美少女に【抜かれた】俺は賢者タイムで無双する

暁ノ鳥

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第9章

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 俺の、人生で最も情けない告白。
 それを聞いたレイナは、数秒間、完全にフリーズしていた。

 そのエメラルドグリーンの瞳に、目の前で炎を溜める魔獣の赤い光が映り込んでいる。
 もうダメだ。

 俺のあまりに突拍子のない言葉に、彼女は完全に思考を停止してしまった。
 このまま二人で、こんがり仲良く丸焼きか。

 情けない告白のせいで気まずい雰囲気のまま死ぬとか、前世の俺でもさすがに経験したことのない、最悪の最期だ。
 俺が、全てを諦めかけた、その時だった。

 レイナが、はっ、と息を吸い込んだ。
 まるで、長い長い夢から覚めたかのように。

 彼女の瞳から、驚愕と混乱の色がすっと消え失せる。
 代わりに宿ったのは、嵐の前の海のような、静かで、しかし底知れない覚悟の光だった。

 彼女は、俺の目を真っ直ぐに見つめると、凛とした、それでいて震えそうになるのを必死にこらえた声で、はっきりと告げた。

「……分かった。あなたを信じる」

 その言葉は、どんな魔法よりも力強く、俺の心に響いた。
 信じる。

 この、常識的にも倫理的にもあり得ない、ただの変態の戯言かもしれない俺の言葉を、彼女は信じてくれたのだ。

「早く!」

 レイナの声に、俺は我に返る。
 彼女は俺の体を瓦礫のさらに奥へと押し込み、自らも身を滑り込ませた。

 魔獣が、俺たちの隠れる瓦礫の山に巨大な前足を叩きつける。
 ズシン! と、地響きと共に凄まじい衝撃が襲いかかってきた。
 
 瓦礫が崩れ、俺たちの隠れ場所がさらに狭くなる。
 もう、一秒の猶予もない。

「こ、こうすればいいの?」
 
 暗闇の中、レイナが震える声で尋ねる。
 そして、彼女の温かい手が、俺の冒険者用のズボン中にはいり、俺のモノにそっと触れた。

 その瞬間、俺の頭は羞恥で完全に沸騰した。
 まずい。無理だ。やっぱりできない。

 目の前には死の恐怖、隣には美少女、そしてこれから行われようとしているのは、人類の歴史上、最も情けなくて、最も神聖な、生存のための儀式。
 情報量が多すぎて、俺の脳のキャパシティはとっくに限界を突破している。

「ご、ごめん……こんなこと、させるなんて……」
「謝らないで。私は、あなたを信じるって決めたから……こんなことするの、初めてだから……うまくできるか、分からないけど……」

 レイナが、消え入りそうな声で呟く。
 彼女の手が、ゆっくりと、しかし確かな意志を持って動き始めた。
 
 その温かくて柔らかな感触が伝わってくる。
 俺は、自分の呼吸がどんどん荒くなっていくのを感じた。
 
 ズドン!

 再び、魔獣の攻撃が瓦礫を揺らす。
 この世の終わりみたいな轟音がすぐそこで鳴り響いているのに、俺の意識は、すぐ隣にある彼女の存在と、自分の下半身に注がれる熱に、全て奪われていた。

「……っ」

 俺は必死で声を殺す。
 レイナの顔は見えない。

 だが、彼女の荒い息遣いと、時折、俺の太ももに当たる彼女の髪の感触が、すぐそこにある。
 彼女も、怖いはずだ。恥ずかしいはずだ。

 それなのに、彼女はただひたすらに、俺を信じて、この絶望的な状況を打開するためだけに、その手を動かし続けてくれている。
 その健気さが、その信頼が、あまりにも尊くて、申し訳なくて、俺は泣きそうになった。

「レイナ……ありがとう……」

 俺がかろうじて絞り出した声に、彼女が小さく応える。
 
「……頑張って、レン……!」

 その囁きは、まるで祈りのようだった。
 彼女の祈りが、俺の体に最後の熱を注ぎ込む。
 
 もう、限界だ。

 身体の奥深くで、何かが弾ける。
 その瞬間――。

 カッ!

 俺の全身が、内側から爆発したかのように、凄まじい光を放った。
 それは、太陽を凝縮したかのような、純粋で、清浄で、圧倒的なまでの白銀の光。
 
「きゃっ!?」

 あまりの眩しさに、レイナが悲鳴を上げて目を覆う。
 光は、俺たちの隠れていた瓦礫の山を吹き飛ばし、遺跡の広間全体を白昼のように照らし出した。
 魔獣が、その予期せぬ光に驚き、怯んだように後ずさる。

 やがて、光が収束していく。
 俺の体を中心に。

 俺は、ゆっくりと立ち上がった。
 さっきまでの恐怖も、羞恥も、焦りも、全てが嘘のように消え去っていた。

 頭の中は、氷のように冷徹で、宇宙のように静ひつ。
 世界のあらゆる法則、魔法の全ての知識、森羅万象の理が、濁流のように俺の中に流れ込んでくる。

 これが、賢者。
 これが、俺の本当の力。

 レイナが、恐る恐る腕の隙間からこちらを見る。
 そして、息をのむのが分かった。

 俺は、彼女に視線を向けた。
 そこに映っていたのは、もう、さっきまでの情けない俺ではない。

 その瞳は、全てを見通すかのように深く、その表情は、神のような威厳と、絶対的な自信に満ちていた。
 
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