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4 誘拐されたお姉様(いろいろ視点)
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ꕤ୭*カイア視点
オラン侯爵家はさすが高位貴族! 門から広がる敷地の広いことったらないわ。
「エステバンって、やっぱりすごいのね! 門を入っただけで格が違うもん」
私は目を輝かせて感心しまくる。
「あっはは、ありがとう! でも、僕の力じゃないから。ご先祖様が頑張ってくれたおかげさ」
エステバンは本当に謙虚なんだから・・・・・
オラン家の屋敷の周りには見事な噴水と優雅な作りのガゼボ、均整のとれた庭木が左右対称に植えられたすっきりした庭園で花は一輪も植えられていない。これは、この世界ではこの当主は妻を迎えていないという証にもなる。
庭園の花は当主夫人の好きな花で埋め尽くされるのが慣習だからだ。
「ねぇ、お兄様は会ってくれるかな?」
「もちろんさ。僕は兄上とは仲良しだし、兄上は弱い者の味方だよ」
――騎士団長で侯爵家でお祖母様は先王の妹・・・・・・そのオラン侯爵を味方につけたら、お姉様は救い出せるわ!
ꕤ୭*カイラー・オラン侯爵視点
「兄上、僕のクラスメイトの女の子が相談したいことがあるというんです。会ってもらえないですか?」
弟のエステバンが私に、頬を真っ赤にして頼んで来た。
「もしかして、お前の好きな子かい? 名前はカイアだったかなぁ。会ってもいいが・・・・・・いったいなんの相談かなぁ・・・・・・しかし、キアン子爵家って・・・・・・せめて伯爵家の子と付き合えと言ったよな・・・・・・」
その言葉にエステバンが顔色を替えた。
「兄上! カイアは好きな子だけれど、僕のことは友人としてしか思ってないから付き合っているわけじゃないよ。それに、もし付き合えたら身分の差なんて気にしないよ。彼女がいれば僕はなんでもできそうなんだ」
少しだけ傷ついた言い回しと、その純真な気持ちに思わず笑みがこぼれた。
ーーなんとかエステバンの恋を応援したいなぁ。カイアがどんな子か吟味してやろう!
私がカイアに会った第1印象は、わがままそうな生意気娘といったところだった。ところが話をしてみると姉思いの優しい、なかなか個性的な子だった。
「お姉様を助けたいんです! ついでにカイラー様の恋人してもらえるといいのに。お姉様は、そりゃぁ綺麗で賢いんですよ。誰よりも幸せになる価値がある人なのに・・・・・・」
真っ直ぐな瞳は思い詰めて、涙がにじんでいた。
「女性と子供と動物に乱暴を働く奴は人間じゃないと思っている私が、助けないわけないだろう? 安心しなさい。必ずお姉さんを救いだそう」
ꕤ୭*アーノルド視点 R15 ※残酷描写あり
妻の妹カイアがやってきて虐待を感づかれたようだが特に心配ないさ。誰にも文句は言わせない。このサマーは金を払った私のものだ。自分の妻を蹴ろうが殴ろうがこちらの勝手だ。
顔だけは気をつけて何度も殴ったよ。この女は我慢強くて歯を食いしばり声も出さない。きっと死ぬときも声もださず必死に我慢して血にまみれて息絶えるだろう・・・・・・なんて、ぞくぞくする光景なんだろう・・・・・・でも、しばらくは生かしてやろう。こんな上等な教養のあるサンドバッグは貴重だからな。ふふふっ。
カイアの訪問から数日後のこと、白昼堂々と人さらいが屋敷に侵入し妻を引っさらっていった。
私はちょうどその場にはいなくて侍女長の真似事をさせている愛人のネルナがその場にいた。
「あれは貴族です。チンピラの身のこなしではありません。それに・・・・・・そいつは私のことをあばずれと呼んだのです! 許せないわ!」
ーーネルナの様子は確かに侍女長じゃないな。所詮、この女は酒場で拾った貧困層の平民だからなぁ。
「ふふふっ。あばずれには違いないだろう? なかなか、そいつは女を見る目があるようだ。貴族でスラエ侯爵家を敵に回してもいいと考える人間はそうは多くない。いったい誰なのかな。面白いな。ゆっくりとこの借りは返させてもらおう」
この時の私は自分の勝利しか信じていなかった。相手が王族ではない限り、私は誰にも負けないからだ。
オラン侯爵家はさすが高位貴族! 門から広がる敷地の広いことったらないわ。
「エステバンって、やっぱりすごいのね! 門を入っただけで格が違うもん」
私は目を輝かせて感心しまくる。
「あっはは、ありがとう! でも、僕の力じゃないから。ご先祖様が頑張ってくれたおかげさ」
エステバンは本当に謙虚なんだから・・・・・
オラン家の屋敷の周りには見事な噴水と優雅な作りのガゼボ、均整のとれた庭木が左右対称に植えられたすっきりした庭園で花は一輪も植えられていない。これは、この世界ではこの当主は妻を迎えていないという証にもなる。
庭園の花は当主夫人の好きな花で埋め尽くされるのが慣習だからだ。
「ねぇ、お兄様は会ってくれるかな?」
「もちろんさ。僕は兄上とは仲良しだし、兄上は弱い者の味方だよ」
――騎士団長で侯爵家でお祖母様は先王の妹・・・・・・そのオラン侯爵を味方につけたら、お姉様は救い出せるわ!
ꕤ୭*カイラー・オラン侯爵視点
「兄上、僕のクラスメイトの女の子が相談したいことがあるというんです。会ってもらえないですか?」
弟のエステバンが私に、頬を真っ赤にして頼んで来た。
「もしかして、お前の好きな子かい? 名前はカイアだったかなぁ。会ってもいいが・・・・・・いったいなんの相談かなぁ・・・・・・しかし、キアン子爵家って・・・・・・せめて伯爵家の子と付き合えと言ったよな・・・・・・」
その言葉にエステバンが顔色を替えた。
「兄上! カイアは好きな子だけれど、僕のことは友人としてしか思ってないから付き合っているわけじゃないよ。それに、もし付き合えたら身分の差なんて気にしないよ。彼女がいれば僕はなんでもできそうなんだ」
少しだけ傷ついた言い回しと、その純真な気持ちに思わず笑みがこぼれた。
ーーなんとかエステバンの恋を応援したいなぁ。カイアがどんな子か吟味してやろう!
私がカイアに会った第1印象は、わがままそうな生意気娘といったところだった。ところが話をしてみると姉思いの優しい、なかなか個性的な子だった。
「お姉様を助けたいんです! ついでにカイラー様の恋人してもらえるといいのに。お姉様は、そりゃぁ綺麗で賢いんですよ。誰よりも幸せになる価値がある人なのに・・・・・・」
真っ直ぐな瞳は思い詰めて、涙がにじんでいた。
「女性と子供と動物に乱暴を働く奴は人間じゃないと思っている私が、助けないわけないだろう? 安心しなさい。必ずお姉さんを救いだそう」
ꕤ୭*アーノルド視点 R15 ※残酷描写あり
妻の妹カイアがやってきて虐待を感づかれたようだが特に心配ないさ。誰にも文句は言わせない。このサマーは金を払った私のものだ。自分の妻を蹴ろうが殴ろうがこちらの勝手だ。
顔だけは気をつけて何度も殴ったよ。この女は我慢強くて歯を食いしばり声も出さない。きっと死ぬときも声もださず必死に我慢して血にまみれて息絶えるだろう・・・・・・なんて、ぞくぞくする光景なんだろう・・・・・・でも、しばらくは生かしてやろう。こんな上等な教養のあるサンドバッグは貴重だからな。ふふふっ。
カイアの訪問から数日後のこと、白昼堂々と人さらいが屋敷に侵入し妻を引っさらっていった。
私はちょうどその場にはいなくて侍女長の真似事をさせている愛人のネルナがその場にいた。
「あれは貴族です。チンピラの身のこなしではありません。それに・・・・・・そいつは私のことをあばずれと呼んだのです! 許せないわ!」
ーーネルナの様子は確かに侍女長じゃないな。所詮、この女は酒場で拾った貧困層の平民だからなぁ。
「ふふふっ。あばずれには違いないだろう? なかなか、そいつは女を見る目があるようだ。貴族でスラエ侯爵家を敵に回してもいいと考える人間はそうは多くない。いったい誰なのかな。面白いな。ゆっくりとこの借りは返させてもらおう」
この時の私は自分の勝利しか信じていなかった。相手が王族ではない限り、私は誰にも負けないからだ。
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