準聖女の幼馴染が好きすぎて仕事が手に付かないので、騎士団副団長をやめることにしました

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
13 / 16

06 守護騎士様はブチ切れだそうです(後編)

 メリッサの顔色は真っ青を通り越して、真っ白になり、身体は小刻みに震え、歯をガチガチと鳴らして硬直してしまった。
 さらには、呼吸が荒くなり、過呼吸を起こしてしまったのだ。

 ガルドは、慌てた。
 あの時の悲劇を思い出して。
 ファニスからの殺意を思い出して。

「どうか、メリッサ、落ち着いてくれ!!」

 慌てるあまり、さらにメリッサを怯えさせる結果に気が付かず、落ち着くように声を掛ける。
 しかし、メリッサは幼少のころにみた、悪鬼のような男が居ると思うだけで、呼吸が乱れ身体が震えた。
 まだ、食堂の中にいたミリアがその騒動に気が付き顔を覗かせて、悲惨な状況に悲鳴を上げた。

「ちょっ!! どうして、騎士団長がここにいるの!! 誰か早く団長をここから追い出して!!」

 ミリアは慌てて、ガルドを追い出すようにいい、メリッサに駆け寄った。
 事情を知らない団員達は困惑し、ミリアに言った。

「ミリアさん? この人は、ちょっと、山賊っぽいですが、これでも騎士団長なので、大丈夫ですよ?」

「違うの!! 早く追い出して!!」

「そうは言っても?」

 理由を知らない団員達は困惑した。いくら、準聖女のお世話をしているミリアの命令でも、直接の上司にあたるガルドを訳も分からず追い出すわけにはいかないと。
 団員達が迷っている間、ミリアはメリッサにガルドの姿が見えないようにしながら、布を口に当て過呼吸が治まるように処置をしていた。
 処置の間、慌てるガルドと困惑する団員達はその場でただおろおろするばかりだった。

 メリッサの呼吸が落ち着いたところで、ミリアは視線も向けずに今度は落ち着いた声で言った。

「はぁ。もう手遅れかも知れないけど、早くここを退室してくださいね」

 その言葉を聞いたガルドと団員達は何が手遅れなのか分からなかったが、背後から漂ってくる死の気配に、ただただ自分の行く末が地獄だということだけは理解した。

「ただいま戻りました。それで、そこにいる害獣は今度は一体何をしたんですか?」

「お帰りなさい。この子なら、今は呼吸も落ち着いて意識を失っているけど、もう少ししたら意識も戻ると思うわ」

「ありがとう、メリッサについていてくれて。メリッサを部屋に運ぶから、目が覚めるまで付いていてもらえるか?」

「はあ、分かったわ。それで、あなたは?」

「ちょっと、害獣の駆除をしないといけないからね」

「ほどほどに……、と言っても無理か」

「無理だな」

 そう言った後、ファニスはメリッサを慎重に抱きかかえ部屋に連れて行った。
 ガルド達は、その場を一歩も動けずにただ固まっていた。
 しばらく経つと、ガルド達はこのままでは命にかかわると気が付き、その場を離れようとしたが、もう遅かった。
 メリッサを部屋に運んだファニスが足音もなく戻ってきたのだ。
 そして、ガルドと、騎士達に言った。

「それでは、害獣の駆除を始めようか? そうそう、最後に言い残すことはあるかな? いや、ないな。俺の大事なメリッサをあんな目にあわすなど、死んで、生まれ変わってもまだ足りない。言葉を交わす価値もないな」

 その言葉を聞いた瞬間、ガルドと騎士達はこれまでの人生で一番の速さでその場を駆けだした。
 未熟な騎士達は、駆けだしたつもりがもうすでに意識を刈り取られていた。逃げ出したのは夢、いや悪夢の中だ。
 ガルドや、そこそこに腕の立つ騎士達は、最初に撃墜された哀れな犠牲者に詫びつつ、散開しながら、屋敷の外に逃げ出していた。
 ただし、その後ろから魔王のようなファニスが近づき、一人つず意識を刈り取り、最終的には意識のない騎士団員全員を吊し上げてから、ガルドに最上級恐怖を与えて制裁を加えたのは言うまでもない。

 そして、屋敷の外から獣のような雄たけびが辺り周辺に鳴り響き、その声を聞いた者は恐怖に脅えながらこう思った。

 ―――絶対に、騎士団長を準聖女様に近づけてはいけない。そうでなければ、死よりも恐ろしい目にあう―――と。


感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜ ※AI不使用です。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

好きな人が嬢を身請けするのが辛くて逃げたら捕まりました~黒服の私は執着騎士に囲われる~

こじまき
恋愛
騎士が集う高級酒場「夜香楼」で女性黒服として働くソフィアは、客である寡黙な騎士ゼインに恋していた。けれど彼が指名するのはいつも人気花嬢イサナで、身請けも近いと予想されていた。 ソフィアは、叶わない想いにと嫉妬に耐えきれず、衝動的に店を去る。 もう二度と会うことはないはずだったのに、身請けした嬢と幸せに暮らしているはずの彼が追ってきて―― 「お前への愛は焼き印のように刻まれていて、もう消えない」 ――失恋したと思い込んで逃げた黒服が、執着系騎士様に捕まって囲われる話。 ※小説家になろうにも投稿しています

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定