19 / 97
本編
第三章 欠陥姫と招かれざる客(4)
ミドガルズ王国の王女は、見目麗しい銀髪の男が放つ凍えそうな空気に全く気が付いていないのか、頬を染めながら甘えるような声で言ったのだ。
「貴方様がテンペランス帝国の皇帝陛下……ジークフリート様ですのね? まぁ、なんて素敵な方なのでしょう……。わたくしは、ミドガルズ王国の―――」
ミドガルズ王国の王女が名乗ろうとした時だった。
顔の位置はそのままで視線だけを向けた皇帝ジークフリートは、怒りのこもった低い声でミドガルズ王国の王女の声を遮ったのだ。
「黙れ。お前に発言を許した覚えはない。それよりも、お前たち、さっきの発言についてさっさと答えろ」
ジークフリートの怒気の籠った声を聞いたミドガルズ王国の王女は、小さく悲鳴を上げて押し黙ったのだ。
そして、ジークフリートに見下ろされていた兵士たちは、歯をカチカチと鳴らしながら命乞いをしたのだった。
「陛下…なにとぞ命だけは……」
「お許しください。俺たちは、ミドガルズ王国の王女に命令されて仕方なく従っただけです……」
ジークフリートは、質問の答えがなかなか返ってこないことに対して苛立たし気に髪をかき上げたのだ。
そして、もう一度低い声で言ったのだ。
「いい加減にしろ」
ジークフリートの低い声を聴いた兵士たちは、身を堅くしながら大きく震えあがったのだ。
そして、小さな声で途切れ途切れに言ったのだ。
「あ…あの……離宮の……奥にある…小屋にいる少女のこと……です」
その言葉を聞いたジークフリートは、走り出していた。
全力で走り出すジークフリートの背中を見送る事しか出来ない兵士たちは、その場でただ震えていたが、ジークフリートに見向きもされなかったミドガルズ王国の王女は、ただ悔しそうに走り去る背中を見送ったのだった。
走り出したジークフリートは、あっという間に小屋までたどり着いていた。
そして、小屋の前に立った時だ。
無残に破壊された扉を見た瞬間、指先が震え、背中を嫌な汗が滑り落ちたのが分かった。
しかし、それはほんの一瞬のことで、ジークフリートは小屋の中に飛び込んだのだった。
そして、小屋の中に倒れる小さな存在にすぐに気が付き、駆け寄ったのだ。
たどり着いた先にいたミリアリアを見たジークフリート……、いや、ミリアリアにリートと名乗った男は悲痛な叫びをあげていた。
「あ、あ、あああああああ!!! ミリー、ミリー!! ああああ! どうして、どうしてこんなことに!!!」
ジークフリートの目の前に倒れているミリアリアは、真っ青な顔で眉を寄せて苦し気な顔をしていたのだ。
そして、倒れているミリアリアの体の上にはショールが掛けられていたが、周囲には引き裂かれた、元はワンピースだった布が落ちていたのだ。
そのことから、ミリアリアの身に何があったのか瞬時に理解してしまったジークフリートは、怒りで頭がおかしくなりそうだった。
しかし、自分の事よりもミリアリアの身を案じたジークフリートは、身に纏っていたシャツを脱いでショールの上からミリアリアの小さくか細い体を包んだのだ。
そして、横抱きにし急ぎ足で王宮に向かおうとしたが、ミリアリアを抱き上げたところで、息を荒げたセイラが小屋に飛び込んできたのだ。
「はぁはぁはぁっ……。ひ、ひめ…さま……」
それを見たジークフリートは、セイラにたった一言だけ言って、再び全力で走り出したのだった。
ジークフリートは、セイラにこう言ったのだ。
「この子は、王宮に連れていく」
その言葉を聞いたセイラは、息を整える間もなく再びジークフリートを追いかけて走り出したのだった。
「貴方様がテンペランス帝国の皇帝陛下……ジークフリート様ですのね? まぁ、なんて素敵な方なのでしょう……。わたくしは、ミドガルズ王国の―――」
ミドガルズ王国の王女が名乗ろうとした時だった。
顔の位置はそのままで視線だけを向けた皇帝ジークフリートは、怒りのこもった低い声でミドガルズ王国の王女の声を遮ったのだ。
「黙れ。お前に発言を許した覚えはない。それよりも、お前たち、さっきの発言についてさっさと答えろ」
ジークフリートの怒気の籠った声を聞いたミドガルズ王国の王女は、小さく悲鳴を上げて押し黙ったのだ。
そして、ジークフリートに見下ろされていた兵士たちは、歯をカチカチと鳴らしながら命乞いをしたのだった。
「陛下…なにとぞ命だけは……」
「お許しください。俺たちは、ミドガルズ王国の王女に命令されて仕方なく従っただけです……」
ジークフリートは、質問の答えがなかなか返ってこないことに対して苛立たし気に髪をかき上げたのだ。
そして、もう一度低い声で言ったのだ。
「いい加減にしろ」
ジークフリートの低い声を聴いた兵士たちは、身を堅くしながら大きく震えあがったのだ。
そして、小さな声で途切れ途切れに言ったのだ。
「あ…あの……離宮の……奥にある…小屋にいる少女のこと……です」
その言葉を聞いたジークフリートは、走り出していた。
全力で走り出すジークフリートの背中を見送る事しか出来ない兵士たちは、その場でただ震えていたが、ジークフリートに見向きもされなかったミドガルズ王国の王女は、ただ悔しそうに走り去る背中を見送ったのだった。
走り出したジークフリートは、あっという間に小屋までたどり着いていた。
そして、小屋の前に立った時だ。
無残に破壊された扉を見た瞬間、指先が震え、背中を嫌な汗が滑り落ちたのが分かった。
しかし、それはほんの一瞬のことで、ジークフリートは小屋の中に飛び込んだのだった。
そして、小屋の中に倒れる小さな存在にすぐに気が付き、駆け寄ったのだ。
たどり着いた先にいたミリアリアを見たジークフリート……、いや、ミリアリアにリートと名乗った男は悲痛な叫びをあげていた。
「あ、あ、あああああああ!!! ミリー、ミリー!! ああああ! どうして、どうしてこんなことに!!!」
ジークフリートの目の前に倒れているミリアリアは、真っ青な顔で眉を寄せて苦し気な顔をしていたのだ。
そして、倒れているミリアリアの体の上にはショールが掛けられていたが、周囲には引き裂かれた、元はワンピースだった布が落ちていたのだ。
そのことから、ミリアリアの身に何があったのか瞬時に理解してしまったジークフリートは、怒りで頭がおかしくなりそうだった。
しかし、自分の事よりもミリアリアの身を案じたジークフリートは、身に纏っていたシャツを脱いでショールの上からミリアリアの小さくか細い体を包んだのだ。
そして、横抱きにし急ぎ足で王宮に向かおうとしたが、ミリアリアを抱き上げたところで、息を荒げたセイラが小屋に飛び込んできたのだ。
「はぁはぁはぁっ……。ひ、ひめ…さま……」
それを見たジークフリートは、セイラにたった一言だけ言って、再び全力で走り出したのだった。
ジークフリートは、セイラにこう言ったのだ。
「この子は、王宮に連れていく」
その言葉を聞いたセイラは、息を整える間もなく再びジークフリートを追いかけて走り出したのだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう
楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。
目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。
「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」
さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。
アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。
「これは、焼却処分が妥当ですわね」
だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ!
完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。
崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド
元婚家の自業自得ざまぁ有りです。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位
2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位
2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位
2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位
2022/09/28……連載開始
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。