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飯島家本家
めでたい日
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私達が通されたのは
もの凄く大きい宴会場だった。
真ん中には長いテーブルが置かれ、
その上には高そうなお寿司やらお酒。
そこでは卓を囲む40人ほどの飯島家の人達が、談笑していた。
フツーにも見える人もいるけど
半分以上がお面をしている人、
それに着物の人、ピアスだらけの人、
真っ白い髪の変な眼鏡の人‥
なんだか不思議な雰囲気の人ばかりだ‥
彼らは陽気に私に笑いかけてくるが
なんだか気味が悪い。
キョロキョロと周りを見渡していると
ひょっとこの面の男性が声をかけてきた。
「いやぁ‥了お坊ちゃんが嫁をとるとは‥
めでたいなぁ。ああ!嫁様!一杯いかがです?」
「あ、いや‥私ギリ未成年なんで‥」
私は、ひょっとこのおじさんを
あしらってから、ため息をついて欄間を眺める。
「‥どうしよう‥」
飯島さんは私の肩を抱いたまま、
親戚と思われる方々に挨拶をしていた。
「了様、おめでとうございます。」
「あぁ、ありがとうございます。……」
飯島さんは適当にお礼を言って、
小さく呟いた。
「‥‥はぁ‥親戚付き合いって怠いなぁ‥
楓さん、早く二人きりになりたいですね‥」
真っ黒い瞳がぐるりと動いて私を見つめる。
「…え、‥あ‥はい‥そう‥ですね‥」
嫌すぎる。二人きりになるなら、
この変な親戚たちがいる方がマシ。
その方が少しは安全な気がするし。
親戚の人達は並んで、
一人ずつ祝いの言葉をかけては入れ替わる‥
その中にかなり特徴的な人が一人。
「あ、お‥おめでと‥了くん‥」
挨拶しに来たのは、ピアスだらけの青年だった。その姿はまるで内気なパンクロッカー。
耳や鼻筋、口、首、鎖骨、手首、
もはやピアスを開けていない場所の方が少ない。
青年は長髪で真黒いボサボサの髪を一つに束ねている。服も黒ずくめ。
‥でも、飯島さんに敬語を使っていない人はここに来て初めて見た。友達なのかなぁ‥
そんなことを思いながら、その人を見ていると…ふと目があった。
「…あ」
青年は目を丸め、少し眉を下げた。
まるで私を哀れむみたいに。
でも、それは一瞬で、彼は目をすぐに背け
部屋の隅の席に戻っていった。
変な人‥‥でも
ちょっとカッコよかったかも‥?
ビジュアル系というか?
痩せ過ぎかなと思うけど‥アリ。
私はニヤニヤしながらそんなことを考えて‥
‥いや!!そんなこと考えてる場合じゃない!どうやって逃げるか考えないと‥
首をブンブン振って気持ちを切り替える。
どうしよう……うーん…
やっぱり結婚なんかしないって意思を
親戚の人達に伝えた方がいいよね‥!!
さすがに無理矢理になんて‥しないだろうし‥
そうあれこれ考えているとずしっと
肩に重みを感じた。
「はぁ‥疲れましたよー‥
わざわざ祝辞なんていらないのに‥」
飯島さんが首をもたげて、肩に寄りかかっている。
近い。凄い良い匂いがする。睫毛長っ‥
飯島さんは、また一つ溜息をつくと
そのまま私の腰を掴んで抱き寄せ、
耳元に唇を近づける。
「…じゃあ挨拶も終わったことだし
寝室に行きましょうか。
‥二人きりで‥悪い事をしましょう‥?」
飯島さんは艶っぽく微笑んだ。
ドキッとしてしまうくらい。‥けど、
「…え。」
ちょっと待って、それは含みのある言動?
含みなんてないって信じてる。
そう、彼は寝室で眠りたいだけ。
きっと…絶対そう。
そう願っていると、親戚の1人が
「おお!熱いなぁ!
了様あんまり嫁様に無理させませんように
しなさいな!」
「わかってますよ。全く余計なお世話だなぁ‥」
飯島さんはしゃなりと返す。
親戚達はやんやと笑い、思い思いに話し出す。
「婚姻もしていないのに
張り切りますねぇ‥坊っちゃま。」
「嫁様も困るでしょ?囃し立てなさんな。」
「いやぁ‥婚姻の儀が楽しみですなぁ!」
「若い二人で愉しんできんさいよ。」
さっきっから思ってはいたけど
みんな完全に結婚する前提で話してる‥!!!
それ以前にこのまま流されたら
私の貞操がヤバイよね!!?
もう、言っちゃった方がいいよね!?
早く断らないと手遅れになる!!
私は意を決して、
ガヤガヤとした空気の中、大きく声を上げる。
「あの!!
ちょっと待って!皆さん聞いて!!
私、結婚する気はないですから!!!」
‥‥そう私が言い放った瞬間。
しん、と周りは静まり返った。
ガヤガヤと話していた親戚達は
急に口を堅く閉じ、恐ろしいほどに見開かれた真っ黒な目で私を凝視した。
全員が、こちらを見ている。
その眼は虚空の様だった。
「えっと‥あの‥皆‥さん‥‥?」
声を掛けても、誰も返してくれない。
そして、黙ったまま、私の方を見つめ、
1人また1人と席から立ち上がる。
何故か彼らの手にはビール瓶や、灰皿、包丁、 植木用鋏などが握られていた。
背中の毛が逆立つような寒気。
本能から出る滝の様な気持ちの悪い冷や汗。
さっきの言葉を今すぐ飲み込めたらいい。
今すぐ訂正しないとまずい事になるのは目に見えていた。
もの凄く大きい宴会場だった。
真ん中には長いテーブルが置かれ、
その上には高そうなお寿司やらお酒。
そこでは卓を囲む40人ほどの飯島家の人達が、談笑していた。
フツーにも見える人もいるけど
半分以上がお面をしている人、
それに着物の人、ピアスだらけの人、
真っ白い髪の変な眼鏡の人‥
なんだか不思議な雰囲気の人ばかりだ‥
彼らは陽気に私に笑いかけてくるが
なんだか気味が悪い。
キョロキョロと周りを見渡していると
ひょっとこの面の男性が声をかけてきた。
「いやぁ‥了お坊ちゃんが嫁をとるとは‥
めでたいなぁ。ああ!嫁様!一杯いかがです?」
「あ、いや‥私ギリ未成年なんで‥」
私は、ひょっとこのおじさんを
あしらってから、ため息をついて欄間を眺める。
「‥どうしよう‥」
飯島さんは私の肩を抱いたまま、
親戚と思われる方々に挨拶をしていた。
「了様、おめでとうございます。」
「あぁ、ありがとうございます。……」
飯島さんは適当にお礼を言って、
小さく呟いた。
「‥‥はぁ‥親戚付き合いって怠いなぁ‥
楓さん、早く二人きりになりたいですね‥」
真っ黒い瞳がぐるりと動いて私を見つめる。
「…え、‥あ‥はい‥そう‥ですね‥」
嫌すぎる。二人きりになるなら、
この変な親戚たちがいる方がマシ。
その方が少しは安全な気がするし。
親戚の人達は並んで、
一人ずつ祝いの言葉をかけては入れ替わる‥
その中にかなり特徴的な人が一人。
「あ、お‥おめでと‥了くん‥」
挨拶しに来たのは、ピアスだらけの青年だった。その姿はまるで内気なパンクロッカー。
耳や鼻筋、口、首、鎖骨、手首、
もはやピアスを開けていない場所の方が少ない。
青年は長髪で真黒いボサボサの髪を一つに束ねている。服も黒ずくめ。
‥でも、飯島さんに敬語を使っていない人はここに来て初めて見た。友達なのかなぁ‥
そんなことを思いながら、その人を見ていると…ふと目があった。
「…あ」
青年は目を丸め、少し眉を下げた。
まるで私を哀れむみたいに。
でも、それは一瞬で、彼は目をすぐに背け
部屋の隅の席に戻っていった。
変な人‥‥でも
ちょっとカッコよかったかも‥?
ビジュアル系というか?
痩せ過ぎかなと思うけど‥アリ。
私はニヤニヤしながらそんなことを考えて‥
‥いや!!そんなこと考えてる場合じゃない!どうやって逃げるか考えないと‥
首をブンブン振って気持ちを切り替える。
どうしよう……うーん…
やっぱり結婚なんかしないって意思を
親戚の人達に伝えた方がいいよね‥!!
さすがに無理矢理になんて‥しないだろうし‥
そうあれこれ考えているとずしっと
肩に重みを感じた。
「はぁ‥疲れましたよー‥
わざわざ祝辞なんていらないのに‥」
飯島さんが首をもたげて、肩に寄りかかっている。
近い。凄い良い匂いがする。睫毛長っ‥
飯島さんは、また一つ溜息をつくと
そのまま私の腰を掴んで抱き寄せ、
耳元に唇を近づける。
「…じゃあ挨拶も終わったことだし
寝室に行きましょうか。
‥二人きりで‥悪い事をしましょう‥?」
飯島さんは艶っぽく微笑んだ。
ドキッとしてしまうくらい。‥けど、
「…え。」
ちょっと待って、それは含みのある言動?
含みなんてないって信じてる。
そう、彼は寝室で眠りたいだけ。
きっと…絶対そう。
そう願っていると、親戚の1人が
「おお!熱いなぁ!
了様あんまり嫁様に無理させませんように
しなさいな!」
「わかってますよ。全く余計なお世話だなぁ‥」
飯島さんはしゃなりと返す。
親戚達はやんやと笑い、思い思いに話し出す。
「婚姻もしていないのに
張り切りますねぇ‥坊っちゃま。」
「嫁様も困るでしょ?囃し立てなさんな。」
「いやぁ‥婚姻の儀が楽しみですなぁ!」
「若い二人で愉しんできんさいよ。」
さっきっから思ってはいたけど
みんな完全に結婚する前提で話してる‥!!!
それ以前にこのまま流されたら
私の貞操がヤバイよね!!?
もう、言っちゃった方がいいよね!?
早く断らないと手遅れになる!!
私は意を決して、
ガヤガヤとした空気の中、大きく声を上げる。
「あの!!
ちょっと待って!皆さん聞いて!!
私、結婚する気はないですから!!!」
‥‥そう私が言い放った瞬間。
しん、と周りは静まり返った。
ガヤガヤと話していた親戚達は
急に口を堅く閉じ、恐ろしいほどに見開かれた真っ黒な目で私を凝視した。
全員が、こちらを見ている。
その眼は虚空の様だった。
「えっと‥あの‥皆‥さん‥‥?」
声を掛けても、誰も返してくれない。
そして、黙ったまま、私の方を見つめ、
1人また1人と席から立ち上がる。
何故か彼らの手にはビール瓶や、灰皿、包丁、 植木用鋏などが握られていた。
背中の毛が逆立つような寒気。
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