錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

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第二部

第46話 亜空間

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 驚く二人を部屋の中に招き入れた私は、スリッパを脱ぐように言った。

「二人とも、スリッパはこっちにおいてね」

 そう言って、廊下を指差した。

「小春、この和風の家は?それに、庭?」
「小春さん、草?」
「えっと、少し座って話そうか?居間に案内するね」

 そう言って、二人を居間にある掘りごたつに連れて行った。今の時期は温かいので、こたつ布団は外してあるけど、寒くなったらここにこたつ布団を敷こうと思っているのよね。

「お茶を入れてくるから少し待ってて」

 そう言って台所に向かった。作り置きしておいた、草餅モドキと、緑茶モドキをお盆に載せて居間に戻った。

「それじゃ、簡単な質問から答えるね。タイガ君、これは草じゃなくて、畳って言うのよ。それと、ここは亜空間みたいな謎空間で――」
「ちょっと待った。謎空間ってなんだ?」
「えっと、前に駆君が見たことない魔物を討伐した時に出てきた謎の魔石があったでしょ?」
「あれか?結構前に、外に出た時に、遭遇した狐っぽい謎の魔物の魔石か」
「うん。何の魔法が宿ってるか分からないけど、沢山もらったからいろいろ研究してみたんだよ。最初は、拡張機能のある鞄が出来たんだけど――」
「それって、まさか容量無限だったりするのか?」
「う~ん。そこが謎なんだよ。いっぱい入れられたんだけど、取り出すのが大変でボツにしたのよ」
「どういうことだ?」
「たとえば、押し入れに物をいれるでしょ?それで、いざ取り出そうとした時に、奥に入れてものを取るのに、前にある荷物を出さないと奥の荷物が取れないでしょ?そんな感じ」
「なるほど、それはボツになるな。ゲームみたいに、入れたものをソートしたりは?」
「無理だったのよ。ただの、いっぱい入るけど取り出すのが大変なだけの鞄だったわ。機会があったら改良してみたいとは思っているけどね。それで、話を戻すけど、ボツになった鞄は、中身が見づらかったからダメだったんじゃないかと思って、入口を人が通れるサイズにしたらって思って研究した結果がここです!」
「「…………」」

 あれ?反応がないよ?

「人が通れるサイズに――」
「聞こえてたから、言い直さなくても大丈夫だ」
「えっと、ということは、ここは人が通れる位入口の大きな鞄の中?」
「あ~、え~と、その~」
「何だ?言いづらい事なのか?」
「言いづらいというか、う~ん。結果だけ言うと、あの魔石は空間魔法?が宿った魔石だったみたいで、あの魔石が持っている亜空間に入る為の入口を作って、その中に家と庭を作っちゃいました。てへ」
「小春さんすごい!原理は良く分からないけど、あの扉は亜空間?に繋がる扉だったんだね!」
「あれは、飾りです!!」
「えっ?」
「はっ?」
「作ったのはこの指輪だよ」

 そう言って、首からぶらさげた鎖の先に通された指輪を二人に見せた。

「この指輪が亜空間に入る為の鍵になっていて、実はどこからでもここに来られるんだけど、気持ち的に扉があったほうが雰囲気が出ると思ってね」

 そう、この研究って、最初は本当に人が入れる大きさの布袋からスタートしたのよね。それで、いくつか同じような布袋を作って、物を入れてみたりしたんだけど、たとえば、Aの袋に入れたリンゴをBの袋からも取ることが出来たの。
 それで、原理は分からなかったんだけど、いくつかの魔石は空間を共有していることが分かったのよ。その考えになった一番の理由はというと、最初に作ってボツにした鞄に入れていたものが、袋の空間にあったことが決定打になったのよね。
 なので、その魔石を使って、空間にアクセスする道具を作ればいいと考え直して、鍵になる指輪を作るにいたったと説明した。

「小春に渡した魔石って、魔物を討伐した時に砕けて小さくなったんだよ。元は結構な大きさをしていたんだけど、外気に触れた途端に砕け散ったんだ。言い忘れてたけど、結構な数があったのは、砕けたからなんだよ。」
「なるほど、だから複数の魔石が同じ空間だったのね。元は一つの魔石だとしたら納得だわ。そうなると、砕ける前の数だけ亜空間が存在する可能性があるわね。因みに、何体の魔物を討伐したの?」
「確か、五体だったと思った」
「なるほど、そうなると亜空間は全部で五つあることが考えられるわね」
「あれ?全部の亜空間を確認してないんですか?」
「ええ、今のところは、ここともう一つしか確認してないわ。全部の魔石で研究した訳じゃないし、貰ったものを上の方から使っていたから、きっと下の方に別の亜空間の魔石があるはずだわ。急ぐ必要もないし、ゆっくり確認するわ」
「ここについては、ある程度は分かった。でもな、この建物と、外に広がる空と庭と畑は一体……」
「えっと、あのね。もうひとつ言わないといけないことがあるような……」
「小春さん、言いにくいことなんですか?」
「言いにくいというか、何というか。結論から言います。私、錬金窯さんがいなくても錬金術が使えるみたい!」
「「…………」」

 うっ。何だろう、二人から微妙な空気が漂っているのを感じるわ。

「やっと気が付いたのか」
「気が付いてなかったんですね」
「えっ?」

 なんだろう、この二人との温度差は。

「小春はさ、あの錬金窯がすごいって思ってたみたいだけど、他の窯でも同じようにできたらさ、自分の方に何かあると普通思うよな」
「そこが、小春さんらしいと言えばそうなんですけどね」

 あれ?そんな、ため息交じりにしみじみ言うのはやめて欲しいです。

「そう、そうよね。私はてっきりうちにある錬金窯さんがすごいと思って、ギルドの錬金窯でも出来た時は不思議に思ったけど、たまたまだと思って、そのまま忘れてたのよね」
「どうして、気が付いたんですか?」
「えっと、亜空間に入った時に、何もなくて。あっ、でも亜空間の中に最初から空と、地面はあったのよ。それで、最初は外の世界との違いを検証していて、日の出と、日暮のタイミングは外と一緒だったから、ここで流れる時間と外で流れる時間は同じだってことが最初にわかったの。季節は今のところ、四季があるのかは分からないけど、外の世界が雨でもこっちは晴れていて、こっちが雨でも、外は晴れていることから天気は別みたいということも分かったの。夜になれば、月も星も出るし、朝になれば日は昇るしで、外と何ら変わりのない空間ということが分かったら、ここがだだっ広い空き地なのが勿体無いと思ってね、家と庭があったら素敵だなぁと思って……」
「思って、まさか考えたら家が建ってたとかいうなよ?」
「えっと、そのまさかです」
「小春さん!それって何もないところから作ったって言うことなの?」
「違うよ!それはないから!!亜空間の中に木とか石とか、イグサとかあって、それを最初に作ってボツにした鞄に入れて、家を建てる場所に集めたのよ」
「なるほど、ボツ鞄は入れる分には問題ないからな」
「そうなのよ。それで、どんどん材料を集めて、これを使ってこんな家をたてたいなぁ、どうしたらいいかなぁって考えてたんだよ。いつも錬金窯さんにお願いするように手を合わせて。そうしたら、想像した通りの家が建っちゃったのよね。それで、想像しながら手を合わせることで物が作れることに気が付いたという訳。最初は、材料だけ集めて、錬金窯さんでパーツを作って組み立てる方法を考えていたんだけど、家が建ったからもうね、結果オーライかなって。てへ」
「もう、可愛子ぶってもさらに可愛いだけですよ」
「なんだそりゃ(同感だが)」
「それと、この際だからもう一つ言っておくことが……」
「まだ他にあるのか?」
「この際ですから、全部言ってすっきりしましょうか、小春さん」
「あのね―――」
ヌシ様!!」
あるじ!!」

 私が二人に説明をしようとしたタイミングで、今まさに説明しようとした者達が割って入ってしまったため、その場は微妙な雰囲気になってしまった。
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