拝み屋一家の飯島さん。

創作屋 鬼聴

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えんのした様

廃屋探検をしよう2

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「ひゃ!ちょっと!了さん!
お尻触らないで!」

「恋人なんだからいいでしょう?
窓に引っかかってまごついてるのが
悪いんですよ。」

私はドアの上の窓に身体を捩じ込みながら
なんとか奥に潜入しようと試みる。
身体のほとんどは奥の廊下に出ているのだがお尻がつっかえていた。

「…大丈夫…?僕も手伝おうか?」

「禊。
楓さんに触ったら肋骨へし折りますよ」

「あ…そう…じゃあやめとく…」

背後から二人の会話が聞こえる。

あー!もう!!
なんで私がこんな事しないとなの!!?
怒りに任せて身を捩ると、
窓からお尻が急にスポッと抜けて
身体が奥の廊下に放り出された。

「わっ!?」


向こう側には大量の段ボール箱が
ドアを塞ぐ様に置かれていて、
それを崩しながら私は奥の縁側へと
着地する。ガラガラと音がして
ドアの向こうから私を心配する声がした。


「いたた…ふぅ…」


顔を上げると、左側に廊下と繋がった縁側があり右側には比較的大きな和室。

縁側にあるガラス扉から眩しい夕陽が
差し込んでいるのに部屋の中は真っ暗。

…なんだか異様だった……空気が重く、
手前の部屋とは違う…
『何か』の気配がある。

あの和室の闇の奥に…
何かがいる気がしてならなかった。

「……」

怖くなって私はその闇に目を凝らす。

「えっ!!??」

…あの闇の向こう…
…何か動いてる…?!?

…勘違い…じゃない…だって
畳を踏む音も聞こえる…!!!

ドクドクと心臓が鳴る。徐々に目が慣れていって闇の中が鮮明になっていく。

「…ぁ」

闇の中のそれは男だった。見えているのは
人の形をした真っ黒な影だけれど
間違いなく大人の男性。
しかもそれは畳を踏みしめながらこちらに
歩いて来ている。

驚きすぎて声も出ない…!!!
何アレ何!何!?何なの!!??
幽霊!!!?しかも手に何か持って…

「っ…!!!!」

悲鳴を上げそうになったその瞬間
背後にあるドアの向こうから
了さんの声がした。

「楓さん~?どうしました?
大丈夫ですか??
ドアは開けられなそうですか?」

「えっ…ぁ!」

そうだ早く!!
早く二人と合流しなきゃ!!
二人がいればきっと退治できるはず!!
私は猛スピードでドアに引っかかっていた
段ボールを取り除き、ドアを開け
了さんの胸に飛びついた。

「り…了さんっ!!!出た!!
出たんです!!
アレ!!あれを見てください!!!
倒して!!!」

私は了さんの胸に顔を埋めたまま
黒い影の男がいた方を指差した。

「…??」

けれど二人は静かなまま。
禊さんがトテトテと奥に入って部屋中
歩き回る音がする。そして一言。

「…なんもいないけど…?」

「えっ…そんな!さっきまで…」

顔を上げて見渡すと確かに黒い影はいなかった。それどころか部屋もなんだか
さっきより明るく見える…。

「も~楓さんったら…俺にくっついて甘えたいならそう言って下さいよ~!可愛いですね?ヨチヨチしてあげましょうか?!」

胸に縋り付かれた了さんは上機嫌で私を抱きしめながら、全身を揉む様にわしゃわしゃ撫でてくる。

「ひゃっ!?違くて!!本当にいたの!!
黒い影が!!てか変なとこ触らないで下さいっ…!」

「ふふ分かってますよ。冗談です。

……確かにこの部屋…何か居ますね。
…うーん…」

そうは言いつつ了さんは私を抱いたまま
尻を揉んでくる。しかも結構際どい所を。
禊さんはそれを見て見ぬ振りをしつつ
部屋を調べている…

「…確かに…。なんか…いる…
しかも複数。
噂通り子供の霊だね…」

「やっぱり禊もそう思います?
ですよね。これは…子供の霊が4人……
いや5人…だと思います。」

「へ?子供??」

あれ?おかしいな…あの影、
子供にしては大きかった気がするのに…。
お化けには大きさなんて関係ないのかな…

「…と言うか了さんも禊さんも
見てないのにそんなことわかるんですか?」

「わかりますよ。
我々の様にプロでなくても
霊感持ちは霊の性別とか年齢が
なんとなくわかるものなんです。」

「そう…なんだ…」

私は釈然としない気持ちも抱えつつ
頷いた。

「うーん…でも、了さん。私が見たの
大人の男の人でしたよ?
手になんか持ってて…黒い服の…」

「えっ?そうなんですか??妙ですね…。
禊とも意見が一致してるし…
子供で間違いないと思うんですが…」

そんな会話をしている間にも禊さんは
部屋のあちこち歩き、辺りを調べまわり、
縁側の外へと続くガラス戸を
ガラガラと開けた。
ガラス戸は古ぼけていて滑りが悪く、
砂埃まみれで曇っていて、
ガラス面にはザ・昭和って感じの
切り子模様が刻まれている。

「ぁ…ここからなら噂の検証できそう…
ほら…はやく二人も来なよ…!」

禊さんのニヤニヤした顔がぐるりと
こちらに向けられ、彼は颯爽と
縁側の外に出ていく。
本当に心霊好きなんだな…この人…

私達もついていく様に外に出ると
外はもうほとんど日が暮れていた。
辺りの山は闇に沈んで隙間から見える
ぼんやりとした夕陽の残光だけが
ギリギリ空を照らしていた。

要するめちゃくちゃ薄暗くて怖い。
山の中だし物理的にも怖いし、
気味も悪い。

その、もはや夕陽とも呼べるのか微妙な
薄明かりに照らされる廃屋は
さっきの事もあって更に不気味に見えた。

そして、その廃屋の足元…
噂の『えんのした』には吸い込まれそうな
ほどの闇だけが広がっている。

見ているだけで心がざわつく様な
まるでうねっている様な暗闇…。
悲鳴すら飲み込んでしまいそうな…闇…。


しかし、私が戦々恐々としている横で
テンション爆上げの禊さんは叫ぶ。

「あぁ…良し!!良しぃ…!!
さぁ了くん!楓さん!!はやく…っ
はやく…!!
噂の検証を始めようじゃあないか!!」


…もう、禊さんだけに
任せるんでよくない…??
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