錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

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第一部

第35話 昔話

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 急いでご飯を作っていると、来客を知らせるチャイムが鳴ったので、玄関へ向かった。玄関の扉を開けると、ガルドさんが今日もやってきた。
 初日は何度言っても帰らなかったため、お家に泊ってもらったが、何もなかったので、次の日には帰ってもらったが、朝になると必ずやってきた。

「おはよう。タイガの様子は?」
「おはようございます。今朝目が覚めました」
「そうか!調子はどうだ?」
「顔色は悪かったですが、ご飯を食べたら良くなってきました。今はお風呂に入っています」
「そうか、そうか!少し話をさせてもらったら、報告のため一旦城に戻る」
「分かりました」

 ガルドさんをリビングに案内しながらタイガ君の様子を説明した。リビングに着くと、二人が丁度お風呂から上がってきたところだった。

「また、来たんだな」
「だから、そう邪険にするな」
「騎士団長?」
「タイガ君のことを心配して家に様子を見に来てくれていたんだよ」
「そうなんですね。騎士団長、ご心配おかけしました。王子と宰相にも僕は大丈夫だと伝えて下さい」
「そのようだな。聞いた通り、顔色も大分ましになったようだな。それじゃぁ、報告に一旦戻るが、いろいろと説明して欲しいから改めて訪問する。その間に、彼女にはきちんと説明してやれよ?」
「そのつもりです」
「そのつもりだ」

 タイガ君の様子を見たと思ったら、本当にすぐにお城に戻って行ってしまった。お茶の一杯も出していないのに。でも、報告したら戻ってくるって言っていたから、お茶はその時に改めて出しましょう。
 二人にはリビングに居てもらって、その間に調理を再開。ご飯はすぐに準備が出来たので、出来あがったものからどんどんリビングに運んだ。
 それにしても、タイガ君の食べっぷりが本当にすごい。どこにその量が入っていくのかってくらい食べていた。
 お腹も満たされて、お茶を飲んで落ち着いたところで、二人が真剣な顔で今回のことを説明してくれることになった。

「まずは、俺の話からする。そうじゃないといろいろと説明が難しくなるから」

 そう言って、駆君が過去に自分に起きたことを話してくれた。

「俺は、14歳の時に死にかけて意識だけがこの世界に召喚された。その時にタイガと共生していたんだ。タイガはその時、10歳で初めて第二王子の代わりに死に掛けた時だった。」
「たぶん、僕が魂の形が似通っている駆をこっちの世界に呼び寄せたんだと思う。王子と間違われて暗殺されかけた時に、魂が穢れて、それを埋め合わせるように、同じような魂を持っていた駆を利用したんだ」
「そこは別にいいって言っただろう?そのおかげで俺も命が助かったところはあるからお互い様だ。俺も、大きな事故に合って死にかけていた。後から聞いた話だと、奇跡だとしか言えない状況だったとさ。死なずに、病院に運び込まれたのが奇跡だって聞いた。途中で死なないのが不思議な状態だって、救急隊員の人が言ってたな。それで、最初の峠は越えたらしいけど、その後は集中治療室で、何度も心臓が止まって、ダメだと思ったら、また息を吹き返すを繰り返していたって聞いた。たぶん、タイガの魂をよりどころに何とか延命していた感じかもな」
「それならいいんだけど……」
「まぁ、そんな感じで、意識だけここに呼び出されたって感じな。それで、ここで三年過ごした。ん~。タイガの中から突っ込みつつテレビを見ている感じ?」
「その、テレビは分からないけど、駆は僕が困ると力というか助言をしてくれたり、相談相手になってくれて、影武者になった僕はすごく励まされたんだよ」
「でも、二回目に身代わりになった時はクソの役にも立たなかったけどな」
「仕方ないよ。あの時は正教会に潜む狂信者をあぶり出すために、影武者である僕が王子の代わりをしなければいけなかったんだから」
「小春、少し説明するけど。この世界には始まりの聖女と言われる人がいたんだ。その人が最初に結界を張って守ってくれていたんだが、自分が死んだ後も守りが続くようにって、自分の力を分け与えたそうだ。それが、準聖女と巫女だ。準聖女は結界を維持する力を授かったが、成人に近づくごとに力が弱まり、やがて完全に力がなくなるらしい。巫女は、生きている限り力を維持できるようだけど、余り長生きはしないみたいだ。それを予知していたかは分からないけど、もうひとつ。異世界からの召喚も後世に術を残していた。だが、始まりの聖女を信仰する者達は、王族を贄にすることで、始まりの聖女の後継者があらわれると信じる狂者がいつしか現れたそうだ。なんで、そんな話に行きついたかは知らないけど迷惑な話だ」
「狂信者の説明もしたところで話を戻すけど、当時その狂信者に第二王子は狙われていて、そいつらをあぶり出すために、影武者の僕が囮をすることになったんだよ。作戦はある意味成功したのかな?一掃は出来なかったみたいだけど、中枢と思われる者達は捕縛出来たんだ。でも、僕はその時に受けた傷がもとで死んで、代々王族の影武者を務めた者がひっそりと葬られる街外れの教会墓地に埋葬されたんだ。でも、埋葬された後に息を吹き返して今に至るって感じかな?」
「そこは、俺の仮説何だが、俺は集中治療室に結構長いこと入ってたらしい。んで、何度も死にかけては息を吹き返したって言ったよな?で、それって、タイガの生命維持のため、もとの世界に残った身体から生命力みたいなものを吸収していたんじゃないかって思ってる。お互いが、いろいろと何かを補ってギリギリ命を繋いでいたんじゃないかって」
「ちょっと待って?話の途中で割り込んじゃうけど、年齢の計算が合わないわ。駆君は14歳の時にこっちに意識が召喚されて、三年間?こっちにいたんだよね?」
「正確には、もっといた。こっちにいた時は夢の中にいる様な感じで時間の概念はあまり気にならなかったしな。それに、つい最近まで過去の俺は、タイガの中にいたしな」
「えっ?そうなると……」
「僕が、王子の代わりに死んでから七年が経っているので……」
「ちがっ!俺は正真正銘の16歳だ!話を戻すけど、タイガが七年かかって墓から這い出た所で、俺と小春があらわれて、第二王子の成人の式典で死に掛けるまで、俺の意識はそこにあったけど、二回目に死に掛ける前と違って、意識はもうろうとしていた。墓の中にいる間は、仮死状態?でタイガも意識はなかっただろ?それに、墓から這い出た後は、お互いの魂と、身体の修復が終わりかけていて、いつでも分離?出来る状態だったんだと思う。そこで、式典での事件だ」
「そう言えば、意識が朦朧としていたからはっきりとは分からないけど、狂信者が魂が割かれるとか言っていたような?」
「それだ。たぶん、本当に魂は二つに分かれたんだと思う。俺と、タイガの魂はそこで元の形に治って、俺は元の世界に。お前は今まで俺が……」
「「俺が?」」
「たぶんだけど、お前がいまだに13歳のころの姿なのは、お前が小春の作った料理で得た栄養を元の世界の俺の身体に送って生命を維持していたんだと思う。だから、今すげー腹へって大変なのは、年齢に見合った姿なる為に身体が栄養を欲しているってところだ。元の世界で意識を取り戻した後、たまにこっちの世界の様子が見えた。夢だと思っていたけど、あれはたぶん魂が分かれた後のこっちの世界の様子だったんだと思う。それと、意識が戻った時、向こうでは半年しか時間がたっていなかった。魂だけ召喚された影響なのかは分からないけどな!だから、俺は正真正銘の16歳だ!おっさんじゃねぇ!」
「心配しなくても、駆の精神年齢は十分おっさんだと思うよ」
「いい笑顔でなんてこと言うんだお前は!!」
「えっと、つまり。駆君は昔、意識だけこっちに来ていたので、いろいろと知っていた。その時、タイガ君に寄生していて、今回の騒動で寄生が解けて、元の身体に戻ったってこと?」
「寄生って……。要約するとそんな感じだ」
「タイガ君は、第二王子の影武者で、死に掛けたところで駆君を寄生させることで生き延びて、二度目に死に掛けた時にも寄生している駆君と協力して生き延びて、今回の騒動で、寄生が解除されて、本来の身体を取り戻すため栄養が必要でご飯一杯食べるってこと?」
「寄生って……。はい。そんな感じです」
「えっと、話が難しくて……。もう何が何だか、でも二人が元気なら何でもいいかな?」
「ぷっ。あははは!小春らしいな」
「ふふ。そうだね。小春さんらしい。それに、これから大きくなるってことは、僕本気だすよ。勝手に諦めないからね」
「だろうな。俺も、負けないから」
「前は、知らない振りしてたけど、もう抜け駆けとかもさせないから」
「なっ!」
「僕が知らないとでも?小春さんのくちび―――」
「おおおまえ!!」
「どうしたの二人とも?」
「何でもない」
「何でもないですよ」

 何だろう?一件落着したと思うんだけど、なんだかこれから大変ことがおこる予感が……。
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