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第一話 魔法使いと黒騎士
「ああ……、どうして……。わたしは今まで何のために……。もう、疲れたよ……」
ティアナは、一年以上も騙されていたという事実を前に自暴自棄になっていた。
大切な人を失ってしまったという事実に、ティアナの疲れ切った心は粉々になってしまいそうだった。
戦場から逃げ出す勇気もなかったティアナは、誰でもいいから助けて欲しいと縋るような眼差しで周囲を見回していた。
そして、見つけたのだ。
一際黒く輝く、漆黒の騎士の姿を。
ティアナが所属しているルーマニア王国の敵対勢力である、アルマーノ帝国に属する男。
名前も顔も知らないが、何度も戦場で顔を突き合わせた黒騎士。
ティアナは、良いことを思いついたとばかりに黒騎士に希望を見出したのだ。
「そうだ……。彼に……彼に殺してもらおう……」
そう考えたティアナは、普段は絶対に怠らない魔法障壁を展開しないままふらふらと歩き出していた。
いつもと様子の違うティアナに気が付いた黒騎士は、内心首を傾げたことだろう。
しかし、ここは戦場だ。
黒騎士は、何かの罠を心配することもせずに、背中に担いだ長剣を正眼に構えた。
普段のティアナであれば、遠距離からの魔法攻撃で応戦しているところを何の魔法も発動させずにふらふらと歩くのみだった。
ティアナは、絶大な力を持つ魔法使いだ。
黒騎士は何かがおかしいと思いながらも、いつでも攻撃が出来るように構えを解くことはしなかった。
「あれが……群青の魔法使い……? 信じられない。まだ、子供じゃないか……」
黒騎士は、呆然とそう呟いていた。
幼さの残る顔は、何の表情もなく、美しい人形のようだった。
くすんだ灰色の髪と、暗く澱んだ青い瞳。
見るからに栄養失調な、ガリガリに痩せた少女。
その少女は、見覚えのあるローブに身を包んでいた。
それは、アルマーノ帝国と敵対関係にあるルーマニア小国の天才魔法使いで、数多くの帝国兵を戦線離脱させた群青の魔法使いと帝国兵から恐れられた人物がいつも着ている、魔法技術の結晶のような群青のローブ。
帝国の魔法使いたちは密かに憧れの眼差しで、群青のローブを見つめていた。
いったい、どんな方法であんな複雑な魔法をローブに組み込んだのかと、しばし議論されるほどだった。
そんな、世界に二つとない希少なローブを身に纏う人物など、黒騎士はたった一人しか知らなかった。
絶大な魔法で帝国兵を戦線離脱させる厄介な敵。
そんな敵と初めて対峙してから二年ほど経つが、いつも遠目に視認する程度で顔も知らなかった。
帝国兵の中では、魔法に詳しい老人だとろうと予想されていたのだが、近くで見た群青の魔法使いは、その予想を見事なまでに裏切ったのだ。
黒騎士が目を丸くさせていることど知らないティアナは、敢えて攻撃を誘う様に右手を前にかざしていた。
そんなティアナの行動に百戦錬磨の黒騎士はいち早く動き出していた。
それは、反射的に動いた結果だった。
一気にティアナとの距離を詰め、急所を突く。
いや、突こうとしたが黒騎士は寸前でその剣先は止まっていた。
黒騎士の腕の中には、彼の殺気に当てられ気を失った群青の魔法使いがいた。
漆黒の甲冑の中で、男は困ったように呟くのだ。
「こんな小さな女の子……。殺すなんてできない……。はぁ……。どうしようか」
この出会いが、ティアナと黒騎士の第二の人生のターニングポイントとなるが、この時の二人はそんなこと知る由もなった。
ティアナは、一年以上も騙されていたという事実を前に自暴自棄になっていた。
大切な人を失ってしまったという事実に、ティアナの疲れ切った心は粉々になってしまいそうだった。
戦場から逃げ出す勇気もなかったティアナは、誰でもいいから助けて欲しいと縋るような眼差しで周囲を見回していた。
そして、見つけたのだ。
一際黒く輝く、漆黒の騎士の姿を。
ティアナが所属しているルーマニア王国の敵対勢力である、アルマーノ帝国に属する男。
名前も顔も知らないが、何度も戦場で顔を突き合わせた黒騎士。
ティアナは、良いことを思いついたとばかりに黒騎士に希望を見出したのだ。
「そうだ……。彼に……彼に殺してもらおう……」
そう考えたティアナは、普段は絶対に怠らない魔法障壁を展開しないままふらふらと歩き出していた。
いつもと様子の違うティアナに気が付いた黒騎士は、内心首を傾げたことだろう。
しかし、ここは戦場だ。
黒騎士は、何かの罠を心配することもせずに、背中に担いだ長剣を正眼に構えた。
普段のティアナであれば、遠距離からの魔法攻撃で応戦しているところを何の魔法も発動させずにふらふらと歩くのみだった。
ティアナは、絶大な力を持つ魔法使いだ。
黒騎士は何かがおかしいと思いながらも、いつでも攻撃が出来るように構えを解くことはしなかった。
「あれが……群青の魔法使い……? 信じられない。まだ、子供じゃないか……」
黒騎士は、呆然とそう呟いていた。
幼さの残る顔は、何の表情もなく、美しい人形のようだった。
くすんだ灰色の髪と、暗く澱んだ青い瞳。
見るからに栄養失調な、ガリガリに痩せた少女。
その少女は、見覚えのあるローブに身を包んでいた。
それは、アルマーノ帝国と敵対関係にあるルーマニア小国の天才魔法使いで、数多くの帝国兵を戦線離脱させた群青の魔法使いと帝国兵から恐れられた人物がいつも着ている、魔法技術の結晶のような群青のローブ。
帝国の魔法使いたちは密かに憧れの眼差しで、群青のローブを見つめていた。
いったい、どんな方法であんな複雑な魔法をローブに組み込んだのかと、しばし議論されるほどだった。
そんな、世界に二つとない希少なローブを身に纏う人物など、黒騎士はたった一人しか知らなかった。
絶大な魔法で帝国兵を戦線離脱させる厄介な敵。
そんな敵と初めて対峙してから二年ほど経つが、いつも遠目に視認する程度で顔も知らなかった。
帝国兵の中では、魔法に詳しい老人だとろうと予想されていたのだが、近くで見た群青の魔法使いは、その予想を見事なまでに裏切ったのだ。
黒騎士が目を丸くさせていることど知らないティアナは、敢えて攻撃を誘う様に右手を前にかざしていた。
そんなティアナの行動に百戦錬磨の黒騎士はいち早く動き出していた。
それは、反射的に動いた結果だった。
一気にティアナとの距離を詰め、急所を突く。
いや、突こうとしたが黒騎士は寸前でその剣先は止まっていた。
黒騎士の腕の中には、彼の殺気に当てられ気を失った群青の魔法使いがいた。
漆黒の甲冑の中で、男は困ったように呟くのだ。
「こんな小さな女の子……。殺すなんてできない……。はぁ……。どうしようか」
この出会いが、ティアナと黒騎士の第二の人生のターニングポイントとなるが、この時の二人はそんなこと知る由もなった。
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