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第一部
第15話 幸福のワイン
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タイガ君がお店番をしてくれるようになり、錬金術の研究が捗ってきたある日の昼下がりのことだった。
一旦お店を閉めて、昼食も食べ終わり、さて午後の営業を再開するかと思ったタイミングだった。
「こんにちは。商業ギルドからの使いできました」
そう言って、一人の男性がやってきた。彼曰く、街に住む錬金術師全員への依頼があるのだとかで、ギルドに来て欲しいと言っていた。
そんな訳で、二人にお店を任せて私は久しぶりに商業ギルドに足を運んだのだ。
ギルドに着くと、最初に相談に乗ってくれた受付嬢が私に気が付き手招いてくれた。
「いらっしゃいませ。小春さん、今日は招集に応じてくれてありがとうございます。ギルマスが奥の会議室でお待ちです」
そう言って、建物の奥にある会議室に案内してくれた。
会議室に入ると、結構人が集まっていた。私は慌てて、遅れてしまったことをお詫びした。
「いちご商店の、小春と言います。遅れてしまい申し訳ございません」
そう言うと、一番奥の席に座っていたイケメン中年男性が軽く手を振って答えてくれた。
「いやいや、いちご商店さんはギルドから遠い位置にあるから知らせをやる順番が後の方だったからな。君は随分早く到着した方だよ」
そう言ってくれた。先に来ていた人達も同意するように頷いてくれてた。
まだ、全員揃っていないそうで、会議が始まるまで時間があるということで、集まった人たちにお茶を出してくれていた。
私は、お店を出る前に、折角の機会だから他の錬金術師さんに挨拶をしようと、お菓子を持参ししていた。
何人くらい集まるか分からなかったため、お店においていたお菓子を多めに持ってきていた。
なので、肩に下げたバックはパンパンに膨らんでいた。
今回持ってきたお菓子は、バタークッキーとマドレーヌとマフィンだ。
奥にいた男性(商業ギルドのギルドマスターだった)に参加人数を聞いたところ、全員にそれぞれのお菓子を配れそうだったので、断りを入れたうえで配ることにした。
「悪いな。茶は用意していたが、茶菓子について失念していたから助かる」
と、ギルドマスターは笑ってくれた。そのうえで、みんなが食べやすい雰囲気を作るためなのか、早速クッキーを口に入れたのだ。
「うまっ!!なんだこりゃ。これが噂の、いちごシリーズか」
そう言って、渡したお菓子をすごい勢いで食べ始めた。それを見た他の人たちも食べ始めたのだった。
所で、いちごシリーズって何?
「実は、家内が前に買ってきて食べたことあるんだよな。アレも美味しかったが、これも旨いな」
「俺は、女性が多く集まる店だと聞いて二の足を踏んでたから、今日が初めてだ。しかし、旨いな」
「他のものも食べたい……」
「そう言えば、店では売られていない幻の菓子があるとか聞いたぞ」
お菓子を食べ始めると、部屋にいた錬金術師たちは近くの席の人と話し始めていた。
喜んでもらえてよかった。
だけど、さっきから飛び交う謎キーワードが気になった私は、隣の席に座っていた錬金術師に聞いてみることにした。
「あの~、さっきギルドマスターが言っていた、いちごシリーズって?」
「あぁ、巷では君の店のお菓子はいちごシリーズって呼ばれているんだよ。今までにない美味しさのお菓子からそう言われているって聞いたよ」
「……そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ、挨拶が遅れたね。私は、【アトリエ・リーナ】のフェルトよ。よろしくね」
そう言って、私より年上の女性が挨拶してくれた。すごく頼れるお姉さまって感じがします。
そんなことをしている内に、会議室に全員が集まったようで、ギルドマスターの合図で場は静かになった。
「よし、全員集まったところで会議を始める。その前に急な招集にも関わらず集まってくれたことに感謝する。さて、今回皆に集まってもらったのは、国からの依頼を受けたからだ。しかし、強制ではない。可能なら協力してほしいという内容なので安心してくれ」
そう言ってから、ギルドマスターは全員を見わたした。そして、続けて言った。
「皆も知っていると思うが、今度第二王子が成人される。その時に、王子に特別な贈り物をしたいと宰相閣下は考えられ、ギルドに何かいいものはないかと相談をしてきた。ギルド職員で話し合った結果、過去の資料から、【幸福のワイン】が良いのではと」
ギルドマスターがそこまで話したところで、一人の錬金術師が手を上げた。
「ギルマス、【幸福のワイン】は錬金術師なら誰でも名前は知っているが、正しい製造方法は誰も知らない。それを作れということか?」
「だから、依頼を受けるかは任意といった。作る気がある奴には、城が保管している資料を閲覧する許可が出ている」
ギルドマスターがそう言ったところで、参加していた錬金術師の顔色が変わった。錬金術師たちが小声で話していた内容を要約すると、城で管理している資料はとても貴重なものでおいそれと見ることはできない代物だそうだ。錬金術師なら、一度はその資料を見てみたいと思うということらしいのだ。
ヒソヒソ話が聞こえたのか、ギルドマスターは更にこう付け加えた。
「何でも閲覧できる訳じゃないぞ。【幸福のワイン】に関する資料だけだぞ」
しかし、それでだけでも価値があるらしく、会議室に来ていた錬金術師は全員参加を決めたみたいだった。かくいう私も、その【幸福のワイン】なるものが気になったので参加をすることに決めた。
「よし、全員参加だな。因みに、完成できなくてもお咎めなしだそうだ。その場合は、別の品を用意するようなので安心しろ。それと、各自で研究してもらうことになるが、完成した暁には、レシピを秘匿してもいいらしいが、城には報告をして欲しいそうだ。何でも、城側はレシピを資料として保管したいそうだ。だが、レシピを外に出すつもりは無いと言っていた。それと、研究費は多少城から支給されるそうだが、全額ではないので注意な。依頼料については出来高、つまり、完成した【幸福のワイン】を高値で買ってくれるってことだ」
つまり、貴重な資料が見られるうえ、完成した暁には専売出来る特典付きという訳ね。研究費も多少出るし、完成できなくても美味しい話ね。これなら、参加する錬金術師たちは俄然やる気を出すことだわ。すると、隣に座っていたフェルトさんが、ニヤニヤしながら言った。
「伝承によると、かなり美味しいらしいのよね。もし完成出来たら……」
フェルトさんは、かなりのお酒好きのようね。誰かしら完成出来ればいいのだけど。
「今日は、参加の有無の確認だけだ。資料については準備に時間が掛かる為、明後日改めてここに集まってもらう。第二王子には秘密にしたいそうで、城ではなくここに、資料の写しを持ってきてくれることになっている。なお、その資料も分かっていると思うが、持ち出し禁止。書き写しも禁止な。ギルドで厳重に管理したうえで、城に返却することになっているからな。それと、今日の内容は、家族であっても伝えるのを禁止する。何の用で呼ばれたのか聞かれても、話すなよ」
なるほど、ここだけの秘密のミッションなのね。ちょっと楽しくなってきたわ。
一旦お店を閉めて、昼食も食べ終わり、さて午後の営業を再開するかと思ったタイミングだった。
「こんにちは。商業ギルドからの使いできました」
そう言って、一人の男性がやってきた。彼曰く、街に住む錬金術師全員への依頼があるのだとかで、ギルドに来て欲しいと言っていた。
そんな訳で、二人にお店を任せて私は久しぶりに商業ギルドに足を運んだのだ。
ギルドに着くと、最初に相談に乗ってくれた受付嬢が私に気が付き手招いてくれた。
「いらっしゃいませ。小春さん、今日は招集に応じてくれてありがとうございます。ギルマスが奥の会議室でお待ちです」
そう言って、建物の奥にある会議室に案内してくれた。
会議室に入ると、結構人が集まっていた。私は慌てて、遅れてしまったことをお詫びした。
「いちご商店の、小春と言います。遅れてしまい申し訳ございません」
そう言うと、一番奥の席に座っていたイケメン中年男性が軽く手を振って答えてくれた。
「いやいや、いちご商店さんはギルドから遠い位置にあるから知らせをやる順番が後の方だったからな。君は随分早く到着した方だよ」
そう言ってくれた。先に来ていた人達も同意するように頷いてくれてた。
まだ、全員揃っていないそうで、会議が始まるまで時間があるということで、集まった人たちにお茶を出してくれていた。
私は、お店を出る前に、折角の機会だから他の錬金術師さんに挨拶をしようと、お菓子を持参ししていた。
何人くらい集まるか分からなかったため、お店においていたお菓子を多めに持ってきていた。
なので、肩に下げたバックはパンパンに膨らんでいた。
今回持ってきたお菓子は、バタークッキーとマドレーヌとマフィンだ。
奥にいた男性(商業ギルドのギルドマスターだった)に参加人数を聞いたところ、全員にそれぞれのお菓子を配れそうだったので、断りを入れたうえで配ることにした。
「悪いな。茶は用意していたが、茶菓子について失念していたから助かる」
と、ギルドマスターは笑ってくれた。そのうえで、みんなが食べやすい雰囲気を作るためなのか、早速クッキーを口に入れたのだ。
「うまっ!!なんだこりゃ。これが噂の、いちごシリーズか」
そう言って、渡したお菓子をすごい勢いで食べ始めた。それを見た他の人たちも食べ始めたのだった。
所で、いちごシリーズって何?
「実は、家内が前に買ってきて食べたことあるんだよな。アレも美味しかったが、これも旨いな」
「俺は、女性が多く集まる店だと聞いて二の足を踏んでたから、今日が初めてだ。しかし、旨いな」
「他のものも食べたい……」
「そう言えば、店では売られていない幻の菓子があるとか聞いたぞ」
お菓子を食べ始めると、部屋にいた錬金術師たちは近くの席の人と話し始めていた。
喜んでもらえてよかった。
だけど、さっきから飛び交う謎キーワードが気になった私は、隣の席に座っていた錬金術師に聞いてみることにした。
「あの~、さっきギルドマスターが言っていた、いちごシリーズって?」
「あぁ、巷では君の店のお菓子はいちごシリーズって呼ばれているんだよ。今までにない美味しさのお菓子からそう言われているって聞いたよ」
「……そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ、挨拶が遅れたね。私は、【アトリエ・リーナ】のフェルトよ。よろしくね」
そう言って、私より年上の女性が挨拶してくれた。すごく頼れるお姉さまって感じがします。
そんなことをしている内に、会議室に全員が集まったようで、ギルドマスターの合図で場は静かになった。
「よし、全員集まったところで会議を始める。その前に急な招集にも関わらず集まってくれたことに感謝する。さて、今回皆に集まってもらったのは、国からの依頼を受けたからだ。しかし、強制ではない。可能なら協力してほしいという内容なので安心してくれ」
そう言ってから、ギルドマスターは全員を見わたした。そして、続けて言った。
「皆も知っていると思うが、今度第二王子が成人される。その時に、王子に特別な贈り物をしたいと宰相閣下は考えられ、ギルドに何かいいものはないかと相談をしてきた。ギルド職員で話し合った結果、過去の資料から、【幸福のワイン】が良いのではと」
ギルドマスターがそこまで話したところで、一人の錬金術師が手を上げた。
「ギルマス、【幸福のワイン】は錬金術師なら誰でも名前は知っているが、正しい製造方法は誰も知らない。それを作れということか?」
「だから、依頼を受けるかは任意といった。作る気がある奴には、城が保管している資料を閲覧する許可が出ている」
ギルドマスターがそう言ったところで、参加していた錬金術師の顔色が変わった。錬金術師たちが小声で話していた内容を要約すると、城で管理している資料はとても貴重なものでおいそれと見ることはできない代物だそうだ。錬金術師なら、一度はその資料を見てみたいと思うということらしいのだ。
ヒソヒソ話が聞こえたのか、ギルドマスターは更にこう付け加えた。
「何でも閲覧できる訳じゃないぞ。【幸福のワイン】に関する資料だけだぞ」
しかし、それでだけでも価値があるらしく、会議室に来ていた錬金術師は全員参加を決めたみたいだった。かくいう私も、その【幸福のワイン】なるものが気になったので参加をすることに決めた。
「よし、全員参加だな。因みに、完成できなくてもお咎めなしだそうだ。その場合は、別の品を用意するようなので安心しろ。それと、各自で研究してもらうことになるが、完成した暁には、レシピを秘匿してもいいらしいが、城には報告をして欲しいそうだ。何でも、城側はレシピを資料として保管したいそうだ。だが、レシピを外に出すつもりは無いと言っていた。それと、研究費は多少城から支給されるそうだが、全額ではないので注意な。依頼料については出来高、つまり、完成した【幸福のワイン】を高値で買ってくれるってことだ」
つまり、貴重な資料が見られるうえ、完成した暁には専売出来る特典付きという訳ね。研究費も多少出るし、完成できなくても美味しい話ね。これなら、参加する錬金術師たちは俄然やる気を出すことだわ。すると、隣に座っていたフェルトさんが、ニヤニヤしながら言った。
「伝承によると、かなり美味しいらしいのよね。もし完成出来たら……」
フェルトさんは、かなりのお酒好きのようね。誰かしら完成出来ればいいのだけど。
「今日は、参加の有無の確認だけだ。資料については準備に時間が掛かる為、明後日改めてここに集まってもらう。第二王子には秘密にしたいそうで、城ではなくここに、資料の写しを持ってきてくれることになっている。なお、その資料も分かっていると思うが、持ち出し禁止。書き写しも禁止な。ギルドで厳重に管理したうえで、城に返却することになっているからな。それと、今日の内容は、家族であっても伝えるのを禁止する。何の用で呼ばれたのか聞かれても、話すなよ」
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