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本編
第三章 欠陥姫と招かれざる客(4)
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ミドガルズ王国の王女は、見目麗しい銀髪の男が放つ凍えそうな空気に全く気が付いていないのか、頬を染めながら甘えるような声で言ったのだ。
「貴方様がテンペランス帝国の皇帝陛下……ジークフリート様ですのね? まぁ、なんて素敵な方なのでしょう……。わたくしは、ミドガルズ王国の―――」
ミドガルズ王国の王女が名乗ろうとした時だった。
顔の位置はそのままで視線だけを向けた皇帝ジークフリートは、怒りのこもった低い声でミドガルズ王国の王女の声を遮ったのだ。
「黙れ。お前に発言を許した覚えはない。それよりも、お前たち、さっきの発言についてさっさと答えろ」
ジークフリートの怒気の籠った声を聞いたミドガルズ王国の王女は、小さく悲鳴を上げて押し黙ったのだ。
そして、ジークフリートに見下ろされていた兵士たちは、歯をカチカチと鳴らしながら命乞いをしたのだった。
「陛下…なにとぞ命だけは……」
「お許しください。俺たちは、ミドガルズ王国の王女に命令されて仕方なく従っただけです……」
ジークフリートは、質問の答えがなかなか返ってこないことに対して苛立たし気に髪をかき上げたのだ。
そして、もう一度低い声で言ったのだ。
「いい加減にしろ」
ジークフリートの低い声を聴いた兵士たちは、身を堅くしながら大きく震えあがったのだ。
そして、小さな声で途切れ途切れに言ったのだ。
「あ…あの……離宮の……奥にある…小屋にいる少女のこと……です」
その言葉を聞いたジークフリートは、走り出していた。
全力で走り出すジークフリートの背中を見送る事しか出来ない兵士たちは、その場でただ震えていたが、ジークフリートに見向きもされなかったミドガルズ王国の王女は、ただ悔しそうに走り去る背中を見送ったのだった。
走り出したジークフリートは、あっという間に小屋までたどり着いていた。
そして、小屋の前に立った時だ。
無残に破壊された扉を見た瞬間、指先が震え、背中を嫌な汗が滑り落ちたのが分かった。
しかし、それはほんの一瞬のことで、ジークフリートは小屋の中に飛び込んだのだった。
そして、小屋の中に倒れる小さな存在にすぐに気が付き、駆け寄ったのだ。
たどり着いた先にいたミリアリアを見たジークフリート……、いや、ミリアリアにリートと名乗った男は悲痛な叫びをあげていた。
「あ、あ、あああああああ!!! ミリー、ミリー!! ああああ! どうして、どうしてこんなことに!!!」
ジークフリートの目の前に倒れているミリアリアは、真っ青な顔で眉を寄せて苦し気な顔をしていたのだ。
そして、倒れているミリアリアの体の上にはショールが掛けられていたが、周囲には引き裂かれた、元はワンピースだった布が落ちていたのだ。
そのことから、ミリアリアの身に何があったのか瞬時に理解してしまったジークフリートは、怒りで頭がおかしくなりそうだった。
しかし、自分の事よりもミリアリアの身を案じたジークフリートは、身に纏っていたシャツを脱いでショールの上からミリアリアの小さくか細い体を包んだのだ。
そして、横抱きにし急ぎ足で王宮に向かおうとしたが、ミリアリアを抱き上げたところで、息を荒げたセイラが小屋に飛び込んできたのだ。
「はぁはぁはぁっ……。ひ、ひめ…さま……」
それを見たジークフリートは、セイラにたった一言だけ言って、再び全力で走り出したのだった。
ジークフリートは、セイラにこう言ったのだ。
「この子は、王宮に連れていく」
その言葉を聞いたセイラは、息を整える間もなく再びジークフリートを追いかけて走り出したのだった。
「貴方様がテンペランス帝国の皇帝陛下……ジークフリート様ですのね? まぁ、なんて素敵な方なのでしょう……。わたくしは、ミドガルズ王国の―――」
ミドガルズ王国の王女が名乗ろうとした時だった。
顔の位置はそのままで視線だけを向けた皇帝ジークフリートは、怒りのこもった低い声でミドガルズ王国の王女の声を遮ったのだ。
「黙れ。お前に発言を許した覚えはない。それよりも、お前たち、さっきの発言についてさっさと答えろ」
ジークフリートの怒気の籠った声を聞いたミドガルズ王国の王女は、小さく悲鳴を上げて押し黙ったのだ。
そして、ジークフリートに見下ろされていた兵士たちは、歯をカチカチと鳴らしながら命乞いをしたのだった。
「陛下…なにとぞ命だけは……」
「お許しください。俺たちは、ミドガルズ王国の王女に命令されて仕方なく従っただけです……」
ジークフリートは、質問の答えがなかなか返ってこないことに対して苛立たし気に髪をかき上げたのだ。
そして、もう一度低い声で言ったのだ。
「いい加減にしろ」
ジークフリートの低い声を聴いた兵士たちは、身を堅くしながら大きく震えあがったのだ。
そして、小さな声で途切れ途切れに言ったのだ。
「あ…あの……離宮の……奥にある…小屋にいる少女のこと……です」
その言葉を聞いたジークフリートは、走り出していた。
全力で走り出すジークフリートの背中を見送る事しか出来ない兵士たちは、その場でただ震えていたが、ジークフリートに見向きもされなかったミドガルズ王国の王女は、ただ悔しそうに走り去る背中を見送ったのだった。
走り出したジークフリートは、あっという間に小屋までたどり着いていた。
そして、小屋の前に立った時だ。
無残に破壊された扉を見た瞬間、指先が震え、背中を嫌な汗が滑り落ちたのが分かった。
しかし、それはほんの一瞬のことで、ジークフリートは小屋の中に飛び込んだのだった。
そして、小屋の中に倒れる小さな存在にすぐに気が付き、駆け寄ったのだ。
たどり着いた先にいたミリアリアを見たジークフリート……、いや、ミリアリアにリートと名乗った男は悲痛な叫びをあげていた。
「あ、あ、あああああああ!!! ミリー、ミリー!! ああああ! どうして、どうしてこんなことに!!!」
ジークフリートの目の前に倒れているミリアリアは、真っ青な顔で眉を寄せて苦し気な顔をしていたのだ。
そして、倒れているミリアリアの体の上にはショールが掛けられていたが、周囲には引き裂かれた、元はワンピースだった布が落ちていたのだ。
そのことから、ミリアリアの身に何があったのか瞬時に理解してしまったジークフリートは、怒りで頭がおかしくなりそうだった。
しかし、自分の事よりもミリアリアの身を案じたジークフリートは、身に纏っていたシャツを脱いでショールの上からミリアリアの小さくか細い体を包んだのだ。
そして、横抱きにし急ぎ足で王宮に向かおうとしたが、ミリアリアを抱き上げたところで、息を荒げたセイラが小屋に飛び込んできたのだ。
「はぁはぁはぁっ……。ひ、ひめ…さま……」
それを見たジークフリートは、セイラにたった一言だけ言って、再び全力で走り出したのだった。
ジークフリートは、セイラにこう言ったのだ。
「この子は、王宮に連れていく」
その言葉を聞いたセイラは、息を整える間もなく再びジークフリートを追いかけて走り出したのだった。
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