(完結)妹に病にかかった婚約者をおしつけられました。

青空一夏

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(ベッツィー視点)


 海を見下ろせる小高い丘にお墓を建てた。周りにはたくさんの花を植え、仲間達が寂しくないようにひとつのお墓に12人分の髪を納める。

「これで皆一緒だよ。もちろん、わたしも死んだらここに入るからさ。皆の分も生きて・・・・・・天寿を全うしたらそっちに行く。だから皆で待っててよ。筋トレでもしながらさ」
 わたしはお墓に向かって話しかける。

「ありがとう」
 そんな仲間達の声が聞こえたような気がした。





 まとまったお金はもらったけれど、なにか仕事を探さないと・・・・・・わたしができることってなんだろう・・・・・・そうだ! 

 古い3階建ての建物を安く買い、1階に護身術教室を開いた。会員は主に大人の女性で、徐々に娘も連れて母娘で来てくれる人が増えていく。簡単なフィットネス器具なども考案し設置していくと、ダイエット目的に通う男性も来るようになった。

「ベッツィー先生。始めてから3ヶ月で4キロも減りました。なにをしてもダメだったのに、凄いです! 今じゃ、妻も『昔みたいにかっこいい』なぁーーんて言ってくれて、夫婦仲が最高に良くなりました」
 最初に来てくれた男性会員は、中年の小太りな体型だったが少しづつ筋肉がついてきた。

 彼はこの辺りの商店街の会長もしているので、いたるところで体型の変化自慢をしてくれるだけで、とんでもなく集客力があがった。とてもありがたい会員様なのだ。

「あっははは。それは良かったですね。きっと、もっと痩せますよ。そしてもっと愛されちゃうかも。今度は奥さんも連れて来てくださいよ。息子さんも娘さんもご一緒に来ていただけると嬉しいです」
 わたしはさらに商店街会長家族全員の会員化を目指す。すっかり経営者らしくなってきたものだな、と思う。

「ですね。妻も誘ってみますよ。ここは家族で参加できるからとてもいい」

「お願いしまぁす。家族割引も導入しますので、ご検討くださいね」

 こうして、わたしの護身術教室は健康スポーツクラブ的な存在となり、多くの会員が通う場所となったのである。

 




「すいません。ここに入会したいのですが、この娘とあたくしで会費はいくらになりますか?」
 ある日、聞き覚えのある声の女性が少女を連れてやって来た。

「ようこそ、いらっしゃいませ。会費ですね? ん? ・・・・・・会費は無料ですわ。お久しぶりですね、お母様」
 わたしはすぐにお母様だとわかったのに、あちらは全く信じられない様子でわたしを見ていた。

「え? えぇーー。ちょっと、待って? どなたかしら? ベッツィーに似ているようですけれど、こんなにムキムキの筋肉が付いているはずがないし。顔もずいぶん痩せて鋭い目つきだし・・・・・・あなたはどう見ても女性騎士より強そうよ? あたくしの娘は、もっとぽっちゃりしていて怠惰で嘘つきな・・・・・・」
 仰天しながらわたしを否定する言葉を並べようとするから、思わずはっ倒しそうになったけれどグッと堪えた。このかんじの空気の読めなさと、迂闊な発言を安易にするところは昔から変わっていないようだ。

「うふふ。そうですねぇ。そのへんの騎士よりは実戦能力は高いかも。ですが正真正銘、あなたの娘のベッツィーですわ。けれど、中身はすっかり生まれ変わっています。ところで、お母様はなにをして暮らしていらっしゃるの? それからこの娘は誰ですか?」

 思いがけず再会を果たしたわたし達は、今までのことをお互い話し合い、一緒に住むことを決めた。

「2階はわたしが使っているので、3階でその娘と暮らしたらいかがですか? その娘を一緒に立派に育てましょうよ。きっと、わたし達はとてもいい家族になれます」






 それからわたしとお母様は一緒に暮らしている。その少女は正式にわたしの養女になり、ジェラルディンと名付けられた。わたしの親友の名前だ。この娘を大事に育てることは、仲間への供養にもなる気がした。

 ジェラルディンにわたしの護身術の全てを教え、今では汗を流しに頻繁にやって来るジョバンナ小隊長も、なぜか投げナイフの特訓をジェラルディンにさせている。

「ジョバンナ小隊長、ジェラルディンにさせようとしてませんよねぇ? あの子は危険な目に遭わせたくないですよ。それに真っ直ぐな性格のとても良い子です」

「もちろんさ。とても良い子だし素質がある」

「・・・・・・なんのですか? 事と次第によっては、いくらジョバンナ小隊長でも許しませんよっ」
 わたしは思わず威嚇する。

「ジェラルディンを侍女にさせたいな、と思ってね。淑女教育も受けさせて一代限りの男爵位を授ける。それで、聖女様がお産みになった2番目のお嬢様サンドリーヌ様の護衛侍女に推薦したい。これはとても名誉なことだよ」

「聖女様・・・・・・だって、あの方は、わたしやお母様を嫌いですよね? そんなわたし達が養女として育てたジェラルディンを、サンドリーヌ嬢のお側に置くことをお許しになりますか?」

「実は、これは聖女様からのお願いなんだ」
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