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15 カラハン王子の恋
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こちらはカラハン第一王子が暮らすサファイア城である。チェルシー王妃主催のお茶会から3年の月日が流れていた。ちなみに、チェルシー王妃は1年ほど前から病で寝込んでおり、表に姿を現すことがめっきり減っていた。
「マッキンタイヤー公爵領で、今ものすごい人気の化粧品があるのですよ。貴婦人から村娘まで、それが欲しくて何時間も前から並ぶそうです。私もそれを妹に買ってやりたくて並んだのですが、ちょうど私の前で品切れになりました。カラハン殿下の威光でなんとかお願いしますよ」
カラハン第一王子の前で、拝むように手を合わせているのは彼の側近で、乳母の長男ジュードだった。
「マッキンタイヤー公爵とはあまり交流がない。第一王子派と第二王子派とにわかれる貴族たちのなかで、あの方だけは中立の立場を貫いているからな」
「でしたら、アナスターシア様にお近づきになったらいかがですか。3年ほど前のチェルシー王妃主催のお茶会で、特に美しかった令嬢ですよ。マッキンタイヤー公爵が溺愛なさっているそうです」
「知っているさ。今はマッキンタイヤー公爵邸で暮らしていると聞いた」
「幼い頃のアナスターシア様の噂は最悪なものがありましたが、どうやらあれはデマのようでしたね。マッキンタイヤー公爵領から聞こえてくる領民の声は、アナスターシア様を褒めるものばかりです。身分も釣り合いますし、カラハン殿下にぴったりのお相手ではないでしょうか? 王位に就くのにも強力な後ろ盾は必要です。マッキンタイヤー公爵は英雄ですからね」
「王位か。特に興味はないのだ。この国を平和に治めてくれるのであれば、弟が王太子になっても私は構わない」
「だめです! ハーランド第二王子殿下はサディストですよ。あいつは間違いなく王位に就いたら民たちをアリンコのように踏みつけることでしょう」
「アリンコ? ハーランドは動物を可愛がる優しい弟だと思っていた。チェルシー王妃の猫はとてもハーランドに懐いているぞ」
「だれだって自分の母親の猫に意地悪はしませんよ。つい先日のことですが、私はハーランド第二王子殿下が裏庭を水浸しにしているのを見ました。アリの巣を水攻めにして喜んでいたのですよ。ニヤニヤと笑いながらですよ?」
「そうなのかい? ハーランドは私が寝込んでいると、必ずフルーツを持って見舞いに来てくれる優しさがあるのだが」
「あぁ、あれは演技ですね。カラハン殿下が苦手なメロンやスイカだけ持ってくるなんて、わざととしか考えられません。カラハン殿下は瓜科の果物を食べると唇が赤く腫れるでしょう? それをわかって持ってくるのです」
「そこまでにしておけ。ハーランドは母親が違っても私の弟だ。今はチェルシー王妃も寝込んでいるし、母親を心配して元気がないようだ。あまり悪く言っては気の毒だろう? そんなことより、化粧品だな。マッキンタイヤー公爵になんとか頼んでみよう」
カラハン第一王子はそう言って苦笑した。王族であるからこそ、無駄に兄弟で争うことはしたくないと考えていた。
今は戦時下ではないため、将軍職に就いているマッキンタイヤー公爵は領地でのんびりと生活をしている。以前は王都に来ることも多かったが、このところずっと領地に引きこもっていた。今では溺愛する姪と一緒に住んでいることは、誰もが知るところとなっていた。
「3年前であの美貌でしたから、13歳となった今では、ますます磨きがかかっているでしょうね。きっとすごい美人になっていますよ」
ジュードの顔は赤く染まり、夢見るような目つきになった。
「やれやれ、ジュードは面食いなのだな。美しさなんて面の皮一枚のことだろう? 大事なのは内面だよ。心の状態が顔にも出てくる。どんなに美しくても心が醜ければ、顔も醜く歪んでくるのさ」
「カラハン殿下のように眉目秀麗な方がそのようにおっしゃると、とてつもなく格好いいです。私のような並みの者がそう言うと、美しい者への妬みにとられますからね」
ジュードがそう言ったのも無理はない。
カラハン第一王子は黄金色の髪を持ち、そのエメラルドグリーンの瞳は澄みきった湖のようだった。高い鼻筋が彼の顔立ちに一層の気品を与えており、その瞳には深い知性と優しさが宿っていた。病弱なために少し細身ではあるが、背が高く、その姿勢には王族としての威厳が漂っていた。また、その麗しい顔立ちは彫刻のように整っており、彼の微笑みは神々しいほど美しかったのだ。
☆彡 ★彡
季節は秋、ちょうど収穫祭が行われる時期に、カラハン第一王子はマッキンタイヤー公爵領に向かった。王都から5日から6日もかかる道のりであった。
マッキンタイヤー公爵領に足を踏み入れた日は、ちょうどお祭りだった。それは、領民たちの努力と自然の恵みに感謝するためのもので、領地全体が活気に溢れていた。
お祭りは公爵領の中央広場で行われ、広場には収穫された穀物や果物、野菜が並び、美しい飾り付けが施された。広場の周りには屋台やステージが設置され、多くのイベントが行われた。
カラハン第一王子が目指すマッキンタイヤー公爵邸は、中央広場を抜けて少し馬車を走らせたところにある。
カラハン第一王子が馬車から広場を覗くと、長い銀髪を風になびかせた少女が弓を構えていた。周囲の喧騒が一瞬静まり返る。彼女の冷静な表情と鋭い眼差しに、観客たちの期待が高まっているようだった。矢が放たれると、真っ直ぐに飛び、的の中央に見事に命中した。広場は歓声と拍手に包まれ、人々はその腕前に驚嘆した。もちろん、カラハン第一王子も心の中で賞賛していた。
「せっかくだからここで少し見物していこう」
カラハン第一王子は馬車を止めさせた。
やがて広場の中央ステージで剣舞が披露される時間が訪れた。銀髪の美少女は艶やかな衣装を身にまとい、優雅な動きで舞台に立った。黄金の剣を手に取り、彼女の舞いはまるで風のように滑らかでありながら、力強さも兼ね備えていた。観客は息を呑み、その華麗な舞いに見入っていた。剣の煌めきとともに、彼女の舞いは一層華やかさを増し、広場はまたしても一瞬にして静寂に包まれた。
その後、その美しい姿に見とれていた幼い子供たちが、銀髪の美少女を取り囲み、美しい衣装に手を伸ばした。子供たちの手には屋台で買った串焼きのソースなどがついていた。彼女の衣装は遠慮のない子供の手でベタベタと触られ、すっかり汚れてしまった。それでもにこにこと微笑んでおり、衣装が汚れたことなど気にもしていなかった。
「あの美しい少女は誰だい?」
カラハン第一王子は観衆の一人に声をかけた。
「あの方はマッキンタイヤー公爵様の姪御様ですよ。未来のマッキンタイヤー女公爵様です」
「あぁ、言われてみれば確かにカッシング侯爵令嬢だな。三年も経つと女性はずいぶん変わるのだな」
「ここでは未来のマッキンタイヤー女公爵様と言われておりますよ。あの方は領民にとても好かれていますのでね。それに、この地ではカッシング侯爵はあまり良く思われていません。バイオレッタ様が亡くなってすぐに再婚なさったからですよ」
マッキンタイヤー公爵領の領民の声を聞きながら、カラハン第一王子は、依然としてアナスターシアから目を離すことができなかった。
無邪気な質問やお願いに優しく耳を傾け、幼い子供たちと目線を合わせるように、アナスターシアがしゃがみこむ。
「アナスターシア様。私も大きくなったらアナスターシア様のように美人になれる?」
「もちろん、美人になれますとも。きっと、私よりずっとチャーミングな女性になると思うわ」
「そんな綺麗な服を私も着てみたい」
「私がこのマッキンタイヤー公爵領をもっと豊かな土地にして、みんなが綺麗な服を着ることができるように頑張るわね」
ひとりひとりに、優しく答えていく姿に領民たちは感激していた。
「マッキンタイヤー公爵家は安泰さね。立派な跡継ぎがいらっしゃるから。アナスターシア様はカッシング侯爵家にお戻りにならなければ良いのに。あちらには継母とその連れ子がいるらしいじゃないか? きっと居心地が悪い思いをなさって、こちらに来られたのよ」
「もしかしたら意地の悪い人たちなのかもしれないね。あたしらの未来の領主様を虐める人間は敵だよ」
アナスターシアを守ると言い切る領民たちの声に、カラハン第一王子は温かい気持ちになった。これほど領民に慕われるアナスターシアに感動すらしたのだ。
「カラハン殿下。アナスターシア嬢にお声をかけられたらいかがですか?」
「いや、このままマッキンタイヤー公爵に会いに行く。アナスターシア嬢と領民との交流を邪魔したくないのだ。彼女はここの人たちにとって希望の星さ。大事な未来の領主様なのだ」
カラハン第一王子は穏やかに微笑んだ。いつもと変わらない笑顔ではあったが、わずかながらに頬と耳が赤らんでいた。その変化に気づいたのはジュードだけだった。
(カラハン殿下はどうやらアナスターシア嬢に一目惚れか? これはぜひとも応援しなければ!)
ジュードは楽しげに口笛を吹いたのだった。
「マッキンタイヤー公爵領で、今ものすごい人気の化粧品があるのですよ。貴婦人から村娘まで、それが欲しくて何時間も前から並ぶそうです。私もそれを妹に買ってやりたくて並んだのですが、ちょうど私の前で品切れになりました。カラハン殿下の威光でなんとかお願いしますよ」
カラハン第一王子の前で、拝むように手を合わせているのは彼の側近で、乳母の長男ジュードだった。
「マッキンタイヤー公爵とはあまり交流がない。第一王子派と第二王子派とにわかれる貴族たちのなかで、あの方だけは中立の立場を貫いているからな」
「でしたら、アナスターシア様にお近づきになったらいかがですか。3年ほど前のチェルシー王妃主催のお茶会で、特に美しかった令嬢ですよ。マッキンタイヤー公爵が溺愛なさっているそうです」
「知っているさ。今はマッキンタイヤー公爵邸で暮らしていると聞いた」
「幼い頃のアナスターシア様の噂は最悪なものがありましたが、どうやらあれはデマのようでしたね。マッキンタイヤー公爵領から聞こえてくる領民の声は、アナスターシア様を褒めるものばかりです。身分も釣り合いますし、カラハン殿下にぴったりのお相手ではないでしょうか? 王位に就くのにも強力な後ろ盾は必要です。マッキンタイヤー公爵は英雄ですからね」
「王位か。特に興味はないのだ。この国を平和に治めてくれるのであれば、弟が王太子になっても私は構わない」
「だめです! ハーランド第二王子殿下はサディストですよ。あいつは間違いなく王位に就いたら民たちをアリンコのように踏みつけることでしょう」
「アリンコ? ハーランドは動物を可愛がる優しい弟だと思っていた。チェルシー王妃の猫はとてもハーランドに懐いているぞ」
「だれだって自分の母親の猫に意地悪はしませんよ。つい先日のことですが、私はハーランド第二王子殿下が裏庭を水浸しにしているのを見ました。アリの巣を水攻めにして喜んでいたのですよ。ニヤニヤと笑いながらですよ?」
「そうなのかい? ハーランドは私が寝込んでいると、必ずフルーツを持って見舞いに来てくれる優しさがあるのだが」
「あぁ、あれは演技ですね。カラハン殿下が苦手なメロンやスイカだけ持ってくるなんて、わざととしか考えられません。カラハン殿下は瓜科の果物を食べると唇が赤く腫れるでしょう? それをわかって持ってくるのです」
「そこまでにしておけ。ハーランドは母親が違っても私の弟だ。今はチェルシー王妃も寝込んでいるし、母親を心配して元気がないようだ。あまり悪く言っては気の毒だろう? そんなことより、化粧品だな。マッキンタイヤー公爵になんとか頼んでみよう」
カラハン第一王子はそう言って苦笑した。王族であるからこそ、無駄に兄弟で争うことはしたくないと考えていた。
今は戦時下ではないため、将軍職に就いているマッキンタイヤー公爵は領地でのんびりと生活をしている。以前は王都に来ることも多かったが、このところずっと領地に引きこもっていた。今では溺愛する姪と一緒に住んでいることは、誰もが知るところとなっていた。
「3年前であの美貌でしたから、13歳となった今では、ますます磨きがかかっているでしょうね。きっとすごい美人になっていますよ」
ジュードの顔は赤く染まり、夢見るような目つきになった。
「やれやれ、ジュードは面食いなのだな。美しさなんて面の皮一枚のことだろう? 大事なのは内面だよ。心の状態が顔にも出てくる。どんなに美しくても心が醜ければ、顔も醜く歪んでくるのさ」
「カラハン殿下のように眉目秀麗な方がそのようにおっしゃると、とてつもなく格好いいです。私のような並みの者がそう言うと、美しい者への妬みにとられますからね」
ジュードがそう言ったのも無理はない。
カラハン第一王子は黄金色の髪を持ち、そのエメラルドグリーンの瞳は澄みきった湖のようだった。高い鼻筋が彼の顔立ちに一層の気品を与えており、その瞳には深い知性と優しさが宿っていた。病弱なために少し細身ではあるが、背が高く、その姿勢には王族としての威厳が漂っていた。また、その麗しい顔立ちは彫刻のように整っており、彼の微笑みは神々しいほど美しかったのだ。
☆彡 ★彡
季節は秋、ちょうど収穫祭が行われる時期に、カラハン第一王子はマッキンタイヤー公爵領に向かった。王都から5日から6日もかかる道のりであった。
マッキンタイヤー公爵領に足を踏み入れた日は、ちょうどお祭りだった。それは、領民たちの努力と自然の恵みに感謝するためのもので、領地全体が活気に溢れていた。
お祭りは公爵領の中央広場で行われ、広場には収穫された穀物や果物、野菜が並び、美しい飾り付けが施された。広場の周りには屋台やステージが設置され、多くのイベントが行われた。
カラハン第一王子が目指すマッキンタイヤー公爵邸は、中央広場を抜けて少し馬車を走らせたところにある。
カラハン第一王子が馬車から広場を覗くと、長い銀髪を風になびかせた少女が弓を構えていた。周囲の喧騒が一瞬静まり返る。彼女の冷静な表情と鋭い眼差しに、観客たちの期待が高まっているようだった。矢が放たれると、真っ直ぐに飛び、的の中央に見事に命中した。広場は歓声と拍手に包まれ、人々はその腕前に驚嘆した。もちろん、カラハン第一王子も心の中で賞賛していた。
「せっかくだからここで少し見物していこう」
カラハン第一王子は馬車を止めさせた。
やがて広場の中央ステージで剣舞が披露される時間が訪れた。銀髪の美少女は艶やかな衣装を身にまとい、優雅な動きで舞台に立った。黄金の剣を手に取り、彼女の舞いはまるで風のように滑らかでありながら、力強さも兼ね備えていた。観客は息を呑み、その華麗な舞いに見入っていた。剣の煌めきとともに、彼女の舞いは一層華やかさを増し、広場はまたしても一瞬にして静寂に包まれた。
その後、その美しい姿に見とれていた幼い子供たちが、銀髪の美少女を取り囲み、美しい衣装に手を伸ばした。子供たちの手には屋台で買った串焼きのソースなどがついていた。彼女の衣装は遠慮のない子供の手でベタベタと触られ、すっかり汚れてしまった。それでもにこにこと微笑んでおり、衣装が汚れたことなど気にもしていなかった。
「あの美しい少女は誰だい?」
カラハン第一王子は観衆の一人に声をかけた。
「あの方はマッキンタイヤー公爵様の姪御様ですよ。未来のマッキンタイヤー女公爵様です」
「あぁ、言われてみれば確かにカッシング侯爵令嬢だな。三年も経つと女性はずいぶん変わるのだな」
「ここでは未来のマッキンタイヤー女公爵様と言われておりますよ。あの方は領民にとても好かれていますのでね。それに、この地ではカッシング侯爵はあまり良く思われていません。バイオレッタ様が亡くなってすぐに再婚なさったからですよ」
マッキンタイヤー公爵領の領民の声を聞きながら、カラハン第一王子は、依然としてアナスターシアから目を離すことができなかった。
無邪気な質問やお願いに優しく耳を傾け、幼い子供たちと目線を合わせるように、アナスターシアがしゃがみこむ。
「アナスターシア様。私も大きくなったらアナスターシア様のように美人になれる?」
「もちろん、美人になれますとも。きっと、私よりずっとチャーミングな女性になると思うわ」
「そんな綺麗な服を私も着てみたい」
「私がこのマッキンタイヤー公爵領をもっと豊かな土地にして、みんなが綺麗な服を着ることができるように頑張るわね」
ひとりひとりに、優しく答えていく姿に領民たちは感激していた。
「マッキンタイヤー公爵家は安泰さね。立派な跡継ぎがいらっしゃるから。アナスターシア様はカッシング侯爵家にお戻りにならなければ良いのに。あちらには継母とその連れ子がいるらしいじゃないか? きっと居心地が悪い思いをなさって、こちらに来られたのよ」
「もしかしたら意地の悪い人たちなのかもしれないね。あたしらの未来の領主様を虐める人間は敵だよ」
アナスターシアを守ると言い切る領民たちの声に、カラハン第一王子は温かい気持ちになった。これほど領民に慕われるアナスターシアに感動すらしたのだ。
「カラハン殿下。アナスターシア嬢にお声をかけられたらいかがですか?」
「いや、このままマッキンタイヤー公爵に会いに行く。アナスターシア嬢と領民との交流を邪魔したくないのだ。彼女はここの人たちにとって希望の星さ。大事な未来の領主様なのだ」
カラハン第一王子は穏やかに微笑んだ。いつもと変わらない笑顔ではあったが、わずかながらに頬と耳が赤らんでいた。その変化に気づいたのはジュードだけだった。
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