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 ヴィラジュリオの言葉にジュトレイゼは目を丸くさせていた。
 突然いなくなってしまった年下の友人の困ったように笑う顔を思い出したジュトレイゼは、これまでにヴィラジュリオが手を尽しても見つけられなかったことを思い出す。
 
「アスタヴァイオン……か。しかし、やつが商業都市にいるのであれば殿下の手の者たちが探せなかったことが気になりますね。もし仮にですが、この魔法薬を作ったのがアスタヴァイオンであれば、少なくとも一年以上はあの都市にいたことになります」

「な……なんだと? 一年以上? 確かに、それだけの時間があって、ヴィオを見つけられないような者たちではない……。であれば……」

「はい。アスタヴァイオンは、正体を隠して潜伏している可能性がありますね。ですが何故そんなことを?」

「分からない……。だが、少しでもアスタヴァイオンに再会できる可能性があるのであれば、俺は会いに行きたい」

「分かりました……。では、魔法薬店の者に知らせを」

 そう言って、ジュトレイゼはその身をひるがえそうとしたが、ヴィラジュリオによって止められていた。
 
「待て……。身を隠しているのであれば、直接行って確かめた方がいいだろう。何らかの方法で、こちらの動きがアスタヴァイオンに伝わった場合、逃げられてしまう」

 真剣な表情でそう言ったヴィラジュリオを見たジュトレイゼは、少々の呆れ顔になってしまっていた。
 友人を探すために今までしていたヴィラジュリオの行動は、友人に向けるには少々・・情熱的すぎた。
 そして、薄々は気が付いていたジュトレイゼは、ヴィラジュリオとアスタヴァイオンの関係性をどう応援するのが正しいのかを考えあぐねていたのだ。
 シュナイデンであれば、きっと心のままにヴィラジュリオのことを応援できたのだろう。しかし、ジュトレイゼには出来そうになかったのだ。
 友人としての立場だけであれば、ヴィラジュリオの気持ちを汲んで応援したいと思うが、第三王子の側近としての立場から考えると、ヴィラジュリオの気持ちを容認できなかった。
 今現在、体の問題が無くなり、次期国王に一番近いとされているヴィラジュリオの伴侶がアスタヴァイオンでは色々と都合が悪いのだ。
 そんなことをジュトレイゼが考えていることなどヴィラジュリオにはお見通しだったのだ。
 友人として、側近として、自分のことを真摯に考えてくれるジュトレイゼに感謝しながら、ヴィラジュリオ言うのだ。
 
「大丈夫だ。お前が考えているようなことにはならないから安心しろ。俺は……。俺は、アスタヴァイオンに友人として会いたいだけだから。だから、お前の心配は無用だ」

「はぁ……。そうであればいいのですが……。はい。俺は、殿下の御心のままにいたしますよ」

 そう言って、肩をすくめたジュトレイゼ。
 ヴィラジュリオは、ジュトレイゼの気持ちを嬉しく思いながら、急ぎ残りの仕事と、数日分の仕事を前倒しで片づけていくのだ。
 そして、一晩で必要な書類の山を片付けたヴィラジュリオは、ジュトレイゼがすでに手配してくれた馬に飛び乗り、商業都市シュミーゼに向かって走り出したのだ。
 
 そして、馬を乗り換えながら、最短で商業都市に着いたヴィラジュリオは、休む間も惜しんで問題の魔法薬店に向かったのだ。
 
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