欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~

バナナマヨネーズ

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本編

第一章 花嫁候補(4)

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 あっという間にテンペランス帝国に旅立つ日がやってきた。
 驚くことに、テンペランス帝国から迎えの馬車と護衛の騎士がやってきたのだ。
 
 ミリアリアは、セイラだけを連れて生まれた国を後にした。
 
 

 道中特に問題もなく、あっという間にテンペランス帝国にたどり着いたミリアリアだったが、王宮で彼女を出迎えたのはたった一人の侍女だけだった。
 小国とは言え、ミリアリアはメローズ王国の姫だというのにこの扱い。この扱いにセイラは、激しい怒りを覚えて出迎えた侍女にきつめの口調で言ったのだ。
 
「これが、遠方から花嫁候補としてやってきた姫に対する扱いですか?」

 しかし、出迎えた侍女は顔色一つ変えずに冷たく言い放ったのだ。
 
「王女殿下に与えられた宮にご案内いたします。どうぞこちらに」

 肩を震わせて怒りをあらわにするセイラの肩を優しく叩いたミリアリアは、その肩を指先で数度リズミカルに叩いたのだ。
 それだけで、ミリアリアの言いたいことを理解したセイラは大きなため息を吐いてから、ミリアリアの手を引いて歩き出したのだ。
 
 ミリアリアは、セイラの肩を叩いた時にこう伝えたのだ。
 
(所詮、わたしは人質なのです。何も望みはしません)


 そう、花嫁候補とは名ばかりのもで、実際には帝国側からの要請で人質としてここに送られただけなのだ。
 以前書庫で一度だけ会った姉ではなくミリアリアが選ばれたのはそう言うことなのだ。
 そう一人納得していたミリアリアは、これからの生活に特に期待せずにいようと思うだけで、その扱いには大して不満はなかったのだった。
 
 ミリアリアは、愛想の一つもない無表情な侍女の案内で、王宮の最奥にひっそりと佇む離宮にやってきた。
 その離宮は、最低限の手入れがされていた、ただそれだけだった。しかし、ミリアリアとしては屋根があって眠れる場所であればどうでもよかった。
 
 なんの文句も言わないミリアリアを軽く見たからなのかは分からないが、最初は離宮に通って身の回りの世話などをしていた侍女や使用人たちの足は次第に遠のいていったのだった。
 
 そして、離宮で暮らすようになってそれほど経たずに誰も世話をしに来なくなっていた。
 しかし、秘密を抱える身としては逆にそれはありがたかった。
 ただ、セイラの仕事が増えてしまうことだけが心苦しかった。
 
 それから、セイラの手が空いている時に、離宮を二人で散歩することが日課となっていった。
 そんなある日、離宮の奥まったところに小さな使用人小屋を見つけたのだった。
 誰も住んでいないようだったが、誰かが手入れしているのか、それほど悪い状態ではなかったその小屋の存在を知ったミリアリアは、セイラに提案したのだ。
 
(セイラ、ここに住まない?)

 鈴の音でそう言われたセイラは、素っ頓狂な声を出したのだ。
 
「ふえぇ?」

 あまり聞かないセイラの素っ頓狂な声が面白かったミリアリアは、肩を小さく震わせてから綺麗な笑顔を見せてたのだ。そして、自分よりも背の高いセイラの顔を両手で挟んでから、小さく首を傾げて見せた。
 そして、唇をゆっくりと動かして見せたのだ。
 
(セイラ、おねがい)

 それを見たセイラは、空を仰いで思った。
 そう、ミリアリアのおねだりポーズは、なかなか見ることのできない貴重なもので、更には何も映していないはずの青い瞳が涙で薄らと潤み、白く滑らかな頬が薄桃色に染まった天使さながらの美貌。そして、形のいい小さな唇でそんなことを言われたら、断ることなんてセイラには出来なかった。
 
「くっぅぅ。天使かよぅ! 可愛すぎて鼻血ものです。はぁ、こんな可愛らしい姫様の頼みを断ることなんて出来ない……。ですが、許可が下りるかどうか……」

 セイラの独り言にしては大きな声の独り言を聞かなかったことにしたミリアリアは、セイラにぎゅっと抱き着いた後に、鈴を鳴らしたのだ。
 
(勝手に住んじゃえばいいよ。だって、こっちに来てからずっと放置されてたし、別に気が付かれないと思うわ)

「姫様……ですが……」

(おねがい)

 鈴を鳴らした後に、セイラの胸に顔を擦り付けてから、精一杯背伸びをしてセイラの首に腕を回したのだ。そして、頬に軽く唇を寄せたのだ。
 甘えるようにセイラの頬に唇で触れたミリアリアは、自分の子供っぽい行動が急に恥ずかしくなった。ミリアリアは、耳まで赤く染まった自分の顔を一度両手で覆ってから、意を決したように顔を上げて唇を動かしたのだ。
 
(セイラ、おねがい)

 ここまで懸命なおねだりに勝てたためしのないセイラは速攻で落ちたのだった。
 
 それからすぐに、数少ない身の回りの物を小屋に移して離宮からこの小さな小屋に移り住むこととなったのだった。


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