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本編

第四章 皇帝の初恋(8)

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 意を決したミリアリアだったが、結局唇を震わせただけで真実を伝えることが出来なかった。
 意気地のない自分を責めながらも、自分の体の秘密を知ったジークフリートに嫌われたり、面倒な存在だと思われることが怖くて何も伝えることが出来なかったのだ。
 
 それからのミリアリアは、ジークフリートの私室の隣の部屋に移って暮らすようになっていた。
 体の秘密を知られないように細心の注意を払い、セイラを常に傍に置き、秘密が他に漏れないようにしたのだ。
 セイラもミリアリアの気持ちを知って、秘密が漏れないように尽力したのだった。
 
 その甲斐もあって、今のところ誰にも秘密は知られないで済んでいた。
 
 しかし、ミリアリアの知らないところで事態は動いていたのだ。
 
 ジークフリートは、ミリアリアを嫁に出来るという喜びで人が変わったように笑顔を見せるようになっていたのだ。
 以前から仕事に対して誠実なところはあったが、今はそれ以上だった。
 精力的に政務を行い、少しでも空き時間を作ってはミリアリアの元に足繁く通っていたのだ。
 それを見た、王宮に勤める者たちは、密かに二人の結婚は恋愛結婚で二人の仲もとても良好なものだと微笑まし気に見守っていたのだ。
 
 しかし、これを見た一部の勢力は、ジークフリートが腑抜けになったのだと勘違いをしたのだ。
 それは、密かに玉座を狙っていたジークフリートの叔父にあたる、ゴルディオス・テンス大公がこれをチャンスだと勘違いして、行動に移したのだ。
 
 ジークフリートも叔父であるテンス大公が自分の命を狙っていることには気が付いていたが、実行に移せるほどの胆力はないと下に見ていたのだ。
 
 しかし、テンス大公を取り囲む貴族連中の中には、やり手の古狸も紛れていたのだ。
 テンス大公は、古狸に唆される形で計画を実行したのだ。
 
 
 それは、とてもお粗末であるものの、今のジークフリートには効果覿面な計画だった。
 
 
 その日、ジークフリートは、王宮内での仕事を終えてミリアリアの元に向かおうとしていた。
 しかし、宰相のセドルによってそれは阻まれたのだ。
 
「陛下にご報告がございます」

 そう言って、執務室に現れたセドルは手に持っていた報告書を捲りながら言ったのだ。
 ジークフリートとしては、そんなことよりも折角できた空き時間をミリアリアと過ごしたかったが、わざわざセドルが報告に現れるということは重要な案件だと考えて耳を傾けたのだ。
 
「以前報告しましたが、ミンズ王国の王女が嫁ぎ先の子爵家に向かう途中、悪天候の中馬車を進めたことで事故を起こした件の続報です。昨日の伝令で、捜索するも遺体を発見するに至らず。王女と思われる体の一部を発見したことから、ミンズ王国の王女が死亡したと判断したと子爵家から連絡がありました」


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