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飯島家本家
飯島家の奇妙な人々。
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玄関に上がると目の前には5枚ほどの障子で
隔てられた大きな部屋があった。
飯島さんは私の手を引いたまま、
その大部屋の障子に手をかける。
「あの‥楓さん、
我が家は拝み屋一族なのもあって‥
少し変わってるんです。
あまり驚かないでくださいね。」
「驚く‥?」
「まぁ見たらわかりますよ。」
私が首をかしげると飯島さんは
ピシャリと障子を開ける。
同時に声が聞こえた。
何十人もの声がピッタリと折重なった声が。
『了様。おかえりなさいませ。』
発せられた先を見ると、
100人程の能面を被った女性が
こちらにこうべを垂れていた。
「!!!!?うぉわあっっ!!??
何?!飯島さん!!?なにこれ?!」
思わず飯島さんの腕を掴んで、
彼と能面の人達を交互に見る。
規則正しく並んだ能面の女性達は
圧巻で、まるでコピーアンドペーストしたみたい…脳の処理が追いつかない。
なに?!これ?夢??
テンパる私をよそに飯島さんは、
呆れたように頭を抱える。
「ウチの使用人です‥。
楓さんが驚くだろうからよせって
言ったんですけどね‥」
飯島さんがそう言うと能面の使用人さんの一人が弾んだ声で話しかけてきた。
その他大勢の使用人さんとは違った
金の刺繍の黒い着物を着た使用人さんで、
たぶん偉い人なのかも。
「そう言う訳にもいきませんよ。
了お坊ちゃん、我らが飯島家の次期当主の
妻となる方がいらっしゃるんですもの。」
「え?‥なんか話が飛躍してない?」
妻?私が?
結婚なんかしたら‥本当に逃げられなく‥
そう考える間もなく、能面の使用人は
私の手を握りと話を続ける。
その手は了さんと同じく
ヒヤリとしていてまるで死人みたいだった。
「あぁ貴女が楓様ですね。
お噂どおり愛嬌のあるお方ですね。
了様とご結婚だなんて
これ以上ない幸福でしょう?」
「いやあの‥私‥」
そう言い終える間もなく、
私の声は遮られる。
まるで私にそれを否定されまいとするように。
「ささ、こちらへどうぞ。
『朱雀の間』で親族の方々がお待ちですよ。」
その言葉に飯島さんが眉をあげた。
「え、親戚、集まってるんですか?
本家の人も分家の奴も?」
「ええ、了様のご結婚はこの飯島家にとって
最重要の催事ですからね。」
その言葉に珍しく彼は苦い顔をした。
「マジですか‥恋人にいきなり両親やら
親戚どもに挨拶させるとか‥
俺が重い男だと思われちゃうじゃないですかー。もー‥」
飯島さんは「重い男」以前に‥
「ヤバい男」だから
それはあんまり気にならない。
それよりこんな人の家族なんて‥
まともじゃないに決まってる。
会わない方がいい!使用人ですら変だし!
ていうか能面だし‥正直、気味が悪い‥。
早く逃げないと‥でも、どうやって‥?
どんどん私‥逃げられなくなってる様な…
そんなことを考えていると
ガッシリと肩を掴まれ引き寄せられた。
痛いくらいの力で。
「っ‥!!」
けれど飯島さんは、何でもないかのように
気さくに聞いてくる。
「はー‥仕方ありませんね。
楓さん、いきなりで申し訳ないんですが、
うちの親戚に挨拶だけ‥いいですか?」
「え‥あ‥」
‥この人に考えを読まれているような気がして‥怖かった。あの眼を見ていると
何もかも見透かされてる気がした。
「‥‥‥じゃあ行きましょうか。」
飯島さんはうっすらと笑みを浮かべ、
私の返答を待たずに歩き始めた。
会わないという選択は取れそうにない。
私は肩を抱かれたまま、
ドミノのようにこうべを垂れていく
能面の使用人達を見ながら歩く。
あぁ‥もう‥どうしよう‥?
泥沼に足を取られたみたいに
もがけばもがくほど 深くはまって
逃げ道がなくなってゆく…
もう救世主でもいない限りどうしようもないんじゃ‥。
でも、悲しい事に私の味方は
背後で内臓を引きずりながら
コツコツと歩く上半身しかない女の子だけ‥
ああ‥絶望的だ‥どうやって逃げたら‥
そんなことを考えていると
使用人さんの1人がすれ違いざまに
こう言い放つ冷たく低い重みのある声色で。
「貴女はもう逃げられませんよ。
私達の贄嫁様ですもの‥」
隔てられた大きな部屋があった。
飯島さんは私の手を引いたまま、
その大部屋の障子に手をかける。
「あの‥楓さん、
我が家は拝み屋一族なのもあって‥
少し変わってるんです。
あまり驚かないでくださいね。」
「驚く‥?」
「まぁ見たらわかりますよ。」
私が首をかしげると飯島さんは
ピシャリと障子を開ける。
同時に声が聞こえた。
何十人もの声がピッタリと折重なった声が。
『了様。おかえりなさいませ。』
発せられた先を見ると、
100人程の能面を被った女性が
こちらにこうべを垂れていた。
「!!!!?うぉわあっっ!!??
何?!飯島さん!!?なにこれ?!」
思わず飯島さんの腕を掴んで、
彼と能面の人達を交互に見る。
規則正しく並んだ能面の女性達は
圧巻で、まるでコピーアンドペーストしたみたい…脳の処理が追いつかない。
なに?!これ?夢??
テンパる私をよそに飯島さんは、
呆れたように頭を抱える。
「ウチの使用人です‥。
楓さんが驚くだろうからよせって
言ったんですけどね‥」
飯島さんがそう言うと能面の使用人さんの一人が弾んだ声で話しかけてきた。
その他大勢の使用人さんとは違った
金の刺繍の黒い着物を着た使用人さんで、
たぶん偉い人なのかも。
「そう言う訳にもいきませんよ。
了お坊ちゃん、我らが飯島家の次期当主の
妻となる方がいらっしゃるんですもの。」
「え?‥なんか話が飛躍してない?」
妻?私が?
結婚なんかしたら‥本当に逃げられなく‥
そう考える間もなく、能面の使用人は
私の手を握りと話を続ける。
その手は了さんと同じく
ヒヤリとしていてまるで死人みたいだった。
「あぁ貴女が楓様ですね。
お噂どおり愛嬌のあるお方ですね。
了様とご結婚だなんて
これ以上ない幸福でしょう?」
「いやあの‥私‥」
そう言い終える間もなく、
私の声は遮られる。
まるで私にそれを否定されまいとするように。
「ささ、こちらへどうぞ。
『朱雀の間』で親族の方々がお待ちですよ。」
その言葉に飯島さんが眉をあげた。
「え、親戚、集まってるんですか?
本家の人も分家の奴も?」
「ええ、了様のご結婚はこの飯島家にとって
最重要の催事ですからね。」
その言葉に珍しく彼は苦い顔をした。
「マジですか‥恋人にいきなり両親やら
親戚どもに挨拶させるとか‥
俺が重い男だと思われちゃうじゃないですかー。もー‥」
飯島さんは「重い男」以前に‥
「ヤバい男」だから
それはあんまり気にならない。
それよりこんな人の家族なんて‥
まともじゃないに決まってる。
会わない方がいい!使用人ですら変だし!
ていうか能面だし‥正直、気味が悪い‥。
早く逃げないと‥でも、どうやって‥?
どんどん私‥逃げられなくなってる様な…
そんなことを考えていると
ガッシリと肩を掴まれ引き寄せられた。
痛いくらいの力で。
「っ‥!!」
けれど飯島さんは、何でもないかのように
気さくに聞いてくる。
「はー‥仕方ありませんね。
楓さん、いきなりで申し訳ないんですが、
うちの親戚に挨拶だけ‥いいですか?」
「え‥あ‥」
‥この人に考えを読まれているような気がして‥怖かった。あの眼を見ていると
何もかも見透かされてる気がした。
「‥‥‥じゃあ行きましょうか。」
飯島さんはうっすらと笑みを浮かべ、
私の返答を待たずに歩き始めた。
会わないという選択は取れそうにない。
私は肩を抱かれたまま、
ドミノのようにこうべを垂れていく
能面の使用人達を見ながら歩く。
あぁ‥もう‥どうしよう‥?
泥沼に足を取られたみたいに
もがけばもがくほど 深くはまって
逃げ道がなくなってゆく…
もう救世主でもいない限りどうしようもないんじゃ‥。
でも、悲しい事に私の味方は
背後で内臓を引きずりながら
コツコツと歩く上半身しかない女の子だけ‥
ああ‥絶望的だ‥どうやって逃げたら‥
そんなことを考えていると
使用人さんの1人がすれ違いざまに
こう言い放つ冷たく低い重みのある声色で。
「貴女はもう逃げられませんよ。
私達の贄嫁様ですもの‥」
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