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5 真理、ご懐妊?
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「奥様、愛人その2がお会いしたいそうです」
本邸ではアルビナが真理にお伺いをたてに来るが、真理はこれから乗馬を楽しもうとしていた。
「愛人その2って?」
真理が乗馬服を侍女達に着せてもらいながら聞く。
「ペクスィモのことです。旦那様が二番目にお連れになったので」
「あら、差別はいけないと言ったわよね。ちゃんとお名前で読んであげてね。ペクスィモさんが、いったいなんの用かしら? 五分ほどならいいと伝えてちょうだい。私はこれから浜辺まで馬でお散歩したいのよ」
「え! 乗馬などジュリエット様はおできになるのですか? 今まで馬は怖いとおっしゃっていませんでしたか?……それに愛人に対するお優しいお心、まるで天使です!」
「乗馬って気分転換にもってこいだからもちろん乗れるわよ。馬は怖いどころか可愛いと思うわ。あと天使じゃないから、当たり前のことを当たり前に言っているだけなのよ」
大学では馬術部に所属していた真理、実家は牧場も経営していた。馬は幼い頃から身近な存在であった。
* ੈ✩‧₊˚* ੈ✩‧₊˚* ੈ✩‧₊
ほどなくしてペクスィモが現れ、
「……というわけなのですわ! エラスティスって酷い女だと思いませんか? 私が妊娠しているのに旦那様とダイヤモンド鉱山の視察に行きたいと強請るなんて……」
と、愚痴り始めたのだった。
「愛人2じゃなかった……えぇと、ペクスィモさん。あなたが相談している相手はイリスィオス様の正妻のジュリエット様ですよ。奥様にとっては、エラスティスさんもペクスィモさんも同じくらい酷い女です!」
それを見ていたアルビナが不愉快そうに鼻を鳴らしてそう言った。
「あぁ、アルビナ! そんなことは思ってもいないから大丈夫よ。かえって、愛人さんにはありがたいと感謝しているぐらいよ。ペクスィモさんもそう考えればいいんじゃないかしら? エラスティスさんが代わりにいろいろやってくれるから自分が楽できるって思えば天国よ!」
「え!! それはお姉様が変です。だって、旦那様がエラスティスを抱くんですよ? 屈辱です! あんな女狐に負けるなんて……」
「えぇっと……女の戦いに私は参戦するつもりもありませんから、その意見には共感できないのよねぇ……ところでペクスィモさんも海にいきましょうか? ここから30分ほどで着くのよ。今日はお天気がいいから気持ちいいと思うわ」
* ੈ✩‧₊˚* ੈ✩‧₊˚* ੈ✩‧₊
いつのまにか同行する人数も増えピクニック状態となった真理達。馬車も数台連ねてランチの軽食もたくさん積んで侍女や護衛も伴ったちょっとしたお出かけに、使用人達は皆わくわくと気持ちを弾ませていた。
使用人達が敷物やパラソルを広げテントも張り、折りたたみ式の長椅子なども設置していく。真理はテントの中で乗馬服から袖なしのウエストを絞らないストンとしたワンピースに着替えると浜辺で波と戯れはじめた。
「お姉様のドレスは不思議ですわね。それはなんですか?」
すっかり真理に懐いたペクスィモは真理の服をまじまじと見つめたのである。
「最近暑いでしょう? だから古いドレスの袖を切って丈も短くしてみたのよ。ウエストなんかもリボンでしめると食後に苦しいもの。とってしまったのよ。いわゆるムームーよねぇ。よく祖母が言っていたあっぱっぱのようなものよ」
「ムームー? あっぱっぱ? そのような服、貴族の方が着ているのを初めて見ましたわ」
「あら、まぁ。だったら流行らせましょう! ペクスィモさんにもこれからお腹が大きくなるからこのような服は必需品になるはずよね。あとで作らせておくわ。これ、部屋着にも便利だしね。本当は水着になって泳ぎたいところだけれど……今日はやめておこうかな」
(綺麗な海ね、真理! 海なんてゆっくり見たことなかったわ。それにペクスィモと仲良くなれたなんて驚きだわ)
ジュリエットが真理に頭の中で話しかけてくる。
『仲良く、というより共存ですかねぇ。だってイリスィオスって愛人達と争う価値ある? ジュリエットもそのうち気がつくわよ。いかにイリスィオスの為に悩むことがばからしいことかってね』
(そうなるといいわね……うっ……なんか気持ち悪いわ……)
『え? 大丈夫? って私も気持ち悪いわ。体を共有しているから当然よね。うっつ、キモい……なんだろう吐きそうだわ』
真理は吐き気をこらえるのに必死で胃のあたりに手を当て、顔を青ざめさせる。
今ではどこへ行くにも同行するアルビナが満面の笑みで言った言葉は
「おめでとうございます! 奥様、ご懐妊ですわ」であった。
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
ご注意
●ムームー
ムームー【(ハワイ)muumuu】 の解説
ハワイの女性が着る、はでな柄の、ゆったりした木綿のワンピース。日本では昭和36年(1961)ごろに夏の家庭着として登場。
●あっぱっぱ
あっぱっぱ の解説
女性が夏に着る家庭用のワンピース。通気性をよくするように、ゆったりと作る。大正末から昭和初期にかけて大阪地方で言い始めた語。
goo辞書より抜粋
本邸ではアルビナが真理にお伺いをたてに来るが、真理はこれから乗馬を楽しもうとしていた。
「愛人その2って?」
真理が乗馬服を侍女達に着せてもらいながら聞く。
「ペクスィモのことです。旦那様が二番目にお連れになったので」
「あら、差別はいけないと言ったわよね。ちゃんとお名前で読んであげてね。ペクスィモさんが、いったいなんの用かしら? 五分ほどならいいと伝えてちょうだい。私はこれから浜辺まで馬でお散歩したいのよ」
「え! 乗馬などジュリエット様はおできになるのですか? 今まで馬は怖いとおっしゃっていませんでしたか?……それに愛人に対するお優しいお心、まるで天使です!」
「乗馬って気分転換にもってこいだからもちろん乗れるわよ。馬は怖いどころか可愛いと思うわ。あと天使じゃないから、当たり前のことを当たり前に言っているだけなのよ」
大学では馬術部に所属していた真理、実家は牧場も経営していた。馬は幼い頃から身近な存在であった。
* ੈ✩‧₊˚* ੈ✩‧₊˚* ੈ✩‧₊
ほどなくしてペクスィモが現れ、
「……というわけなのですわ! エラスティスって酷い女だと思いませんか? 私が妊娠しているのに旦那様とダイヤモンド鉱山の視察に行きたいと強請るなんて……」
と、愚痴り始めたのだった。
「愛人2じゃなかった……えぇと、ペクスィモさん。あなたが相談している相手はイリスィオス様の正妻のジュリエット様ですよ。奥様にとっては、エラスティスさんもペクスィモさんも同じくらい酷い女です!」
それを見ていたアルビナが不愉快そうに鼻を鳴らしてそう言った。
「あぁ、アルビナ! そんなことは思ってもいないから大丈夫よ。かえって、愛人さんにはありがたいと感謝しているぐらいよ。ペクスィモさんもそう考えればいいんじゃないかしら? エラスティスさんが代わりにいろいろやってくれるから自分が楽できるって思えば天国よ!」
「え!! それはお姉様が変です。だって、旦那様がエラスティスを抱くんですよ? 屈辱です! あんな女狐に負けるなんて……」
「えぇっと……女の戦いに私は参戦するつもりもありませんから、その意見には共感できないのよねぇ……ところでペクスィモさんも海にいきましょうか? ここから30分ほどで着くのよ。今日はお天気がいいから気持ちいいと思うわ」
* ੈ✩‧₊˚* ੈ✩‧₊˚* ੈ✩‧₊
いつのまにか同行する人数も増えピクニック状態となった真理達。馬車も数台連ねてランチの軽食もたくさん積んで侍女や護衛も伴ったちょっとしたお出かけに、使用人達は皆わくわくと気持ちを弾ませていた。
使用人達が敷物やパラソルを広げテントも張り、折りたたみ式の長椅子なども設置していく。真理はテントの中で乗馬服から袖なしのウエストを絞らないストンとしたワンピースに着替えると浜辺で波と戯れはじめた。
「お姉様のドレスは不思議ですわね。それはなんですか?」
すっかり真理に懐いたペクスィモは真理の服をまじまじと見つめたのである。
「最近暑いでしょう? だから古いドレスの袖を切って丈も短くしてみたのよ。ウエストなんかもリボンでしめると食後に苦しいもの。とってしまったのよ。いわゆるムームーよねぇ。よく祖母が言っていたあっぱっぱのようなものよ」
「ムームー? あっぱっぱ? そのような服、貴族の方が着ているのを初めて見ましたわ」
「あら、まぁ。だったら流行らせましょう! ペクスィモさんにもこれからお腹が大きくなるからこのような服は必需品になるはずよね。あとで作らせておくわ。これ、部屋着にも便利だしね。本当は水着になって泳ぎたいところだけれど……今日はやめておこうかな」
(綺麗な海ね、真理! 海なんてゆっくり見たことなかったわ。それにペクスィモと仲良くなれたなんて驚きだわ)
ジュリエットが真理に頭の中で話しかけてくる。
『仲良く、というより共存ですかねぇ。だってイリスィオスって愛人達と争う価値ある? ジュリエットもそのうち気がつくわよ。いかにイリスィオスの為に悩むことがばからしいことかってね』
(そうなるといいわね……うっ……なんか気持ち悪いわ……)
『え? 大丈夫? って私も気持ち悪いわ。体を共有しているから当然よね。うっつ、キモい……なんだろう吐きそうだわ』
真理は吐き気をこらえるのに必死で胃のあたりに手を当て、顔を青ざめさせる。
今ではどこへ行くにも同行するアルビナが満面の笑みで言った言葉は
「おめでとうございます! 奥様、ご懐妊ですわ」であった。
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
ご注意
●ムームー
ムームー【(ハワイ)muumuu】 の解説
ハワイの女性が着る、はでな柄の、ゆったりした木綿のワンピース。日本では昭和36年(1961)ごろに夏の家庭着として登場。
●あっぱっぱ
あっぱっぱ の解説
女性が夏に着る家庭用のワンピース。通気性をよくするように、ゆったりと作る。大正末から昭和初期にかけて大阪地方で言い始めた語。
goo辞書より抜粋
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