
プレイヤーの奴はともかく。
「本当にそう思っている?」
「勿論だ、だから……今は信じる。俺がヤトだってな、誰から何を後ろ指差されたって……負けねぇ」
アインはとん、と俺の頭から飛び降りた。
俺が座り込んでいるのは崩れたクルエセル闘技場の外れにある芝生の上、雑草も混ざったその景色の中で、赤いチビドラゴンはスキップを踏むように俺に振り返る。
「よし、じゃぁこの話はいったん終わりよ。次の事を改めて聞くわ」
「……何をだよ」
びしり、と羽で指される。
「どうしてそれでも『幸せには出来ない』とかって逃げるのよ!アベちゃんの問題から!」
「うっ!」
そ、そこをまだ責めますかアインさん!
「何?種族的な事とか気にしてるの?種族なんて関係ない!とかアタシに言ったじゃない」
「も、勿論種族的な事とは関係ないぞっ!だから、ええと……所属社会的な事も問題ではなく……」
「いーじゃない!どうして努力するとか、がんばるとか、前向きに善処するとか、口先だけでも良いからそうアベちゃんに言ってやれないのっ!?」
かなり激しく感情的に罵られ、俺はそっぽを向いてしまった。
「口先だけじゃまずいだろ?」
「そんな事ないわよ」
「嘘だったって、そんな事後から言えない。嘘ついたらいつまでも嘘を突き通さないといけないんだぞ……いつまでもだ」
「レッドはどうなるのよ、散々『嘘でした☆』とか言う子もいるんだから」
「奴はそうやって実は嘘でしたと言うのが、言うに言えなくて苦労したんだろ。違うのか?」
俺の言葉にアインは少し考えるように小さな腕を組む。……いや、実際にはちゃんと組めてない、手もとい前足が短いので届いてないんだけどその仕草が無駄に可愛い。
「どうしてそこまでしてダメなの?」
「……アベルが好きなのは……俺じゃないんだよ」
溜息混じりに漏らした答えに、アインはあきれたように首を少し突き出す。
「はぁ?じゃぁ他に誰が好きなのよ」
な、なんだか……この話はもう嫌だ。こっちが赤面するわっ!
ええい、仕方がないので説明してやるぅッ!
「……アイツが好きになった奴は悉く死んだんだ。一人は病死、もう一人は……エトオノをツブした罪で打ち首」
「何それ……そうなの?」
俺が冗談を言っているようには見えなかったようで、アインはその先を説明するように促してきた。
「ああ、そこは嘘じゃぁない。死んだんだよ。アイツが追いかけている人物はもう死んでいるんだ。ようするに……あいつはそこを勘違いしている。その勘違いをあいつが解かない限り俺とはすれ違い続ける事になるんだ」
それで恐らくアインはからくりに気が付いた様だ。
俺とアベルとテリーの関係性、エズに来て何やら不審な俺の行動、バーのマスタの言動。
間違いなく俺に呼びかけたと思われる、謎の名前。
間違いなくこのチビドラゴンの中の人、頭が良い。
「……じゃぁ、改めてやり直せばいいのに」
「それが出来ないんだろ、俺には」
やっぱり人事のように俺は、言う。
「どうして『そいつ』がそういう事になったのか、どうしてそういう覚悟をしたかって事があるんだ。俺は……『そいつ』の行為をこれ以上アイツに踏みにじられたくない。理解しないのはどこまでもアイツだ」
アベルの事を思って選んだ結果。その結果を受け入れて欲しいんだ、俺は。
「でもさ、相手アベちゃんだもん。理解しないって事がヤトは分かってない」
……なんだそれは?
何を言われているのか分からず俺は怪訝な顔をしてしまう。
「ごめん、どっちもこっちも混ぜるけど……ヤトは分かってないのよ。アベちゃんの方向音痴、直りそうもないでしょ?それと同じ。彼女は理解できないの。貴方が理解して欲しいと思っている事、全く理解できないのよ。それを理解させようって思っても無理」
「んな、理不尽な!」
「そうねぇ、そうなのかも。理屈じゃないのよきっと。あたしはまぁ、それなりに萌える理屈があってドキドキするわけだけど。でもどうしてそれに萌えているのかは必死になって考えても結局答えなんて出ないもの。好きなものは好き、そう言う事」
ぴょんと両足を揃えて小さくジャンプ、アインは足を投げ出している俺の前に近づく。
「理屈なんてどうでもいいでしょ。感情はどうなの?」
感情。
俺はそれを考えた途端胸が苦しくなり、俯いてアインから顔を背ける。
「何度も言わせるな……俺が好きなのはお前だ」
「ヤト!」
「でも、誰よりも守りたいのはアイツだ。誰よりも幸せになって欲しいと願っている人はアイツだ」
そっぽを向いた先に、壁が在ってそこにしがみつくように生えている蔦に、赤と白の花が付いているのが目に映る。逃げる様に、そいつを見ている。鮮やかな赤い色、それは……アイツを象徴する色だ。
龍族種の先祖返り種、とか云われている。真っ赤な深紅の瞳と、燃えたつような赤い髪。
「アベルはさぁ、色々と不幸すぎるんだよ。だから、……ごめん、俺が本当に守りたい相手は好きな人じゃないんだ。アイン……お前じゃない」
思いのほか素直に言えた事で逆に、俺はさらに胸が苦しくなって口が無様に歪む。
「……そこは謝る所じゃないわ」
さらに両手で顔を押さえる。
「……努力なんて無駄だ。何よりホントは嘘付きたくねぇ。俺ぁ死ぬ。奴より先に死ぬんだ。生きたいだなんて我が儘は言えない、言いたくない。でも俺は……ホントは、生きていたくないんだ」
心の底に潜んでいる願望をゆっくりと引き上げる。
「最悪の連続でもう楽になりたいと願ったらやっぱり、そこは死にたいって事になるだろ?誰だってそうだ、そうだよな?何で俺はこんなに足掻かなきゃいけないて苦笑いしながら、俺は何時死ねるんだろうとか自分の消滅を待っている。昔からそうだったんだろう。そうだって気がついてなかっただけだ。どうしても生きていくという想像が出来ないんだよ。未来が描けないんだ。自分が何をしたいのかよく分からない、そういう生き方はするなといろんな人に尻叩かれながら……」
それでも、そんな願いを忘れた瞬間があって。
誰かの為に何かが出来たら、俺はそれが幸せかもしれない。
何も出来ない、何をすればいいのか分からないこの俺が、誰かの幸せの為に何か出来るとするなら……。
それは素晴らしい事のように思えたんだ。
がむしゃらに成れた。がんばれちゃった。それで全ての辛い思いを忘れていられた。
それは俺と誰かが幸せになる方法じゃない。
それは、俺が一人幸せと感じる事だった。
誰かと手を取って、二人で幸せと言える事じゃぁなかった。
そう云う事だ。
「がんばってみる、でも無理だったと言うのが辛い」
「……ヤト」
「だったら突き放しておきたい。彼女には、諦めるって手段があるし方法があるだろ?俺はそれを選んで貰いたいと願っている。それがアイツに願う俺の幸せだ。……もうほっといてくれ」
「ダメよ、放っておけないわよ!ヤトがそういうキャラだってのはよく分かったけど、一方でアベちゃんも『ああいうキャラ』ってのがあたし、分かってるもん!」
アインに頭を小突かれて俺は項垂れていた頭を抑える。
「分かるもの、アベちゃん、ヤトが思うようには絶対折れてないわよ?」
「………かもしれん」
俺もこれで付き合い長いもんで、そんな奴の態度が予測できてしまったりするのだ。
実に、絶望的である。
「どうするつもり?」
「となりゃ、まぁ何時も通りにするしかねぇんだろうなぁ……」
ようやく苦笑になった顔を上げる。
「何時も通りって?」
「だから、何時も通り……さ」
うぅう……ん。
……なんだこの音。
目覚まし……じゃねぇ。本日バイトは休みだ、目覚ましは惰眠をむさぼるべく止めてある。携帯着信音でもねぇ、なんだこのうるさい音。工事?
……あぁ、ブザー。
誰かがトビラの前に来てますよお客さんですよ出てくださいご在宅の方~というブザー音ですか。
ようやく呼び鈴の音と認識しつつ俺は、起きるつもりが無くて寝返りを打った。
新聞契約お断りだぜ、どうせセールスだろ。俺はテレビなんぞみねぇし政治経スポーツ情報あと芸能ニュースも興味ねぇ。ゲームがあればそれでいい、うぜぇ。
なんで呼び鈴なんてものを常備させやがるんだ家のトビラには。憎々しい、配線切って置こうか……いや、備品壊したら敷金減るから電気配線を引っこ抜く程度にしておこう。
基本的にブザーを鳴らすような客は居留守を使う事にしている。俺の大切な睡眠を邪魔するんじゃねぇよ。
そのように布団を被るが……。
くそ、まだ諦めてねぇ……せっかくの眠気が覚めてきたじゃねぇか畜生。
被った布団を耳元できっちりと閉めた時、耳に付けていたMFCデバイスツールの違和感に気が付く。
……そういやR・リコレクトしてたんだった。
ん?ドコ反復してたんだっけ?
ブザーがようやく鳴りやんだ。ふぅ、とため息を漏らした所今度は扉を叩く音に切り替わる。
くそ、いい加減にしろ!いねぇっつってんだろ!
「ちょっと!開けなさいよ!」
くぐもった声が聞こえてきて俺の背筋に冷たいものが走り抜けた。
ついでに、今見ていた夢の内容をぼんやりと思い出したりしていた。何か、想い出すスイッチが入りやがったんだな。
入って欲しくないスイッチなんだが。
息を潜めそれでも居留守を使う俺。そうです、俺チキン属性ですから。
そしたら枕元に投げてあった携帯がバイブレートする音に無駄に驚いてしまう。繰り返しますが俺はリアルでチキンなんです!
見たくないのだが見てしまう。メールか、畜生……どうせ何が書いてあるか分かっているのだが見てやるよ。
そんな具合で目をこすりながらメールを開く。案の定、阿部瑠からだ。
『そこにいるのはわかっているぞ!!!!』
あー……そういや、昨日、今日はバイト休みなんだと言ってしまった気がしてきた。俺、軽率過ぎる。
頭を掻いて仕方が無く返信。
『朝から何の用だ』
『朝じゃない、もう昼』
ばかやろう、テメェの用件を聞いているんだ。ツッコミを待ってるんじゃねぇこのアホ!どアホ!
ガチャガチャドアノブを回す音がするので俺は、仕方がないからこのどーでもいいツッコミに返信。
『待て、リアルに今起きた。30分待て』
そんなに待てない、と返って来るかと思ったがそうではなく。
『了解、じゃぁ30分後また来るわ』
俺は慌てて飛び起きた。
ふふふ、バカめ!ならば俺は20分で身支度を調えさっさとこの部屋から脱出、見事貴様から逃げおおせてみせるわッ!
慌ててシャワーを浴び頭を洗って髭剃って、服を着て扉を開ける。
「あ?」
「あぁ、おはようございます」
トビラを開けた先には、携帯電話を弄っている……レッドが手摺りに寄りかかって待ち構えていた。
「早いですね?19分、30分待ってくださいではなかったのですか?」
「………?」
俺は状況判断が出来ておりませんしばらくお待ちください。
「この距離だと……瑠衣子さんはコンビニに着いた頃でしょうかね。引き留めましょうか」
そう言ってレッド、恐らく……動作からしてメールを打ち始めた。
「……え?」
まだ追いついておりません俺。もうしばらくお待ちください。
「外出、されるのでしょう?」
にっこり微笑んで尋ねられ……まぁ、確かに外に出る為に靴下履いてズック引っ掛けて鞄肩に掛けているのだから言い逃れは出来ない訳で……。
「昼も過ぎてますしボクら腹ぺこですよ。コンビニ弁当、正直好きじゃないんですよね」
メールでやり取りしたから扉の向こうにいる相手は阿部瑠一人だと思ったがそれは、単なる……俺の思い込みだよな。
しかし、なんでどうしてレッドが俺の家の前にいるのだろう?そこら辺がよく分からん。安易に自分家の住所を教える程俺は不用心ではない。テリーにばれてしまったのはかなりイタかったが、ナッツの紹介となると文句が言えなかったりする。
まさか、またテリーの野郎かっ?
「ああ、ちなみにボクが案内をお願いしました。瑠衣子さんに」
ふっとレッドがのろのろな速度で後ろをついて歩く俺を振り返る。
「……何が?」
「だから、どうしてボクが貴方の家にいるのだろうとか考えていたのでしょう?」
ザッツライトでございます……。
「すいません、事前に問い合わせるのが筋なのでしょうけど……瑠衣子さん曰く、OKの返事を待っていたら永遠に来ないわよと言われまして……この通り」
成る程強引に……こうなったと。アイツがしでかしそうな事だ。俺は額に手をやって長い前髪を掻き上げる。
「で、何の用だ?」
「……特に用事は」
なんだそれはと俺は呆れた顔を向ける。
「まぁ、お会い出来てごはんでも一緒に食べられたら良いかなと、それくらいです。お酒でもいいですよ」
「冗談言うな、俺は今晩狩り日だ」
ええと、ゲームな。別のゲームの定例だッ。
「アルコール、弱いのですか?」
「お前はどうなんだ」
「どうなのでしょう?好き好んで飲んだりはしないもので。……ご迷惑なら瑠衣子さんにはボクから言っておきますが、これからどちらにお出かけですか?」
いやだから、お前というかお前らから逃げるために……だな。
というか俺、逃げる先としてフツーにお前の縄張りのファミレスとか目指すつもりだったのに。
ようするに阿部瑠から逃げて、レッドやマツナギ、メージンらが会っている町まで移動してメシ食おうと思ってたんだけど。
この流れだと……そこに阿部瑠も行くんだよな……はぁ。
レッドが奴を誘ってしまったのだからしょうがない。
俺の安息の地はたった一週間で破られてしまったようです。
どうしてそこまで全否定するかな?
怖いんだろ?そう……出来ない可能性の方が高いと思っている。
自信がない。
ええと、何が?って。だから……
お前を幸せにする事は俺には出来ない。
そう云う事が。
ふつーさぁ、恋愛沙汰で破局したらそこで関係性はメタメタになるもんじゃねぇの?俺はその覚悟をして阿部瑠を振ったつもりだったんだけど、どうした事かグダグダとお友達関係が続いている。
俺が悪いのか奴が悪いのか……もぅよくわからん。
これがいつもの通りだ。
同じ趣味の話をしてグダグダと世間話になって、笑いながら冗談飛ばして軽くドつきあって。
まるで何事も無かったかのように友人としてが続く。
友人だよな?うん、友人以外のなにものでもない。
なら友人も辞めろ?うん……俺はそれを覚悟してチキンなりにかなり勇気を振り絞ったつもりだったのだがな。ぶっちゃけてさ、友人を辞めるのも結構面倒なんだぜ?
それに、俺は奴が嫌いというわけではないしな。ん?いやいや嫌いなんですけどね……うぐ、我ながら矛盾している。
というか、人を好きになるのも嫌いになるのも同じくらいにエネルギー使うんだよ。好きだ嫌いだって気を回すよりは、何も考えずに友人として付き合ってた方がエネルギー使わない気がする。
ようするにだ、エネルギー使いたくないわけよ俺は。好きになるのもメンドーだけど、嫌いだと言って距離を取るのに必死になったりするのもメンドーだろう。
ようするにだ、メンドーなのだ。メンドーなのが嫌なのだ。
あと……ええと、ごめん。
ちょっとキレイに言い過ぎたかもな。
ぶっちゃけると嫌いなんだけど嫌われるのは嫌なんだ。どんだけガキの理論だってのは分かっているが。嫌なものは嫌なのだからしょうがない。
俺は嫌いだが俺は奴から嫌われたくない。
なんだそれ。
振ったら嫌われるだろうに。でも、俺の本心は嫌われたくない、だ。
だからもの凄くがんばって俺は奴を振り払った。もの凄い覚悟をして俺は、がんばって面倒を承知で『お前を幸せにする事は俺には出来ない』と言ったつもりだった。
なのに何でそっちの方向に『がんばるのだ』と言われて、奴は……俺の言葉を受け入れてくれなかった。
俺はきっと人一倍好きだ嫌いだって事にびくついているだろう。世間は怖い、そのように逃げている自覚はモーレツにある。俺はこの俺の状況を改善するつもりがない。ええ、ありませんとも。てゆーか、改善できるはずねーだろって思ってるもんな。無理無理。
夕方になり、バイト上がりのマツナギと学生のメージンが面子に加わった様子を俺はぼんやり適当に受け入れながら、昨晩から今朝にかけて夢の領域で反復した経験を思い出している。
夢だからはっきりとはしていないが、俺は一人その反復を何度か行っている所為で夕方になってもまだ、トビラの世界の事を考えていた。
全部は無理だ。当然だ、情報量が多すぎる。
でも一つだけ、強烈な印象を受けて忘れられない所がある。
それはすでに現実にあった事で、それが夢の中で繰返されていて……。
なーんで俺は、あっちの世界でも彼女を振らなきゃいけないんだろう?そういう所な。
別の展開くらいあってしかるべきだろうよ。そもそもリアルと同じ背景に誰がした。誰がそんな事望んだ。
俺は現実ではチキンだ、ダメ人間だ。その自覚がはっきりあるが、仮想世界までこのチキンでダメな属性を持っていった憶えは無い。
ゲームの中で演じているキャラクターは間違いなく、俺がそうありたいと願う姿をしているはずだ。脚色してキャラメイキングしてもプレイヤーの癖はどうしたって出る。それに合わせてキャラクターが背負った背景が決まっていくようだった。
いや?それは俺達が異世界に乱入する前から決まっていた事だよな?そうでなければ理屈が合わない。
変だ、世界というのは俺の為に在るものじゃない。当たり前の話だ。
現実においては、世界の上に俺達がいる。
でも、今まで俺達が楽しみ、親しんできたコンピューターゲームというのはその当たりの事情がちょっと違う。ソフトという名前のゲームプログラムと、ハードというプログラムを走らせるマシン。それらをプレイヤーが組み合わせて動作させる事でそのゲームの『世界』が始まる。あるいは今だとソフトの替わりにネット環境に繋がる事が要求されるかな。
ともあれ、プレイヤーの為に世界がある。
ゲームの中にある仮想世界は、プレイヤーの為にある。
であるからしてゲーム上のシナリオで、普通はあり得ないような特殊な立場にプレイヤーが置かれ、プレイヤーの采配で『世界が回る』。
この在る意味特殊なセカイとジブンの関係性をリアルでも勘違いしちゃう奴がいたりして、そういう奴らの所為でゲーム脳だとか何とかゲーマーは叩かれたりするんだろうと思うが、どうなんだろうな。良い迷惑だ。
本当の世界というものはゲームみたいに容易く自分や、個人の都合でかき混ぜる事なんて出来ない。いや、今世界はそれが出来てしまう時代になっているのかもしれない……方法にもよるけど一個人の所為で少なからず社会が混乱したという事件は幾つかあったと思う。
電子掲示板に架空の虐殺予告なんか書いたアホがいて、それがアホな悪戯だった場合とアホな現実だった場合があって現実が惑わされている。
そのように社会を混乱させる手段が在る事が問題じゃねぇだろうと俺は思っているし、そのあたりの憶測は社会の一般とズレてはいないのかもしれない。
現実はゲームじゃない、だからたとえ出来たとしても、個人の都合で世界を狂わせてはいけないんだ。
それをやってもいいのは仮想現実、ゲームの中だけ。
世界を変える?その手段がある?誇大妄想も良い所だぜ。果たしてそれは誰の為だ。間違いなくそれは、変えたいと願う個人の為だろう。世界のためじゃない。世界というものはそのように、容易く個人の都合で変えても良いものじゃないし、そんな事は基本的に出来やしないんだ。
現実の世の中というものは、プレイヤーを中心にして世界が回っているゲームとは違う。
リアルでは、プレイヤーである自分自身はとても小さい。
巨大な、動かし難い世界の上にちょこんと乗っかっている、ただそれだけの存在なんだ。
それでもリアルをゲームと云う枠に見立てて考えたがる奴はいる。そうやって世界に天井があると定義したりするな。ご都合主義も良い所だろうに。
自分が行動する範囲、あるいは見知っている人間関係の中でだけで世界を作り、その世界を動かそうとする。
全てばかげている。
現実はゲームじゃない。仕組みが違う。俺はそうやってゲーム世界を嫌っている訳じゃない。むしろ逆だ。
言いなりにならない世界は面倒で怖いから、自由になる仮想世界を愛している。
現実世界をゲームに見立ててまでなんとか乗り切ろうとは考えていない。それはアホらしい。
だから俺は現実世界を見限って、そこでは遠慮無くチキンでダメな人間性を全面に押し出している。そんな自分を変えたくともどうにも変えられないワケだし。
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