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翌日、アストレイアの元に手紙が届けられた。
もちろん手紙の贈り主はヴィラジュリオだ。
手紙の内容はというと、「王城にいつでも遊びに来て欲しい」と言うものだった。
本来であれば遠慮するところではあるが、アストレイアにとっては好機だった。
ヴィラジュリオの傍にいることが出来れば、彼の体の状態を見ることができる。
それが出来れば、彼の治療に必要なものが何かを発見しやすいと、そうアストレイアは考えたのだ。
しかし、呼ばれたからと言って、ホイホイと行っていい場所ではなかったのだ。
しばし悩んだアストレイアは、少しズルいとは思いつつも、ヴィラジュリオに任せることにしたのだ。
そして、返事の手紙に「僕は、いつでも空いているので、殿下のご都合のいいときにお誘いいただければ、いつでもお傍に参ります」と、そう書いたのだ。
アストレイアの考えでは、第三王子として忙しい日々を送るヴィラジュリオの時間が取れることは早々ないだろう。と、そう考えた上の返事だったが、アストレイアの予想を遥かに超える事態に発展することとなったのだ。
ヴィラジュリオに返事を書いた翌日のことだった。
本邸から遣いが来たのだ。
先日、アストレイアの身支度を手伝ったメイドが、真新しい服を持ってやってきたのだ。
何事かとビクついていたアストレイアに対して、遣いのメイドは淡々と言った。
「ご子息様。王城より迎えが来ております。急ぎ、身支度をお願いいたします」
そう、不愛想に言うが早い、メイドは事態についていけていないアストレイアを浴室に放り込んでしまったのだ。
そして、浴室の外から淡々とした口調で「すぐに湯あみを済ませてください」とだけ声を掛けたのだ。
慌てて全身を洗ったアストレイアが浴室から出ると、メイドは手際よく髪を乾かし、服を着せていく。
そして、三十分もしないうちに支度を整え終えたのだ。
アストレイアは、無表情のメイドにせかされるようにして迎えに来た馬車に押し込まれるようにして乗せられていた。
つい先日も通った道をぼんやりと眺めつつ、自分の頬を抓ってみる。
「痛い……。夢じゃない。なんで? 殿下に返事を送ったのは昨日だったはずなのに……。こんなに早く……。どどどど、どうしよう。急に緊張してきた……」
独り言を呟いているうちに、あっという間に馬車は王城に着いていた。
アストレイアが、馬車から降りると、信じられないことに、そこにはヴィラジュリオの姿があったのだ。
そして彼は、にこりと瑠璃色の瞳を細めて微笑み、嬉し気な声音で言うのだ。
「やあ。ヴィオ。会いたかった」
ヴィラジュリオの神々しいまでの姿に、アストレイアは両手で顔を覆って心の中で叫んでいた。
(ああ、神様、ここが天国なのですね。殿下のご尊顔が眩しくて、心臓が張り裂けそうです)
そんな、アストレイアの内心を知らないヴィラジュリオは、ニコニコとしながらも小さく首を傾げるのだ。
そんな姿もアストレイアを喜ばせる結果になるなど知らないヴィラジュリオは、アストレイアの奇行をしばし眺めることとなるのだった。
もちろん手紙の贈り主はヴィラジュリオだ。
手紙の内容はというと、「王城にいつでも遊びに来て欲しい」と言うものだった。
本来であれば遠慮するところではあるが、アストレイアにとっては好機だった。
ヴィラジュリオの傍にいることが出来れば、彼の体の状態を見ることができる。
それが出来れば、彼の治療に必要なものが何かを発見しやすいと、そうアストレイアは考えたのだ。
しかし、呼ばれたからと言って、ホイホイと行っていい場所ではなかったのだ。
しばし悩んだアストレイアは、少しズルいとは思いつつも、ヴィラジュリオに任せることにしたのだ。
そして、返事の手紙に「僕は、いつでも空いているので、殿下のご都合のいいときにお誘いいただければ、いつでもお傍に参ります」と、そう書いたのだ。
アストレイアの考えでは、第三王子として忙しい日々を送るヴィラジュリオの時間が取れることは早々ないだろう。と、そう考えた上の返事だったが、アストレイアの予想を遥かに超える事態に発展することとなったのだ。
ヴィラジュリオに返事を書いた翌日のことだった。
本邸から遣いが来たのだ。
先日、アストレイアの身支度を手伝ったメイドが、真新しい服を持ってやってきたのだ。
何事かとビクついていたアストレイアに対して、遣いのメイドは淡々と言った。
「ご子息様。王城より迎えが来ております。急ぎ、身支度をお願いいたします」
そう、不愛想に言うが早い、メイドは事態についていけていないアストレイアを浴室に放り込んでしまったのだ。
そして、浴室の外から淡々とした口調で「すぐに湯あみを済ませてください」とだけ声を掛けたのだ。
慌てて全身を洗ったアストレイアが浴室から出ると、メイドは手際よく髪を乾かし、服を着せていく。
そして、三十分もしないうちに支度を整え終えたのだ。
アストレイアは、無表情のメイドにせかされるようにして迎えに来た馬車に押し込まれるようにして乗せられていた。
つい先日も通った道をぼんやりと眺めつつ、自分の頬を抓ってみる。
「痛い……。夢じゃない。なんで? 殿下に返事を送ったのは昨日だったはずなのに……。こんなに早く……。どどどど、どうしよう。急に緊張してきた……」
独り言を呟いているうちに、あっという間に馬車は王城に着いていた。
アストレイアが、馬車から降りると、信じられないことに、そこにはヴィラジュリオの姿があったのだ。
そして彼は、にこりと瑠璃色の瞳を細めて微笑み、嬉し気な声音で言うのだ。
「やあ。ヴィオ。会いたかった」
ヴィラジュリオの神々しいまでの姿に、アストレイアは両手で顔を覆って心の中で叫んでいた。
(ああ、神様、ここが天国なのですね。殿下のご尊顔が眩しくて、心臓が張り裂けそうです)
そんな、アストレイアの内心を知らないヴィラジュリオは、ニコニコとしながらも小さく首を傾げるのだ。
そんな姿もアストレイアを喜ばせる結果になるなど知らないヴィラジュリオは、アストレイアの奇行をしばし眺めることとなるのだった。
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