2 / 30
第1章「静かな違和感」(2)
しおりを挟む
朝のホームルームが終わり、ざわつく教室で御影コウタが「シン、プリント回収したか?」と声を張り上げた。
「え? プリント? あ、また忘れたかも……」
「おいおい、シン、またかよ。何度目だ? さっき先生が『回収してくれ』って言ったばかりじゃんか」
「ごめん、コウタ……ちょっと頭が回ってない。スマホにメモしたはずなんだけど……」
白山シンは、眉を下げてスマホを探す姿は“頼りない”印象を与えている。
朝から紙のノートやスマホのメモを開いたり閉じたりを繰り返し、「やばい……やばい……」を連呼しながらオロオロしていたのだ。
「シン、大丈夫? また物忘れ? あんた、今朝だって教科書を置きっぱなしだったし」
風間ナツミが斜め後ろの席から口を出す。
「うん……自分でも何やってんだか……最近ホントひどくて……。えっと、プリントは……あ、これかな……?」
「それ、違うって。先生に出すやつは別のやつだろ」
「ごめんコウタ……もうちょっと探させて……」
シンが汗をかきつつ机の奥を探っていると、ホームルームを終えた担任が「白山、さっき配ったプリントどこいった?」と声をかけてきた。
「すみません先生、すぐ持っていきます……」
「頼むぞ。次のホームルームまでにみんなの分集めてくれ」
「はい……!」
コウタとナツミが「しっかりしろよー」とため息をつくなか、シンはなんとかプリントを発見し、「あ、あった!」と安堵の声を上げる。
だが、心の中では別の不安が渦巻いていた。
(最近やたらと抜け落ちるな……記憶が欠けてるっていうか……)
そんな彼の思考をよそに、チャイムが鳴って次の授業が始まる。
◇
そして放課後。
生徒たちが部活動へ向かったり、友人同士で遊びの計画を立てたりと賑やかな雰囲気の中、シンはふとメモを見直して「あ、そうだ、先生に言われたプリントの追加分……取りに行かなきゃ……」と立ち上がる。
「プリント追加? どれだよ?」
「いや、先生が職員室で間違い分を刷ってくれたみたいで……」
「なら行ってこいよ。忘れんなよー」
コウタが苦笑まじりに背を押す。
ナツミは「さっき職員室行ったとき、先生が『白山、どこ行った?』って言ってたよ」と肩をすくめる。
シンは頭を抱えて廊下へ出た。
◇
誰もいなくなった教室に戻ると、後ろのほうで棚の上に乗せてあった荷物が不安定に積み重なっているのが目に留まる。
「うわ、あれ危ないな……落ちたらやばいんじゃ……」
そう思った瞬間、バランスが崩れたのか、大きめの段ボール箱がずるりと滑り落ちかける。
シンは反射的に駆け寄り、手を伸ばした。
「やべっ、落ちる……っ!」
その瞬間、箱が空中で一瞬停止するように見えた。
まるで空間がスローモーションになったかのように、落下の速度が緩む。
だが、シンの心拍は急上昇し、頭の奥がズキリと痛んだ。
(またか……こんなの、ただの偶然じゃない……この“力”のせいなのか……)
視界がぼやけながらも、シンは箱を抱えるように受け止め、床へそっと降ろした。
「……痛っ……頭が……くそっ、やっぱり使うとこうなるんだ……」
自分の“念動力”と呼ぶしかない力を使うと、必ず頭痛が起きる。
しかも近頃は物忘れも連動するかのように悪化していた。
何かが決定的におかしい――それを自覚しながらも、シンは誰にも打ち明けられないままでいた。
すると、教室の入り口から静かな足音が響き、黒江ユキがひょっこり姿を見せた。
その表情には冷たい無表情が浮かんでいる。
「大丈夫……?」
ユキの声は淡々としているが、その瞳の奥で微かな興味を示すようにも見える。
シンは手を振りながら「うん、なんとかなった……ちょっと頭痛がして……」と答える。
「頭が痛いのは、前から?」
「まあ、そんな感じ……。あれ、俺、何か落としたかな……」
ユキは目線を巡らせ、首を振る。
「落としてないと思う。あなたが持ってるプリント以外は何も……」
「そっか……ありがと。ごめん、変なとこ見せちゃって……」
「別に……あまり無理しないほうがいいんじゃない」
そう言い残し、ユキは踵を返す。
シンはその背中を追いかけるように小さく声をかける。
「黒江さん……あの、名前、合ってるかな? えっと……ユキ……」
「そう……何か用?」
「いや……ごめん。なんか……笑顔もないし、怒ってるのかもって思ったけど……そうでもないのかなって……」
「怒ってない……よく言われるけど、ただ表情があまり出ないだけ」
ユキの返事は短く、そして寂しげな色が混じる。
“表情が出ない”――。
それはまるで何かを失っているかのような響きで、シンの胸をざわめかせる。
「そっか……ごめん……ありがとう、声かけてくれて……」
「ううん。気にしないで」
ユキはかすかに目を伏せたが、そこに悲しみの影を見た気がして、シンは思わず息を呑む。
だが、彼女はもう会話を続けるつもりもなく、教室を出ていく。
(あの瞳……無表情なのに、どこか悲しそう……。どうして気になるんだろう……)
シンは頭痛をこらえながら静かにプリントを回収した。
◇
しばらくして、友人たちに促されシンは保健室へ向かった。
最近の頭痛や物忘れは尋常ではないからだった。
保健室の扉を開けると、新任の保健医・榎本真理が笑顔で迎えてくれた。
ショートヘアに白衣を羽織っている。
落ち着いた声色が印象的だ。
「どうしたの? 顔が青いけど、頭痛かしら?」
「ええ、ちょっとクラクラしちゃって……すみません……」
「疲れでもたまってるの? 最近、何か気になることはない?」
榎本は優しく微笑むが、その瞳に探るような光が宿っている。
シンが「いや、特には……」と苦笑いすると、彼女は「ふうん……」と呟き、小さく頷いた。
「じゃあ無理しないでね。ベッドで少し休んでいいわよ。何かあったらすぐ呼んで」
「はい、すみません……ありがとうございます……」
シンは礼を言いつつベッドに座るが、ふと棚の奥を見やると“研究施設”と書かれたファイルの背表紙がちらりと目に入る。
すると榎本がすっと横に立ち、視線をふさぐようにして「大丈夫?」と気づかれぬように振る舞う。
奇妙な違和感を抱きながらも頭痛がおさまらず、シンはベッドうえで横になるのだった。
◇
日が傾き始めた頃、シンが帰り支度をしていると、コウタが「おい、シン、倒れたりすんなよ?」と軽口を叩く。
ナツミも「ほんとよ、あんたがボーッとしてたら私たちがフォローしなきゃいけないんだから」と呆れ顔。
「わかってる……迷惑かけてごめん……」
「大丈夫大丈夫、そんな深刻そうな顔すんなって」
「そうだよ、シン。あたしやコウタがついてるし」
二人のやり取りに励まされ、シンはスマホのメモを確認する。
また何かを忘れないように、今日のトラブルや頭痛の状況、ユキと少しだけ話したことまで短く記録する。
その行為が自分を落ち着かせる唯一の術だった。
(でも、これ以上忘れたら……俺、一体どうなるんだ……)
不安がちらつく。
コウタが「じゃあ先に行くわ」とナツミとともに廊下へ向かう。
シンは後ろを振り返ると、そこに黒江ユキの後ろ姿があった。
シンは声をかけるきっかけがつかめない。
遠くで誰かが笑い合う声が響く中、彼女だけはひとり淡々と歩いていく。
まるで周囲の喧噪が自分には関係ないと言わんばかりに、背筋を伸ばし、表情を変えずに。
「シン、どうした?」
「なんか、放っておけない気はするんだけど……」
「まあ、向こうが一人で帰りたいなら無理するなって」
コウタに促され、シンは門を出る。
一瞬振り返ると、ユキの姿はもう見えない。
(どうしてあの子のことがこんなに気になるんだろう……俺も自分のことで手一杯なのに……)
胸に渦巻くざわつきを言葉にできぬまま、シンは小さく嘆息して歩き出す。
記憶が抜け落ちる恐怖、原因不明の頭痛。
そしてユキの瞳――無表情の奥に宿る悲しみ。
まるで何かを失ったまま、生きているような瞳。
シンはあの光景を思い出すたび、胸が締めつけられるように痛むのだ。
そんな彼の心情を知らぬまま、周囲のクラスメイトは賑やかに放課後を楽しんでいる。
黒江ユキのことなど気にも留めないように、部活や買い物の予定を楽しげに話している。
シンはその声を遠くに聞きながら、またスマホのメモをそっと開いて今日の出来事を確認する。
「俺、さっき何を……ああ、そうだ……念のため書いとこう……」
だが指が止まる。
頭の中から零れ落ちていくような感覚。
シンは震える唇で小さく言う。
「……やっぱり、ただの物忘れじゃ、ないんだろうな……」
夕焼けに染まる校舎を振り返り、彼は最後にユキの後ろ姿を思い浮かべる。
ひとりで歩く彼女の姿が、なぜこんなにも胸をざわつかせるのか――わからない。
でも、いつか確かめたいという思いが湧いてくるのだった。
◇◇◇
その頃、ユキは人気の少ない道を黙々と歩いていた。
表情はない。
けれど心の中で少しだけ疑問を抱いている。
(どうして、あの人の笑顔が気になるんだろう……。私は……何も感じないはずなのに。)
細い息を吐き、瞳を伏せる。
夕陽の暖かさも、街の喧噪も、彼女にはまるで他人事のよう。
ただ、ほんのかすかな“何か”が心をかすめる。
その小さな違和感が、無表情な胸の奥で確実に芽生え始めていた。
「え? プリント? あ、また忘れたかも……」
「おいおい、シン、またかよ。何度目だ? さっき先生が『回収してくれ』って言ったばかりじゃんか」
「ごめん、コウタ……ちょっと頭が回ってない。スマホにメモしたはずなんだけど……」
白山シンは、眉を下げてスマホを探す姿は“頼りない”印象を与えている。
朝から紙のノートやスマホのメモを開いたり閉じたりを繰り返し、「やばい……やばい……」を連呼しながらオロオロしていたのだ。
「シン、大丈夫? また物忘れ? あんた、今朝だって教科書を置きっぱなしだったし」
風間ナツミが斜め後ろの席から口を出す。
「うん……自分でも何やってんだか……最近ホントひどくて……。えっと、プリントは……あ、これかな……?」
「それ、違うって。先生に出すやつは別のやつだろ」
「ごめんコウタ……もうちょっと探させて……」
シンが汗をかきつつ机の奥を探っていると、ホームルームを終えた担任が「白山、さっき配ったプリントどこいった?」と声をかけてきた。
「すみません先生、すぐ持っていきます……」
「頼むぞ。次のホームルームまでにみんなの分集めてくれ」
「はい……!」
コウタとナツミが「しっかりしろよー」とため息をつくなか、シンはなんとかプリントを発見し、「あ、あった!」と安堵の声を上げる。
だが、心の中では別の不安が渦巻いていた。
(最近やたらと抜け落ちるな……記憶が欠けてるっていうか……)
そんな彼の思考をよそに、チャイムが鳴って次の授業が始まる。
◇
そして放課後。
生徒たちが部活動へ向かったり、友人同士で遊びの計画を立てたりと賑やかな雰囲気の中、シンはふとメモを見直して「あ、そうだ、先生に言われたプリントの追加分……取りに行かなきゃ……」と立ち上がる。
「プリント追加? どれだよ?」
「いや、先生が職員室で間違い分を刷ってくれたみたいで……」
「なら行ってこいよ。忘れんなよー」
コウタが苦笑まじりに背を押す。
ナツミは「さっき職員室行ったとき、先生が『白山、どこ行った?』って言ってたよ」と肩をすくめる。
シンは頭を抱えて廊下へ出た。
◇
誰もいなくなった教室に戻ると、後ろのほうで棚の上に乗せてあった荷物が不安定に積み重なっているのが目に留まる。
「うわ、あれ危ないな……落ちたらやばいんじゃ……」
そう思った瞬間、バランスが崩れたのか、大きめの段ボール箱がずるりと滑り落ちかける。
シンは反射的に駆け寄り、手を伸ばした。
「やべっ、落ちる……っ!」
その瞬間、箱が空中で一瞬停止するように見えた。
まるで空間がスローモーションになったかのように、落下の速度が緩む。
だが、シンの心拍は急上昇し、頭の奥がズキリと痛んだ。
(またか……こんなの、ただの偶然じゃない……この“力”のせいなのか……)
視界がぼやけながらも、シンは箱を抱えるように受け止め、床へそっと降ろした。
「……痛っ……頭が……くそっ、やっぱり使うとこうなるんだ……」
自分の“念動力”と呼ぶしかない力を使うと、必ず頭痛が起きる。
しかも近頃は物忘れも連動するかのように悪化していた。
何かが決定的におかしい――それを自覚しながらも、シンは誰にも打ち明けられないままでいた。
すると、教室の入り口から静かな足音が響き、黒江ユキがひょっこり姿を見せた。
その表情には冷たい無表情が浮かんでいる。
「大丈夫……?」
ユキの声は淡々としているが、その瞳の奥で微かな興味を示すようにも見える。
シンは手を振りながら「うん、なんとかなった……ちょっと頭痛がして……」と答える。
「頭が痛いのは、前から?」
「まあ、そんな感じ……。あれ、俺、何か落としたかな……」
ユキは目線を巡らせ、首を振る。
「落としてないと思う。あなたが持ってるプリント以外は何も……」
「そっか……ありがと。ごめん、変なとこ見せちゃって……」
「別に……あまり無理しないほうがいいんじゃない」
そう言い残し、ユキは踵を返す。
シンはその背中を追いかけるように小さく声をかける。
「黒江さん……あの、名前、合ってるかな? えっと……ユキ……」
「そう……何か用?」
「いや……ごめん。なんか……笑顔もないし、怒ってるのかもって思ったけど……そうでもないのかなって……」
「怒ってない……よく言われるけど、ただ表情があまり出ないだけ」
ユキの返事は短く、そして寂しげな色が混じる。
“表情が出ない”――。
それはまるで何かを失っているかのような響きで、シンの胸をざわめかせる。
「そっか……ごめん……ありがとう、声かけてくれて……」
「ううん。気にしないで」
ユキはかすかに目を伏せたが、そこに悲しみの影を見た気がして、シンは思わず息を呑む。
だが、彼女はもう会話を続けるつもりもなく、教室を出ていく。
(あの瞳……無表情なのに、どこか悲しそう……。どうして気になるんだろう……)
シンは頭痛をこらえながら静かにプリントを回収した。
◇
しばらくして、友人たちに促されシンは保健室へ向かった。
最近の頭痛や物忘れは尋常ではないからだった。
保健室の扉を開けると、新任の保健医・榎本真理が笑顔で迎えてくれた。
ショートヘアに白衣を羽織っている。
落ち着いた声色が印象的だ。
「どうしたの? 顔が青いけど、頭痛かしら?」
「ええ、ちょっとクラクラしちゃって……すみません……」
「疲れでもたまってるの? 最近、何か気になることはない?」
榎本は優しく微笑むが、その瞳に探るような光が宿っている。
シンが「いや、特には……」と苦笑いすると、彼女は「ふうん……」と呟き、小さく頷いた。
「じゃあ無理しないでね。ベッドで少し休んでいいわよ。何かあったらすぐ呼んで」
「はい、すみません……ありがとうございます……」
シンは礼を言いつつベッドに座るが、ふと棚の奥を見やると“研究施設”と書かれたファイルの背表紙がちらりと目に入る。
すると榎本がすっと横に立ち、視線をふさぐようにして「大丈夫?」と気づかれぬように振る舞う。
奇妙な違和感を抱きながらも頭痛がおさまらず、シンはベッドうえで横になるのだった。
◇
日が傾き始めた頃、シンが帰り支度をしていると、コウタが「おい、シン、倒れたりすんなよ?」と軽口を叩く。
ナツミも「ほんとよ、あんたがボーッとしてたら私たちがフォローしなきゃいけないんだから」と呆れ顔。
「わかってる……迷惑かけてごめん……」
「大丈夫大丈夫、そんな深刻そうな顔すんなって」
「そうだよ、シン。あたしやコウタがついてるし」
二人のやり取りに励まされ、シンはスマホのメモを確認する。
また何かを忘れないように、今日のトラブルや頭痛の状況、ユキと少しだけ話したことまで短く記録する。
その行為が自分を落ち着かせる唯一の術だった。
(でも、これ以上忘れたら……俺、一体どうなるんだ……)
不安がちらつく。
コウタが「じゃあ先に行くわ」とナツミとともに廊下へ向かう。
シンは後ろを振り返ると、そこに黒江ユキの後ろ姿があった。
シンは声をかけるきっかけがつかめない。
遠くで誰かが笑い合う声が響く中、彼女だけはひとり淡々と歩いていく。
まるで周囲の喧噪が自分には関係ないと言わんばかりに、背筋を伸ばし、表情を変えずに。
「シン、どうした?」
「なんか、放っておけない気はするんだけど……」
「まあ、向こうが一人で帰りたいなら無理するなって」
コウタに促され、シンは門を出る。
一瞬振り返ると、ユキの姿はもう見えない。
(どうしてあの子のことがこんなに気になるんだろう……俺も自分のことで手一杯なのに……)
胸に渦巻くざわつきを言葉にできぬまま、シンは小さく嘆息して歩き出す。
記憶が抜け落ちる恐怖、原因不明の頭痛。
そしてユキの瞳――無表情の奥に宿る悲しみ。
まるで何かを失ったまま、生きているような瞳。
シンはあの光景を思い出すたび、胸が締めつけられるように痛むのだ。
そんな彼の心情を知らぬまま、周囲のクラスメイトは賑やかに放課後を楽しんでいる。
黒江ユキのことなど気にも留めないように、部活や買い物の予定を楽しげに話している。
シンはその声を遠くに聞きながら、またスマホのメモをそっと開いて今日の出来事を確認する。
「俺、さっき何を……ああ、そうだ……念のため書いとこう……」
だが指が止まる。
頭の中から零れ落ちていくような感覚。
シンは震える唇で小さく言う。
「……やっぱり、ただの物忘れじゃ、ないんだろうな……」
夕焼けに染まる校舎を振り返り、彼は最後にユキの後ろ姿を思い浮かべる。
ひとりで歩く彼女の姿が、なぜこんなにも胸をざわつかせるのか――わからない。
でも、いつか確かめたいという思いが湧いてくるのだった。
◇◇◇
その頃、ユキは人気の少ない道を黙々と歩いていた。
表情はない。
けれど心の中で少しだけ疑問を抱いている。
(どうして、あの人の笑顔が気になるんだろう……。私は……何も感じないはずなのに。)
細い息を吐き、瞳を伏せる。
夕陽の暖かさも、街の喧噪も、彼女にはまるで他人事のよう。
ただ、ほんのかすかな“何か”が心をかすめる。
その小さな違和感が、無表情な胸の奥で確実に芽生え始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる