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第三十八話 愛の証
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翌日、アズサはウルシュカームの胸を握った拳で、ポカポカと叩いて大泣きしていた。
「シュカのばかぁぁ!!ふえぇえん。俺の種どうして尻の穴なんかにいれちゃったんだよ!!あれは、飲むものだって言っただろぉ!!ばかばかぁ!!ひっく、ひく……」
ここまで号泣するアズサを初めて見たウルシュカームは、焦っていた。
何とか泣き止んでもらえるように、膝の上に乗せて揺すりながら優しく抱きしめたが、アズサは目を真っ赤にさせて泣き続けていた。
「ふぇ……。シュカとのあかちゃん……。もう授かれないようぉ……」
「アズ、ごめん。ごめんなさい。だって、初夜で種を呑むって聞いたから……」
「なんでそれで、尻の穴に入れちゃんだよ!!」
そう言って、ウルシュカームをアズサが睨むと、頬を赤くしたウルシュカームがもじもじと言ったのだ。
「俺はてっきり……」
「なんだよ?」
「てっきり……、下の口で飲むものだと……」
まさかそんなことを言われると思っていなかったアズサは、一瞬で真っ赤になった後に、小さく震えてから、ウルシュカームの頬をひっぱたいて言ったのだ。
ぱしーーーん!!
「このおバカ!!エロ犬!!」
そう言った後、ぷいっとそっぽを向いた後に、身支度を整えてウルシュカームを一人寝室に残して出ていってしまったのだ。
ウルシュカームは、ぼうっとしながら打たれた頬を押さえていたが、アズサに嫌われてしまうと本気で考えてしまい、涙が溢れて止まらなかった。
そして、身支度もせずに情事の跡がまる分かりの半裸状態で、慌てて部屋を飛び出していた。
「うわーーーん!!アズサ、アズサ!!ごめんなさい!!ごめんなさいぃ……。俺が悪かったから、俺を嫌いにならないでぇーー!!うわーーーん!!」
そう言って、恥も外聞もなく、泣き叫んだのだ。
それを見た使用人たちは、顔面蒼白状態で蜘蛛の子を散らすように散って行った。
そして、浴室に入ろうとしているアズサを見つけたウルシュカームは、全力でアズサの元に駆けて、泣いて謝っていた。
「アズサ、ごめんなさいぃ……。俺を、嫌いにならないでぇ!!アズサに嫌われたら俺、生きていけないよぉ……。ひくひく、ひっく……」
そう言って、子供のように泣きじゃくるウルシュカームを見たアズサは、ため息を吐いた後に、ウルシュカームを抱きしめて言ったのだ。
「もう、格好いい顔が台無しだぞ?俺はもう怒ってないよ?俺こそごめん。赤ちゃんより、シュカの方が大事だから。さっきは叩いてごめん……」
そう言って、叩いてしまったことで赤くなってしまっている頬を優しく撫でてからキスをした。
そして、ここがどこかと言うことも頭から吹っ飛んでしまった二人は、仲直りのキスをしていた。
最初は触れるだけの、そしていつしか深く貪るような熱い口付けを。
アズサは、艶っぽく潤めた瞳でウルシュカームを誘っていた。
「シュカ……。仲直りに、一緒に風呂に入ろう?」
「うん!!」
「あっ、だけど風呂に入るだけだからな!!えっちなの禁止だからな!!」
「……」
「返事!!えっちなことしないって約束しないともう一生一緒に風呂には入らないからな!」
そう言われたウルシュカームは、姿勢を正して勢いよく約束していた。
「うん!今はえっちなことしない!!約束する!!」
「うん。それじゃ、入ろうか?」
そう言って、二人がいなくなった廊下隅の方には、にやにやと笑う侯爵夫人と、それにおろおろする侯爵と、とんでもないものを見てしまったと言わんばかりの使用人たちが団子状態でそれを見ていたことを二人は知らなった。
それから数年、時には喧嘩をすることもあったが、いつまでも新婚気分でラブラブなアズサとウルシュカームは、家族で穏やかな午後のひと時を過ごしていた。
「かあさま、ぼく、おっきくなったら、かあさまとけっこんするぅ~」
「むむ、アズサは俺の嫁だからアズサは渡さない」
「やだやだ、かあさまは、ぼくのおよめさんになるの!!」
「いくら可愛い息子だとは言え、アズサは絶対に渡さないからな!!」
「はぁ、おいおい二人とも何言ってんだよ?そんなに騒いだら、この子が起きちゃうよ」
「ごめんな?」
「ごめんなさい……」
「はぁ、いい天気だなぁ。こんな気持ちのいい日に、愛するシュカとこの子たちと一緒にいられて俺は世界一幸せだよ」
「ぼくも!」
「ああ、俺も幸せだよ」
「なぁ、俺、シュカに似た可愛い女の子も欲しいんだけど……。この子がもう少し大きくなったら……」
そう言って、腕の中ですやすやと眠る、赤ん坊を抱きしめたアズサが恥ずかしそうに言ったのを見たウルシュカームは、赤ん坊ごとアズサを抱きしめて、その耳に小さく囁いていた。
「うん。もう少し、この子が大きくなったら、頑張ろうね?」
「むぅ~~。ぼくもまぜて!!かあさまをどくせんするのきんし!!」
「くすくす。ほら、おいで?」
「かあさまだーいすき!!」
侯爵家の仲睦まじい家族の話はアルマース王国ではとても有名で、中でも妻を心から愛する侯爵の話はだれもが知っていた。
冷酷無慈悲で暴君のようだった侯爵が、ただ一人の愛おしい人と出会って、幸せな家庭を築くという話は、とても有名な話だったのだ。
だからなのか、人々はその甘すぎる恋物語に憧れたのだ。
一生に一人の運命の人と出会える幸せに、誰もが憧れたのだった。
『子犬だと思っていた幼馴染が実は狼さんだった件』 おわり
「シュカのばかぁぁ!!ふえぇえん。俺の種どうして尻の穴なんかにいれちゃったんだよ!!あれは、飲むものだって言っただろぉ!!ばかばかぁ!!ひっく、ひく……」
ここまで号泣するアズサを初めて見たウルシュカームは、焦っていた。
何とか泣き止んでもらえるように、膝の上に乗せて揺すりながら優しく抱きしめたが、アズサは目を真っ赤にさせて泣き続けていた。
「ふぇ……。シュカとのあかちゃん……。もう授かれないようぉ……」
「アズ、ごめん。ごめんなさい。だって、初夜で種を呑むって聞いたから……」
「なんでそれで、尻の穴に入れちゃんだよ!!」
そう言って、ウルシュカームをアズサが睨むと、頬を赤くしたウルシュカームがもじもじと言ったのだ。
「俺はてっきり……」
「なんだよ?」
「てっきり……、下の口で飲むものだと……」
まさかそんなことを言われると思っていなかったアズサは、一瞬で真っ赤になった後に、小さく震えてから、ウルシュカームの頬をひっぱたいて言ったのだ。
ぱしーーーん!!
「このおバカ!!エロ犬!!」
そう言った後、ぷいっとそっぽを向いた後に、身支度を整えてウルシュカームを一人寝室に残して出ていってしまったのだ。
ウルシュカームは、ぼうっとしながら打たれた頬を押さえていたが、アズサに嫌われてしまうと本気で考えてしまい、涙が溢れて止まらなかった。
そして、身支度もせずに情事の跡がまる分かりの半裸状態で、慌てて部屋を飛び出していた。
「うわーーーん!!アズサ、アズサ!!ごめんなさい!!ごめんなさいぃ……。俺が悪かったから、俺を嫌いにならないでぇーー!!うわーーーん!!」
そう言って、恥も外聞もなく、泣き叫んだのだ。
それを見た使用人たちは、顔面蒼白状態で蜘蛛の子を散らすように散って行った。
そして、浴室に入ろうとしているアズサを見つけたウルシュカームは、全力でアズサの元に駆けて、泣いて謝っていた。
「アズサ、ごめんなさいぃ……。俺を、嫌いにならないでぇ!!アズサに嫌われたら俺、生きていけないよぉ……。ひくひく、ひっく……」
そう言って、子供のように泣きじゃくるウルシュカームを見たアズサは、ため息を吐いた後に、ウルシュカームを抱きしめて言ったのだ。
「もう、格好いい顔が台無しだぞ?俺はもう怒ってないよ?俺こそごめん。赤ちゃんより、シュカの方が大事だから。さっきは叩いてごめん……」
そう言って、叩いてしまったことで赤くなってしまっている頬を優しく撫でてからキスをした。
そして、ここがどこかと言うことも頭から吹っ飛んでしまった二人は、仲直りのキスをしていた。
最初は触れるだけの、そしていつしか深く貪るような熱い口付けを。
アズサは、艶っぽく潤めた瞳でウルシュカームを誘っていた。
「シュカ……。仲直りに、一緒に風呂に入ろう?」
「うん!!」
「あっ、だけど風呂に入るだけだからな!!えっちなの禁止だからな!!」
「……」
「返事!!えっちなことしないって約束しないともう一生一緒に風呂には入らないからな!」
そう言われたウルシュカームは、姿勢を正して勢いよく約束していた。
「うん!今はえっちなことしない!!約束する!!」
「うん。それじゃ、入ろうか?」
そう言って、二人がいなくなった廊下隅の方には、にやにやと笑う侯爵夫人と、それにおろおろする侯爵と、とんでもないものを見てしまったと言わんばかりの使用人たちが団子状態でそれを見ていたことを二人は知らなった。
それから数年、時には喧嘩をすることもあったが、いつまでも新婚気分でラブラブなアズサとウルシュカームは、家族で穏やかな午後のひと時を過ごしていた。
「かあさま、ぼく、おっきくなったら、かあさまとけっこんするぅ~」
「むむ、アズサは俺の嫁だからアズサは渡さない」
「やだやだ、かあさまは、ぼくのおよめさんになるの!!」
「いくら可愛い息子だとは言え、アズサは絶対に渡さないからな!!」
「はぁ、おいおい二人とも何言ってんだよ?そんなに騒いだら、この子が起きちゃうよ」
「ごめんな?」
「ごめんなさい……」
「はぁ、いい天気だなぁ。こんな気持ちのいい日に、愛するシュカとこの子たちと一緒にいられて俺は世界一幸せだよ」
「ぼくも!」
「ああ、俺も幸せだよ」
「なぁ、俺、シュカに似た可愛い女の子も欲しいんだけど……。この子がもう少し大きくなったら……」
そう言って、腕の中ですやすやと眠る、赤ん坊を抱きしめたアズサが恥ずかしそうに言ったのを見たウルシュカームは、赤ん坊ごとアズサを抱きしめて、その耳に小さく囁いていた。
「うん。もう少し、この子が大きくなったら、頑張ろうね?」
「むぅ~~。ぼくもまぜて!!かあさまをどくせんするのきんし!!」
「くすくす。ほら、おいで?」
「かあさまだーいすき!!」
侯爵家の仲睦まじい家族の話はアルマース王国ではとても有名で、中でも妻を心から愛する侯爵の話はだれもが知っていた。
冷酷無慈悲で暴君のようだった侯爵が、ただ一人の愛おしい人と出会って、幸せな家庭を築くという話は、とても有名な話だったのだ。
だからなのか、人々はその甘すぎる恋物語に憧れたのだ。
一生に一人の運命の人と出会える幸せに、誰もが憧れたのだった。
『子犬だと思っていた幼馴染が実は狼さんだった件』 おわり
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完結おめでとうございます。ふたりともラブラブでとても楽しいお話でした。ところで、アズサが女の子希望してたけれどふたりの間に女の子って産まれるんでしょうか?それともアズサの民族は特殊なので可能なんでしょうかね?
アキ様
お読みいただきありがとうございました。
本来は、1つの種で男女どちらかの子供を授かるのですが、ウルシュカームが別のお口に種を突っ込んだことでアズサは疑似子宮が出来て、普通の女性のように子供を出産することも可能になりました。
なので、頑張りしだいで女の子も出産可能です('◇')ゞ
完結おめでとうございます。
食べを飲むのは下のお口で正解だったということでしょうかね。
また妊娠出産の番外編なども読めたら嬉しいです。
お疲れ様でした!
田沢みん様
コメントありがとうございます。
そうですね。下のお口が正解でした(笑)
一応、種が時間をかけて疑似子宮になっていったので、子供を産めるようになりました。
いつか番外編を思いついたら、出産秘話(?)を更新するかもです(*'▽')
連載終了お疲れ様でした。毎日更新楽しみにしておりましたので、寂しいです。また、ラブラブ甘々な2人に会いたいです。
アリス様
コメントありがとうございます。
楽しんでいただけたようで嬉しいです(*'▽')
機会があれば番外編も……。
いつになるかは分かりませんが、何かの拍子に番外編を思いついたらひょっこり更新するかもです~('◇')ゞ