拝み屋一家の飯島さん。

創作屋 鬼聴

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飯島 禊

飯島 禊

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もう無理だ!!何もかも終わった…!!
私は五体不満足の達磨みたいにされて
一生、飯島さんに嬲られて死ぬんだ…!!

「やめて…!!やめて!!!」

そう泣き叫んでいた時
奥の暗闇からガサガサと音がして、
くぐもった自信なさげな低い声がした。


「あ、あの、待って、」


その声がした瞬間、
一斉に使用人達はそちらに顔を向ける。

そして私も。

声の主はまだ暗闇の中で
ガサガサと葉音をたてている。


「あ、ヤバ‥服が枝に‥あ、取れた。」


そんな間の抜ける様な独り言が聞こえて、
声の主は草を掻き分けて、出てきた。

細い身体に真っ黒い服、真っ黒い長髪
クマのひどい不健康そうな青年。

彼が一歩進むたびに
ピアスや指輪やその他のアクセサリーが
ジャラジャラと音をたてた。


「あ、」


さっき、飯島さんと話してた。
"内気なパンクロッカー"さんだ。


「あの、彼女は、僕のピアスを
探してくれてただけ‥なんだ。
離して‥あげて」


彼は、オドオドと吃りながら、
使用人に言った。


「ピアス探し‥ですか?‥みそぎ様‥?
"直属本家"の貴方が
了様の婚約者にさせて良いとこでは‥」


使用人はあからさまに怪訝な声を上げる。
けれどパンクロッカーさんは以外と動じない。


「彼女が親切だったってだけ。

それより、彼女は逃げようとしたわけじゃない。だから、処置はいらない。離して。」 


パンクロッカーさんは植木バサミを持った使用人の手首を掴んだ。


「…………」


真っ暗で静まり返った森の中、
しばらく二人は睨み合っていた。


「…………わかりました。」


使用人達は渋々といった様子で私から離れた。
パンクロッカーさんは腰を抜かしたままの私に
無言で手を差し伸べた。


「あの、ありが‥」


「いいから‥早く戻ろう‥」


手を取ると、彼は私の手を引き
逃げるみたいに歩き出す。

彼の手は骨張っていてじっとりと濡れている。
足元からはザクザクと砂利を踏みしめる音がした。


「‥‥」


‥助かった。


気がつくと、私達は屋敷の縁側に戻ってきていた。
パンクロッカーさんは、大きく溜息をつくと、
ドスリと縁側に腰掛けた。


「‥ここまでくれば、多分‥大丈夫。」


その言葉にひどく安堵を覚えた。
全身の力が抜けてる。そして安堵と共に
彼の肩を掴んで叫ぶみたいに話しかけた。


「ああーー!!
死ぬかと思ったー!!!!ありがとうーー!!」


彼は少し驚いた素振りを見せたが、
呆れたように笑った。


「‥どういたしまして。でも、大声あげると
了くんにバレるよ‥他の奴にも。

この家にマトモな奴なんていない。
用心しないと‥」


私は彼に促され横に座った。


「あの本当にありがとう。えっと‥」


「飯島 みそぎ
"禊"でいい。この家にいるの全員飯島だし‥」


禊さんはまた溜息をついて細い月を見上げた。
溜息を吐くのはどうやら彼の癖みたいだ。

禊さんは煙草を取り出すと100円ライターで火をつける。
細身の煙草は彼によく似合っていた。

煙がゆらゆら揺れて夜の闇に消える。
暫くタバコを吸いながら外を見ていた彼が
スッとこちらに目を向けた。
こちらというか、私の太ももの方。


「え、なんです?」


「‥‥怪我は?ない‥?」


禊さんの表情は乏しいけど、
眉が少しだけ下がったのがわかった。

「優しいですね禊さん。
全然大丈夫ですよ!」

「別に優しいわけじゃない。
僕は私利私欲で君を助けた。

彼女のことが知りたくて。」


「…彼女?」


一体何のことを言っているのか
わからなかった。誰のこと‥?

そんなことを考えていると、
禊さんの目の色が変わる。


「うん彼女だ‥彼女‥

上半身で這いずり廻ってる彼女‥!!
きっと、いい素材になる‥。彼女が欲しい‥」


そう言いながら、禊さんは私の方に迫るように床に強く手をつき、私の二の腕を掴む。

多分、彼が言ってるのは白石さんのこと?


「え、ちょっ!禊さん??!」


そのまま
なし崩しに彼に押し倒されるような形に
なるが、禊さんは気にする様子はない。
彼の真っ黒い長髪がカーテンの様にかかり
荒い吐息が聞こえてくる。


「ねぇ!教え‥‥」


禊さんがそう言いかけた途端、
一瞬で‥彼が目の前から消えた。
正確には縁側から庭先に蹴り飛ばされた。


物凄い形相の飯島さんに。
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