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9 ワイアットの末路
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(ワイアット視点)
僻地に追いやられ楽しい遊びもなくつまらないことばかりだ。弟に家督を奪われて虚弱体質と噂された僕には、縁談もこないし気持ちは荒むばかりさ。
ろくにお金も寄越さないドケチな弟を恨みながら暇つぶしの方法を考える。お金がなければ女性を買うこともできないのに。でも・・・・・・考えたらここは僻地とはいえエズルバー伯爵領だ。僕は領主の実兄なのだから好きに振る舞ってもいいんじゃないかな。この土地に住んでいる村娘は僕が自由にしても注意できる奴はいない。弟は遠く離れたマナーハウス(本邸)にいるのだし、領民を脅せばあいつの耳には入らないはずさ。
それから僕は昼間に屋敷の周りを散策し、このあたりに住む娘達の品定めをした。あまり綺麗な子はいなかったけれど仕方がないさ。わりとマシな娘を二人選んで自宅をつきとめた。尾行したわけじゃないさ、本当さ。
夜中になってからつきとめた家に訪問し、脅してその娘を自分のものにしようとした。
「お願いです。娘には婚約者がいてお互い愛し合っております。もうすぐ結婚式も控えておりますれば、無体なことをなさいますな」
「うるさい! 僕のいうことが聞けないなら、この地に住むことはできないぞ。僕の弟がこの土地の領主なんだからな」
「お願いです。勘弁してください。お願いします」
うるさく縋り付く娘の父親を足蹴りにし、娘の弟を殴りつけた。
「僕に逆らったら死刑にしてやるからな。弟と僕はとても仲が良いし、弟は僕の言いなりなのだ」
ところが、娘の部屋に入って押し倒そうとした瞬間、ぞっとするような寒気が背中を走った。外を見ると大きなコウモリが睨んでいて、鋭い殺気が伝わってくる。
コウモリと目が合った途端、身体の力が抜けた。気がつけば自分の部屋に帰っており脱力感だけが残っている。首筋に見つけた牙の痕に驚愕し、それから僕は監視されているように感じた。弟が来て精神病を疑われたので、このことは誰にも言えないでいるけれど、明らかに見張られているのだ。
目をつけた村娘のところに行こうとすると、必ずコウモリがやって来て邪魔をする。
「頼むから僕の好きにさせてくれよ。もう、ずいぶん女性と話しもしていないんだ。ちょっとぐらい良いじゃないか。減るもんじゃないし、村娘の一人くらい何をしても許されるはずだろう?」
「清々しいクズですわねぇ。だったら私の専属おやつにしてあげますわ。お前は面白いほど邪悪で勝手な人間だから、その血がとても甘いのよね。この世界とヴァンパイアの世界との狭間に私の別邸があります。そこで私に仕えなさい」
ずっと恋い焦がれていたカトレア様が目の前に現れた。
「カトレア様がダークな存在?」
質問してもミステリアスな微笑みだけを浮かべている彼女の目が怪しく光った。首筋に牙が食い込むと僕はうっとりと目を閉じた。
「おやつでもなんでもあなたの側にいられるなら本望です」
「まぁ、側になんかいられるわけないじゃない? 私はいつだって愛おしい妹の側にいたいのだもの。お前はただの食い物よ。でも、安定したゲスって貴重だから大事にしてあげてよ」
「はい、ありがとうございます」
僕のご主人様になったカトレア様が嬉しそうにお笑いになったから僕も笑う。ダークな存在の隷属になった僕は、もう自分の意志を持たない。薄らいでいく意識のなかでは、もうなにも考えることはできないのだ。
ただカトレア様のことだけで頭はいっぱいだ。そう、僕は今とても幸せだ。
(カトレア視点)
珍しく愚かで邪悪で自分勝手な男を手に入れた。おやつ兼ペットとして別邸で飼うことに決めたわ。愚かで邪悪な者ほどその血は甘くて美味しいのだもの。当分楽しめるから私はご機嫌よ。
これで皆がハッピーになれたと思う。ワイアットはもう自分の意志がなくなり、よだれを垂らして犬のように這いつくばっているけれど、至福の笑みを漏らしているからきっと幸せなのよ。
完
僻地に追いやられ楽しい遊びもなくつまらないことばかりだ。弟に家督を奪われて虚弱体質と噂された僕には、縁談もこないし気持ちは荒むばかりさ。
ろくにお金も寄越さないドケチな弟を恨みながら暇つぶしの方法を考える。お金がなければ女性を買うこともできないのに。でも・・・・・・考えたらここは僻地とはいえエズルバー伯爵領だ。僕は領主の実兄なのだから好きに振る舞ってもいいんじゃないかな。この土地に住んでいる村娘は僕が自由にしても注意できる奴はいない。弟は遠く離れたマナーハウス(本邸)にいるのだし、領民を脅せばあいつの耳には入らないはずさ。
それから僕は昼間に屋敷の周りを散策し、このあたりに住む娘達の品定めをした。あまり綺麗な子はいなかったけれど仕方がないさ。わりとマシな娘を二人選んで自宅をつきとめた。尾行したわけじゃないさ、本当さ。
夜中になってからつきとめた家に訪問し、脅してその娘を自分のものにしようとした。
「お願いです。娘には婚約者がいてお互い愛し合っております。もうすぐ結婚式も控えておりますれば、無体なことをなさいますな」
「うるさい! 僕のいうことが聞けないなら、この地に住むことはできないぞ。僕の弟がこの土地の領主なんだからな」
「お願いです。勘弁してください。お願いします」
うるさく縋り付く娘の父親を足蹴りにし、娘の弟を殴りつけた。
「僕に逆らったら死刑にしてやるからな。弟と僕はとても仲が良いし、弟は僕の言いなりなのだ」
ところが、娘の部屋に入って押し倒そうとした瞬間、ぞっとするような寒気が背中を走った。外を見ると大きなコウモリが睨んでいて、鋭い殺気が伝わってくる。
コウモリと目が合った途端、身体の力が抜けた。気がつけば自分の部屋に帰っており脱力感だけが残っている。首筋に見つけた牙の痕に驚愕し、それから僕は監視されているように感じた。弟が来て精神病を疑われたので、このことは誰にも言えないでいるけれど、明らかに見張られているのだ。
目をつけた村娘のところに行こうとすると、必ずコウモリがやって来て邪魔をする。
「頼むから僕の好きにさせてくれよ。もう、ずいぶん女性と話しもしていないんだ。ちょっとぐらい良いじゃないか。減るもんじゃないし、村娘の一人くらい何をしても許されるはずだろう?」
「清々しいクズですわねぇ。だったら私の専属おやつにしてあげますわ。お前は面白いほど邪悪で勝手な人間だから、その血がとても甘いのよね。この世界とヴァンパイアの世界との狭間に私の別邸があります。そこで私に仕えなさい」
ずっと恋い焦がれていたカトレア様が目の前に現れた。
「カトレア様がダークな存在?」
質問してもミステリアスな微笑みだけを浮かべている彼女の目が怪しく光った。首筋に牙が食い込むと僕はうっとりと目を閉じた。
「おやつでもなんでもあなたの側にいられるなら本望です」
「まぁ、側になんかいられるわけないじゃない? 私はいつだって愛おしい妹の側にいたいのだもの。お前はただの食い物よ。でも、安定したゲスって貴重だから大事にしてあげてよ」
「はい、ありがとうございます」
僕のご主人様になったカトレア様が嬉しそうにお笑いになったから僕も笑う。ダークな存在の隷属になった僕は、もう自分の意志を持たない。薄らいでいく意識のなかでは、もうなにも考えることはできないのだ。
ただカトレア様のことだけで頭はいっぱいだ。そう、僕は今とても幸せだ。
(カトレア視点)
珍しく愚かで邪悪で自分勝手な男を手に入れた。おやつ兼ペットとして別邸で飼うことに決めたわ。愚かで邪悪な者ほどその血は甘くて美味しいのだもの。当分楽しめるから私はご機嫌よ。
これで皆がハッピーになれたと思う。ワイアットはもう自分の意志がなくなり、よだれを垂らして犬のように這いつくばっているけれど、至福の笑みを漏らしているからきっと幸せなのよ。
完
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教会に行かない⇒宗教が違うだけ。十字架は平気。
⋆ ✩ 。˚ ⋆
·̩͙ . ᘏ▸◂ᘏ .·̩͙ ✩ おは☆こんちわぁ★こんばんわ☆
⋆ ꒰ ɞ̴̶̷ ·̮ ɞ̴̶̷ ꒱ 。 ˚
。 ଘ_(")(") ˚ ✩
‘’ꕤ’’’’’’’’’’’ꕤ’’’’’’’’ꕤ
そそ
カトレアってニンニク食べても多分苦しまなさそーー🤭
うん、十字架も多分平気wWw𐤔ʷ 🤣ّ ʷ𐤔wW
ダークな存在も多分進化してるよねぇーー
妄想設定、ありがとうございます(❛ᗜ❛*ૢ)ʾʾ。.*・
おもしろかった~🤣
いいお話だった~👏👏🥰
∩🌼∩
。 *(๑ᴖ◡ᴖ๑).*
*。.(つ🌸🌸・.゚*
∪∪🌸.。*゚・。
゚。*゚🌼おはよぉ🌼
感想ぁㇼゕ̎と੭່ごㄜ¨ぃますਭෆ❛ั◡❛ัෆ✩⃛*⁎
面白かったと言っていただけてよかったです
褒めてもらって嬉しいですぅーー(๑˙❥˙๑)ウフ
💎*💛🎀.❤.🎀💛*💎
❤. Have a nice day.♥
💗*☀🌻.❤.🌻☀*💗
完結おめでとう㊗御座います!
ヨダレ犬( ・д・` )ウワァ…キチャナイ
娘さん達が汚されなくて良かったよ。
(*´ω`*)
感想ありがとうございます!😄
>ヨダレ犬( ・д・` )ウワァ…キチャナイ
うん、綺麗じゃないよね
えんがちょ
>娘さん達が汚されなくて良かったよ。(*´ω`*)
昔とかだと、村娘さんとか領主一族の毒牙にかかることも多かったでしょうね💦
ほんと、汚されなくて良かったです(^^)v