拝み屋一家の飯島さん。

創作屋 鬼聴

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コツコツさん

拝み屋の飯島。

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今日も、私はコンビニのバイト。
いつも通りのワンオペだ。

最近は『あれ』のせいでロクに眠れず、
ウトウトしながらレジに立つ。

どうしよう‥今日もいるのかな‥あれ‥
帰りたくないなぁ‥

私がそんなことを考えていると、
来客があった。それも変わった来客が。


その男は、長めの黒髪に、細身の真っ黒いシャツに
これまた真っ黒いスキニーのパンツ。

180はゆうにあるだろう長身で、
しかも高いピンヒールを履いている。

サラサラした長めの前髪の隙間から、
すこし狐顏の美しすぎるほどの整った顔が見えた。

おお‥イケメンだ。

私がそんなことを思っていると、
何故かその男は、商品をなにも取らず、
まっすぐに、私の居るレジに向かってきた。
タバコでも買いに来たのかな‥

私が対応しようとすると、
男はシャツの胸ポケットから名刺を差し出した。こんなことは想定外で私は固まる。


「俺はこういうものなんですが、
貴女の身に何か…妙なことは起こっていませんか?」


名刺をみると、
『拝み屋  飯島 了いいじま りょう』そう書いてあった。


拝み屋というと霊媒師みたいなものだっけ?
ゴーストバスターみたいなもの?
私は眉に皺を寄せながら名刺を睨む。

黙る私を気にもせず、飯島は続けた。


「たとえば、帰り道、
つけられているとか。妙な音がするとか‥」


「えっ?」


私の反応を見るや否や飯島は
レジに手をついて前のめりになる。
綺麗な顔がグイと近づいてきてニヤリと笑う。

「ありますよね?話をしたいな‥
お時間いただけますか?」

驚いていると、丁度バックヤードから
さっき来たばかりの店長が顔を出し、


「水島さんもう交代じゃない?
帰っていいよー」


そう、気さくに話しかけてくる。
なんてタイミングが悪い…

飯島さんはそれを知っていたかのように
ワザとらしく笑って話す。


「おや、ちょうどいいなぁ!
俺の話聞いてくれますよね??

そうだ、あそこのロイホとかどうです?
24時間やってるんで。」


「えっいや‥ちょっと!?」


「決まりですね。
では、外で待っていますよ。」


飯島さんのまくしたてるような誘いと
その妙な威圧感に
私はその誘いを断ることができなかった。

私服に着替えて店を出ると、
壁に寄りかかってタバコを吸う飯島さんがいた。

「お、私服だ。
いつも小綺麗で可愛い格好ですよね。
そういうの俺、好きですよ。」

飯島さんはニコニコ笑ったまま
タバコを揉み消す。

見た目は良いのになんか軽い人だなぁ‥

「もしかして新手のナンパですか?
だったら私、帰りますよ。」

私はくるりと背を向ける。


「わー!違います!違います!
単に思ったんですって!」


飯島さんは慌てて私を引き止め、
軽く腕を引きながら、
深夜のファミレスへ向かった。

そこで、通されたのは窓際の四人席。
窓からは車通りの少ない夜の国道が見える。
私達は軽い食事を注文して本題に入った。


「で、『コツコツさん』に
ついてどれくらい知ってます?
というか、聞いたことありますか?」


私は昨日聞いた噂をそのまま話してみた。
すると飯島さんは考えるような動作をする。


「あー大体合ってますね。 

で、追いつかれたらヤバいっていうのは
具体的に言うと足を捥がれます。
彼女の身に起こったこと同じ方法でね。

その女子高生も含めて
あの踏切では6人が死亡しています。」


…にわかに信じ難いけれど
飯島さんの声色に冗談味は感じられない。
現に起こりかけている事だし…渋々信じる事にした。

「…脚を捥がれるって…対処法とかないんですか?塩を盛るとか‥?」

そんな私の質問に飯島さんはこう答えた。

「んー、そうですね。対策として…
ひとまず…俺を貴女の家に泊めてもらえます?」


「は?」


この人‥ホントに何考えてるんだろ?
ありえない。私は大きく溜息をついた。


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