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「私は・・・・・・私の家族はマクシミリアン様とリュシュパン公爵夫妻です。こちらに来た時からとても優しくしてくださいました。お祖父様は幼い頃に可愛がって下さったのを覚えています。そして、ガブリエル公爵夫人は私を娘だとおっしゃってくださり、ガブリエル公爵は私をお祖母様と同じ、それ以上に尊い存在だとおっしゃった。ですから、これらの方々だけが私の大事な家族です」
「そうだね。こいつらは、聖女様の家族でもなんでもない。ということは、さまざまな罪に問い厳重に処罰することにしよう」
私は無言でかつての家族を見つめながら頷く。
「ちょっと、何を言い出すのよ、フランソワーズちゃん。 あたくしがお母様でしょう? 今までのことは謝るわ。だから、これから母娘で仲良く暮らしましょうよ」
「あなたは、私が『なぜ、そんなに私を嫌うのですか?』と、尋ねたときのことを覚えていますか?」
「え? さぁ、そんなことは聞かれていませんよ」
「あなたは私に『そうね、その髪と瞳や声もすべてが、私の嫌いな人にそっくりなのよ。だから、多分フランソワーズがなにをしても、あたくしは好きにはなれないわ』と、おっしゃったのです。あの時、あなたは私を捨てたのです。だから、今度は私があなたを捨てます!」
私はずっと言いたかったことを、やっと言えた気がした。
この人の愛はもういらない。
「わしはなにもしなかったよな? わしはフランソワーズ様を特に虐めたりしなかったと思う。聖女様ならこの世の富、権力、全てが手に入る・・・・・・わしと一緒に暮らそう? これからなんだってしてやるから」
そう言ったお父様に、私の周りを飛び回っていた妖精達が怒りの声をあげた。
「フランソワーズ、あいつ悪い奴だよ。嘘つきだ。やっつけていい?」
「そうだよ、あいつは悪い奴だ。フランソワーズになにかさせようとしてる」
「やっつけちゃえ! あいつらは皆フランソワーズを利用しようとする悪い奴らだ」
そんな小さな妖精達の怒りが次第に膨れ上がり湖の色がどす黒く染まっていく。
「痛い、痛い。わしの頭が割れそうだぁー 」
「なによぉーー、これ! うぎゃぁあぁーー。あたくしの頭が痛くて気が狂いそうよぉーー。助けてぇーー」
「い、痛い。わたしの頭が・・・・・・あたまがぁーー」
「うっ。僕の頭が破裂しちゃうよぉーー。痛い、いたぁーーい、助けてぇえーー」
かつての家族達が床を転げ回り頭を抱える。私は唖然としてその様子を見ていた。
「聖女様。妖精達を止めてください。この者達はわたしが厳重に罰することにします。今ここで妖精達が人間を殺すようなことがあってはなりません。妖精が人間と共存できなくなります」
大神官様が慌てて私に懇願した。
「妖精さん。私の為に怒るのは止めて。この人達は大神官様が罰してくださるから、これ以上攻撃しないで」
「そうなの? フランソワーズはそれでいいの?」
「やっつけちゃダメなの?」
「僕たち、フランソワーズの言うことならなんでも聞くよ」
たちまち湖は穏やかになりキラキラと輝きを取り戻す。
「まさしく精霊の守り子様だわ」
「なんと恐ろしくも素晴らしい力だ」
「妖精にこれほど愛されるとは素敵ですわ」
貴族達が口々に賞賛し、妖精達もにこにこと機嫌が良くなる。
お父様は痛みが治まったらしいが、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。お母様もベッツィーもそれは同じで、お兄様に至っては股間が濡れているようにも見えた。
「あら嫌だ。フランク様はお漏らしよ。いい年をして・・・・・・恥ずかしい」
「うっわ。嫌だ。汚いわねーー」
同じ年頃の令嬢達にクスクスと笑われて、お兄様は真っ赤になってうつむいた。
「聖女様に酷い扱いをしたことや、高位貴族に対する無礼な態度、そして大神官であるわたしを偽物インチキ呼ばわりした罪は重い。それぞれに相応しい罰が下される。お前らは全て貴族籍は剥奪、平民に・・・・・・」
「お、お待ち下さい。ここで裁可を下すのですか? だって罰には裁判が必要ですよね? 国王陛下の承認だっているはず。いくら大神官様といえど、勝手にカステジャノス侯爵家のわし達の処分が決められるのですか?」
いつのまにか湖の向こう側にいた人物二人が、多くの騎士を従えてこちらにやって来た。
「大神官様にこれ以上逆らうでない。イズルダリア国王の余がこのことはすでに了承しておる」
「いかにも。サマンターブル国王である余もすでに了承済みだ。お前達は皆貴族の身分を剥奪される。とくに大神官様に無礼を働いた者は奴隷落ちだ」
「まぁ、とてもいいタイミングでいらっしゃったのですね。予定どおりですわ」
リュシュパン公爵夫人がお二人に微笑みかけて、優雅にカーテシーをした。
「ジャンヌ。お前ときたら、まったくたいした妹だよ。両国王陛下まで呼んだのかい?」
「もちろんですわ。わたくしは、この聖女様を絶対的に守ろうと誓いましたからね」
「うふふ。わたくしも、この聖女様を守りましてよ。可愛い娘ができるなんて夢みたい。それに、孫娘ができたらもう最高ですわ」
「そうでしょう? おっほほほ。わたくしたちが力を合わせれば、どんな悪からも聖女様をお守りできます」
妖精達も、リュシュパン公爵夫人とガブリエル公爵夫人のまわりをふわふわと飛び回る。
「この人達、フランソワーズの新しいお母様?」
「この人、良い人。あたし、好き」
「僕も好き。フランソワーズに優しくする人、好き」
七色に輝きながら飛び回る妖精がリュシュパン公爵夫人の指に止まり、ガブリエル公爵夫人の肩にもとまる。私とマクシミリアン様の周りを、ふわふわと笑いながら飛ぶ妖精達は上機嫌だった。
私とマクシミリアン様は寄り添いあい、お互いの手をそっと握る。
「マクシミリアン様、大好きです」
「うん、わたしも大好きだ」
その場にいる全ての貴族達がにこやかに微笑み私達を祝福しているなか、絶望の声をあげているのは・・・・・・
「ど、奴隷? あたくしが奴隷? あり得ない・・・・・・おかしいわよ」
「そんな、僕が奴隷?」
「平民落ち? わしが?」
「わたし、平民なんて嫌よぉおお」
「そうだね。こいつらは、聖女様の家族でもなんでもない。ということは、さまざまな罪に問い厳重に処罰することにしよう」
私は無言でかつての家族を見つめながら頷く。
「ちょっと、何を言い出すのよ、フランソワーズちゃん。 あたくしがお母様でしょう? 今までのことは謝るわ。だから、これから母娘で仲良く暮らしましょうよ」
「あなたは、私が『なぜ、そんなに私を嫌うのですか?』と、尋ねたときのことを覚えていますか?」
「え? さぁ、そんなことは聞かれていませんよ」
「あなたは私に『そうね、その髪と瞳や声もすべてが、私の嫌いな人にそっくりなのよ。だから、多分フランソワーズがなにをしても、あたくしは好きにはなれないわ』と、おっしゃったのです。あの時、あなたは私を捨てたのです。だから、今度は私があなたを捨てます!」
私はずっと言いたかったことを、やっと言えた気がした。
この人の愛はもういらない。
「わしはなにもしなかったよな? わしはフランソワーズ様を特に虐めたりしなかったと思う。聖女様ならこの世の富、権力、全てが手に入る・・・・・・わしと一緒に暮らそう? これからなんだってしてやるから」
そう言ったお父様に、私の周りを飛び回っていた妖精達が怒りの声をあげた。
「フランソワーズ、あいつ悪い奴だよ。嘘つきだ。やっつけていい?」
「そうだよ、あいつは悪い奴だ。フランソワーズになにかさせようとしてる」
「やっつけちゃえ! あいつらは皆フランソワーズを利用しようとする悪い奴らだ」
そんな小さな妖精達の怒りが次第に膨れ上がり湖の色がどす黒く染まっていく。
「痛い、痛い。わしの頭が割れそうだぁー 」
「なによぉーー、これ! うぎゃぁあぁーー。あたくしの頭が痛くて気が狂いそうよぉーー。助けてぇーー」
「い、痛い。わたしの頭が・・・・・・あたまがぁーー」
「うっ。僕の頭が破裂しちゃうよぉーー。痛い、いたぁーーい、助けてぇえーー」
かつての家族達が床を転げ回り頭を抱える。私は唖然としてその様子を見ていた。
「聖女様。妖精達を止めてください。この者達はわたしが厳重に罰することにします。今ここで妖精達が人間を殺すようなことがあってはなりません。妖精が人間と共存できなくなります」
大神官様が慌てて私に懇願した。
「妖精さん。私の為に怒るのは止めて。この人達は大神官様が罰してくださるから、これ以上攻撃しないで」
「そうなの? フランソワーズはそれでいいの?」
「やっつけちゃダメなの?」
「僕たち、フランソワーズの言うことならなんでも聞くよ」
たちまち湖は穏やかになりキラキラと輝きを取り戻す。
「まさしく精霊の守り子様だわ」
「なんと恐ろしくも素晴らしい力だ」
「妖精にこれほど愛されるとは素敵ですわ」
貴族達が口々に賞賛し、妖精達もにこにこと機嫌が良くなる。
お父様は痛みが治まったらしいが、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。お母様もベッツィーもそれは同じで、お兄様に至っては股間が濡れているようにも見えた。
「あら嫌だ。フランク様はお漏らしよ。いい年をして・・・・・・恥ずかしい」
「うっわ。嫌だ。汚いわねーー」
同じ年頃の令嬢達にクスクスと笑われて、お兄様は真っ赤になってうつむいた。
「聖女様に酷い扱いをしたことや、高位貴族に対する無礼な態度、そして大神官であるわたしを偽物インチキ呼ばわりした罪は重い。それぞれに相応しい罰が下される。お前らは全て貴族籍は剥奪、平民に・・・・・・」
「お、お待ち下さい。ここで裁可を下すのですか? だって罰には裁判が必要ですよね? 国王陛下の承認だっているはず。いくら大神官様といえど、勝手にカステジャノス侯爵家のわし達の処分が決められるのですか?」
いつのまにか湖の向こう側にいた人物二人が、多くの騎士を従えてこちらにやって来た。
「大神官様にこれ以上逆らうでない。イズルダリア国王の余がこのことはすでに了承しておる」
「いかにも。サマンターブル国王である余もすでに了承済みだ。お前達は皆貴族の身分を剥奪される。とくに大神官様に無礼を働いた者は奴隷落ちだ」
「まぁ、とてもいいタイミングでいらっしゃったのですね。予定どおりですわ」
リュシュパン公爵夫人がお二人に微笑みかけて、優雅にカーテシーをした。
「ジャンヌ。お前ときたら、まったくたいした妹だよ。両国王陛下まで呼んだのかい?」
「もちろんですわ。わたくしは、この聖女様を絶対的に守ろうと誓いましたからね」
「うふふ。わたくしも、この聖女様を守りましてよ。可愛い娘ができるなんて夢みたい。それに、孫娘ができたらもう最高ですわ」
「そうでしょう? おっほほほ。わたくしたちが力を合わせれば、どんな悪からも聖女様をお守りできます」
妖精達も、リュシュパン公爵夫人とガブリエル公爵夫人のまわりをふわふわと飛び回る。
「この人達、フランソワーズの新しいお母様?」
「この人、良い人。あたし、好き」
「僕も好き。フランソワーズに優しくする人、好き」
七色に輝きながら飛び回る妖精がリュシュパン公爵夫人の指に止まり、ガブリエル公爵夫人の肩にもとまる。私とマクシミリアン様の周りを、ふわふわと笑いながら飛ぶ妖精達は上機嫌だった。
私とマクシミリアン様は寄り添いあい、お互いの手をそっと握る。
「マクシミリアン様、大好きです」
「うん、わたしも大好きだ」
その場にいる全ての貴族達がにこやかに微笑み私達を祝福しているなか、絶望の声をあげているのは・・・・・・
「ど、奴隷? あたくしが奴隷? あり得ない・・・・・・おかしいわよ」
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