17 / 21
本編
ユツキ聖人改造計画
しおりを挟む天気のいい昼下がり、ステンドガラスから鮮やかな色彩の光が差し込む白いホールに、光の粒子が舞う。
美しい青年が膝をつき、真っ白の衣装に身を包み祈りを捧げている。
その大きな黒い瞳は光を吸い込んでキラキラと瞬いており、同色の髪は短く整えられ頭を動かすたびにサラサラと揺れる。
つんとたった小さな鼻と静かな笑みを湛えた赤い唇、まろい輪郭を描く薄く色づいた頬はまさに天使のような姿だった。
その真っ白の衣装にはところどころエメラルドの装飾がなされており、後ろに控える護衛騎士は同じ色彩の軍服を身に纏っている。
「神のご加護がありますように」
「素晴らしい!娘の火傷が跡形もなく……!ありがとうございます聖人様!」
「パパ~!お顔痛くないよ~!聖人様ありがとう!」
幼い少女が飛び上がり喜んでいる様を見つめる。ゆっくり一礼し、騎士と共に後ろに下がる。
室内に入り視線がなくなった途端、煩わしいベールを剥ぎ取りベッドに豪快に寝転がる。
「はぁ~~~~~~!疲れたッ!!」
「お疲れ様ユウ、いい聖人様だったよ」
「ハハっ!ガワだけの偽物だけどな」
隣に腰掛けたジェードが俺の頬を撫でる
冷たい温度が気持ちよくて手のひらに頬を擦り付けてみる。ジェードがこちらを見ながら幸せそうに微笑んでいる。
ここは王城の近くにある神殿、俺が初め異世界から召喚された場所。
あれから一年、ここで俺たちは穏やかな日々を過ごしている。
あの日のシアンのぶっ飛んだ発言は冗談ではなかった。
「ユウを戦場に出したくないのなら、他の価値を示さなければならない」
「他の価値?」
「王や上層部に病や怪我に必ず効くエリクサーが生き続けることの有用性を説く」
「え、えりくさー?」
「どんな怪我をも治すと言われている秘薬だ、まぁ実際には貴重な割には性能に限界があり、病にはあまり効かないがな」
シアンが説明してくれるが、何を言いたいのか俺にはさっぱり分からない。
一方のジェードは、何かに気づいたように勢いよく話し出す。
「なるほど……!戦場で使い捨てるより有用な使い方を、提案して認めさせると言うことですね!」
「それだけじゃ弱ぇな。上層部のクズどもは命よりも金が好きだ、貴族相手にアコギな商売して金稼ぎする方が効くぜ~。」
リラが悪い顔で笑う、この人いつもこの顔してるな。
「あぁ、それもいいだろう。何よりもその活動を通して聖人としての象徴的な価値を高めることが一番効果があるだろう。使い捨ての駒と見られているうちはいつ掌を返されるかわからないからな」
「……はぁ、なるほど?」
大人たちの間でどんどん話が進められていく。
「ってか聖人って転移した時に何回か言われたんだけど、どういう意味なんですか?」
「異世界人たちが言っていた言葉で、女が聖女、男が聖人というらしい。聖なる力を持った神の代行者で、願いに応え救いを与えるらしい。神官や魔法使いの中では異世界人を神格化してそう呼ぶものがいる。」
「な、なるほど????」
応えながらもハテナが頭の上に浮かぶ。
(俺がその聖人になるってこと?一体どうやって??)
「そうなると、まず見た目をなんとかしないとな。」
「俺はユウの容姿の隠された美貌って感じ好きだけど、そうは言ってられないよな」
「俺がその陰気なクソ髪切ってやるよ、刃物の扱いは得意だぜ~」
大人たちがじわじわ近づいてくる。
「は、おい、やめろ……近寄るな~!!!!」
俺の抵抗は全無視され「ユツキ聖人改造計画」は開始されたのであった。
18
あなたにおすすめの小説
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。
恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる
琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。
落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。
異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。
そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──
【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった
ゆう
BL
俺ウェスは幼少期に魔王様に拾われた下級悪魔だ。
生まれてすぐ人との戦いに巻き込まれ、死を待つばかりだった自分を魔王様ーーディニス様が助けてくれた。
本当なら魔王様と話すことも叶わなかった卑しい俺を、ディニス様はとても可愛がってくれた。
だがそんなディニス様も俺が成長するにつれて距離を取り冷たくなっていく。自分の醜悪な見た目が原因か、あるいは知能の低さゆえか…
どうにかしてディニス様の愛情を取り戻そうとするが上手くいかず、周りの魔族たちからも蔑まれる日々。
大好きなディニス様に冷たくされることが耐えきれず、せめて最後にもう一度微笑みかけてほしい…そう思った俺は彼のために勇者一行に挑むが…
【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。
キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。
しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。
迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。
手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。
これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。
──運命なんて、信じていなかった。
けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。
全8話。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる