緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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顔無人形

#1

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 あれは、私がまだ、小学4年の夏の出来事だ…。
 夏休みに入り、毎日が遊ぶことで忙しかった。当時は携帯ゲーム機等が出始めた頃だった。そのため、私の周りでも持っている子どもはほとんどいなかった。
 だから、私たちの遊びと言えば、外に出るほかなかった。
 そんな中、私を含めたシン、アヤ、ナナの四人で長距離のサイクリングに出かける計画を立てた。
 長距離と言っても、隣の市の運動公園までなのだが、小学生の私たちにとっては、とても長い距離だったと思う。

 昼飯を早めに済ませ、自転車を漕ぎ始めたのは、13時前の事だった。
 太陽がギラギラとアスファルトを照り付け、雲は遠くの方に入道雲が見えるだけの、まさに夏の暑い日と言った空模様だった。
 私たち男の自転車は変速ギアが付いており、上り坂だろうが、砂利道だろうが、ぐんぐん突き進む。
 女子たちは、普通の自転車だったため、急勾配の坂は、押さなければならなかった。
 暑さの所為もあり、多少苛立つことはあったものの、険悪雰囲気にはならず、自転車を進ませた。
 漕ぎ始めてから、一時間程経った頃、ようやっと、私の町と隣の市とを繋ぐ、大きな橋に辿り着いた。
 川の上を横切っている大きな橋は、交通量も多く、比較的に涼しかった。
 普段の親の車だったら、一分ほどで渡れるこの橋も、自転車だと、7分も掛かってしまった。

 橋を渡り切り、すぐ横の土手の道に入り、自転車を降りた。
 ここ最近、一時間も自転車を漕いだことは、なかったため、疲労が溜まっていた。
 自宅から持ってきた飲み物をそれぞれ飲み、10分ほど日陰で休憩した。
 腕を触る度、赤くなった日焼けが、ひりひりと痛んだ。
 今となれば、それも夏の一興なのだが、当時は嫌で仕方なかった。
 母に言われ、日焼け止めは塗ってきて居た物の、汗で殆ど流れてしまったらしい…。
 仕方なく、女子力が高かった、アヤに日焼け止めを貰い、腕に塗りなおした。
 しかしまぁ、子どもの体力というものは恐ろしいもので、少しの休憩と糖を摂れば、また動きだせる。
 しかも、当時は子どもながら、探求心が強かったため、自転車さえあれば、どこまでも行って帰ってこられると思っていた。

 私たちは再度自転車を漕ぎ始め、目的地に向かった。
 距離にして残すところ5キロほど。単純計算で、もう30分ほどで到着する。
 もう一本の大きい橋に差し掛かろうとした時だった。
 雨の匂いがした。
 私は当時から、目が悪い分、鼻と耳が優れており、その二つの感覚には、自信があった。
 その鼻が近いうちに雨が降る事を予期させていた。
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