異世界創造NOSYUYO トビラ

RHone

文字の大きさ
346 / 366
番外編 EX EDITION

◆トビラ番外編 EX EDITION『トビラのムコウ?』

しおりを挟む
◆トビラ番外編 EX EDITION『トビラのムコウ?』

※何時でも読める、完全なる理論武装型 言い訳マシーン、 某人の話※


 明言して引きこもりである僕は、自主的にどこか遠くへ行こう、という意思はありません。
 断じて無い、ですね。
 人の肉体は案外弱く、同時に……現実における人の心は脆弱なのです。

 仮想世界でいくら強く装うことはできても現実は、そうではない。

 人間は弱い。
 その弱い体と心で、どこか遠くへ行こうと思えば望んでいないのに体も心も疲労でボロボロになってしまうでしょう。
 もちろんそうならない人もいますね。遠くに行く為に身も心も鍛えているなら、何処に出かけていくのにも抵抗はないのでしょうが少なくとも……引きこもって身も心も弱くなったと自覚する僕には無理な話です。

 電車で1時間くらいなら妥協しましょう、しかし2時間となるともう無理です。
 だって、行きに2時間掛ったら帰りにもまた2時間掛るんですよ?
 新幹線なら往復2時間未満で済んだりもしますが、時間を買い戻すにはお金がかかります。別にお金を出し渋るわけではありませんが、そこまでしてどこか遠くに行く必要があるのでしょうか?

 今や仮想世界は充実していて、遠い世界の情報もたやすく手に入れることが出来ます。
 それでいいじゃないですか、どうしてその遠い世界に自分が行った、という他人にとってはどうでもいい情報を得るためにボロボロにならなきゃいけないんですか。
 そんな事しなくていいんです。
 自分で現地に行って得られる情報なんてものは所詮、自分を軸にした経験の一体験にすぎません。情報の価値的にいえば、そういう体験を他者から浅く、多く集めて分析した方が価値あるというもの。

 ええ、引きこもりといくらでも笑ってください。

 絶対行きませんよ、僕は、旅行なんか。

 *** *** ***

 そうですね、マンガにあるよう瞬間移動の方法が早く確立されればいいですね。

 問題なのは移動にかかるエネルギー消費です。
 場所を移動するには時間とエネルギーを消費します。この問題を解決しない限り時間と空間を超越した魔法のような移動機関は生れ出る事はありません。

 ついでに言うと、もし時間と空間を超越する方法が生み出された場合、おそらく研究はもっと踏み込んだ域へと到達することでしょう。何だと思います?
 俗に言うタイムマシンの開発にこの技術を応用し、タイムトラベルについての研究に人類は着手するに違いありません。

 空間をエネルギー移動の法則を無視して転移するという事は、時空的には時間を移動した事にもなるでしょう。
 たとえば地球の裏側まで時間を掛けずに移動できる方法があったとします。
 トビラでいいでしょう。
 そのトビラを開けた瞬間向こう側はあなたの望んだ場所につながっている。そういう装置、あるいは方法が確立されたとする。
 空間を超越するトビラをあなたが潜りぬけることが出来るというのなら、あなたは同時に時間をも超越した事になる。
 そして同時に『すべて』を超越するのです。

 そうであるから難しい。

 エネルギーの移動法則は無視しても場にあるエネルギーの流動性は失われていないとする。
 ようするに貴方だけ止まった時間の中で動けるという状況が起き得るとしましょうか。
 ところがそれだけでは世界は動かす事が出来ません。
 ご想像ください、目には見えませんが世界には『何か』で満たされていて寒天状になっている。時間が止まればすべての物質は止まる。あなただけ動けても世界に満ちている物質が等しく動けないのなら、これを突破する何らかの莫大なエネルギーを貴方自身が得て居なければ動く事は出来ない、そういう事です。
 すべてが運度を止めているなら、貴方だけ動けても貴方が浸っている世界は動かしようがない。
 動けるのは、貴方の中にある極めて狭い世界だけなのです。

 ところがその止まった世界の中で貴方だけが動けるとするなら何が起きている事になりますか?

 つまり……貴方は止まった時間の中、世界のすべてを動かす事が出来るという事になります。

 時間の超越は同時に空間の超越であり、すべての超越です。

 さて、これで貴方は時間の流れやエネルギーの移動を無視して空間を超越する事が出来るようになりました。
 これにて空間転移完了、というわけにはいきません。
 後始末が必要になります。
 ようするに、動き出した時間と連続する空間、ようするにエネルギーの流動において『貴方がいた』という過去への情報と『貴方がいる』という今からの情報への辻褄合わせをしなくてはなりません。

 突然に貴方が正しい存在時空から失われた場合、貴方が本来居た時空において貴方がいた場所はどうなりますか?
 空間には常に何かが満ちているのです。
 突然貴方がそこから失われた場合、次に動き出した時間軸において貴方がいた場所には何も無かった事になる。
 空気はもちろんの事、真空なんて生易しいものではない、あらゆるエネルギーがそこに存在しなくなる。
 逆に、貴方が空間と時空を超越して突然現れた場所においてはどうでしょう。
 これと逆の事が起きるに違いありません。
 あなたが現れた所為でそこにあった何らかのエネルギー……『情報』が失われるか正しい存在が許されなくなる。

 この問題をごくごく簡単に解決するのが情報の交換、ようするに……転移という事になるでしょう。
 あちらの情報をこちらへ、こちらの情報をあちらへとエネルギーの交換を行うわけです。
 ようするに、貴方が出て行ったはずのトビラからは貴方と同等の何者かが現れる事で時空の穴は埋められて、貴方がたどり着いた先では貴方と同様に誰かが扉をくぐってその世界を脱出していなければいけない。

 貴方が空間を転移するには時間を止め、貴方と同等のエネルギーを持つ者と場の交換を行う必要がある。
 そういう辻褄合わせを成立させない限り空間転移という『魔法』は成立しない。

 さて、貴方がたどり着いたはずの世界の裏側はどこか。

 貴方がいた地球上ですか?

 おそらくトビラの向こうは貴方がいたはずの世界とは別の世界でしょう。
 世界は、虚無を生み出さない為に貴方の行為に対する辻褄を合わせて貴方を異なる世界に導き、同時に異なる世界から貴方の世界に貴方と同等の存在を送り込むのです。

 ようするにその空間を超越するトビラは、時間をも超越し過去、あるいは未来へとつながっている。

 ただしその過去や未来は必ずしも貴方がいた時空列へ到達、あるいは経過しているとは限らない。

 貴方は元の世界に戻るためにいくつものトビラをいくつも潜るでしょう。
 戻れるか、戻れないかは辻褄を合せる世界のみが知っています。あるいは……正しい時空に戻ってこれたかどうかを貴方は判別することができなくなっているかもしれません。

 このように、異世界での迷子を防止するにはどうすればいいのか。
 先にも言った通り空間を超える際、エネルギーの移動も行ったことにすればよいのです。一番手っ取り早いのは移動する空間における等価エネルギーの交換でしょう。
 トビラの向こう側に行く為に、相応のエネルギーをトビラの向こうからこちら側に引き込み反動で貴方はトビラを潜る。

 ……結局はエネルギーの問題に帰依するのですね。
 飛行機を使うか、新幹線を使うか歩いて行くかという交通手段を講じる理論と大差無い。

 え?いったい何の話をしていたのだって?

 ですから。

 現実での長距離移動にはエネルギーの消費が必要不可欠で、仮想異世界が電脳の中に展開している上にエコだとか何だとかうるさくやっている現状、エネルギーを支払ってどこか遠くに行くのは非建設的ですという話です。

 あなたが大好きなゲームでは、僕が並べた理屈なんて無く、いともたやすく転移魔法があるのですからそれを使って『僕』は場を動かず仮想現実で満足すればいい。

 それでは意味がない?

 僕にとっては僕自身でエネルギーを無駄に支払ってどこかに行く事の方が意味が無いと先ほどからご説明差し上げているでしょう。

 ええ、はい。
 だから。
 僕は旅行なんか行きませんよって最初に申し上げたじゃないですか。

 それがどうしてこういう話になるんだ?

 それは貴方が、どこでもドアとかさっさと誰か開発しねぇかなぁ、などと言ったからです。

 

 

 *** おわり *** 


 『トビラノムコウ』については、実はこっちの方が先に書きました。
 同じ題名から始めたのにどんだけ違う話になるんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

あざとしの副軍師オデット 〜脳筋2メートル義姉に溺愛され、婚外子から逆転成り上がる〜

水戸直樹
ファンタジー
母が伯爵の後妻になったその日から、 私は“伯爵家の次女”になった。 貴族の愛人の娘として育った私、オデットはずっと準備してきた。 義姉を陥れ、この家でのし上がるために。 ――その計画は、初日で狂った。 義姉ジャイアナが、想定の百倍、規格外だったからだ。 ◆ 身長二メートル超 ◆ 全身が岩のような筋肉 ◆ 天真爛漫で甘えん坊 ◆ しかも前世で“筋肉を極めた転生者” 圧倒的に強いのに、驚くほど無防備。 気づけば私は、この“脳筋大型犬”を 陥れるどころか、守りたくなっていた。 しかも当の本人は―― 「オデットは私が守るのだ!」 と、全力で溺愛してくる始末。 あざとい悪知恵 × 脳筋パワー。 正反対の義姉妹が、互いを守るために手を組む。 婚外子から始まる成り上がりファンタジー。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...