緋色の小刀-ナイフ-

八雲 銀次郎

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廃洋館

#2

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少し楽しそうに機材を組み立てるのは、一年先輩で、ディレクターの寺井幸樹。彼とは最近一緒に仕事する様になったから、どんな人かは知らない。が、こう言った類の話は結構好きらしく、この間の飲み会でも、多くは語らなかったが、楽しみにしていたらしい。
 今から、この洋館の外見や周りを撮影し、一旦麓に降りてから、また夜、ここに戻って来る。昼でもこんなに迫力が有るのだから、暗く成ってからだと、相当の覚悟が必要だ。
 取り敢えず、三人で洋館の周りを撮影がてら、歩く事にした。広い庭には、所々に花壇が見受けられる。洋館に向かって右側から、反時計回りに建物の周りを一周する。特に変わった所はない。いや、それがそもそも不自然なのだ。これだけ放置された建物が、窓ガラス一枚も割られる事なく、今までこの森の中に佇んで居る事自体が不自然なのだ。
 「やっぱり、気味が悪いですね…。」
 「そうね…。」
 「じゃぁまず、建物の正面から撮ろうか。」

 私たち一行は、先ほど車を停めた洋館の正面まで戻って来た。
しかし、そこで、奇妙な物を見つけてしまった。足跡だ。しかも真新しい。サイズ的に私より大きい。あの二人のどちらかだと思ったが、靴底の形状がどう言う訳か、革靴のそれだった。私含め、今ここに居る、三人は長靴だ。それも職場から支給された物。
 「陣内さん、どうしたんですか?」
 私の想い過ごしだろうか…。それとも…。
 「何でもない。」
 今無駄に騒ぎ立てて、自ら不安を焚き付けても仕方がない。今の足跡は見なかった事にし、撮影に臨んだ。
 私は普段、夕方のニュース番組の原稿しか読まないため、何回か取り直しができるとなると、少し気が楽だった。洋館の紹介をしている最中、気温が下がってきたのか、身体が冷える。元々冷え性というのも手伝い、指先や鼻先などが冷たく成っていく。
 建物紹介の撮影は無事に終わり、ひとまず人里に降りることにした。寒くて車から毛布を取り出し、身体に巻き付けた。二人が機材を片付けている間、洋館を観察していた。
 実は撮影中、誰かに見られている様な気がしていた。右側に大きい玄関ポーチがあり、その上が屋根ではなく、テラスの様になっている。間取りもどうなっているかは不明だが、左側の窓が幾つもあるため、あそこは客間に違いない。全体的に見れば左右対称になっているのだが、近くで見ると、所々が異なっている。窓の大きさ。テラスの有無。出窓の数等。一体何時から有って、誰が所有しているのかは分からない。少なくとも、私の物心付いた頃からこの洋館の噂は有った。不気味だ。
 最初に向かったのは、役所だった。ここなら、建物に限らず、この町の歴史が解るかもしれない。
 私たちを出迎えてくれたのは、広報課の浅井さんという方だった。
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