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17 スタインフェルド男爵視点
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「おっ、お姉様。なぜここにいらっしゃったのですか? スネイプ侯爵閣下の連れってどういうことでしょうか? その男性はどなたですか? まさかワトキンさんを裏切っていたのですか? 子供までいるのにはしたない! マリアンお姉様を見損ないました」
妻のテリーザはすっかり取り乱していた。このダメ姉を今まで支えてきたのだから怒るのも当たり前だ。
「人妻のくせにそのような男と連れだって、我が屋敷に来るとは見下げ果てた女だな。スネイプ侯爵閣下、このような者達とお知り合いなはずないでしょう? なにかのお間違いでは?」
わたしはスネイプ侯爵閣下に尋ねた。
だって、おかしいだろう? なぜ怠け者のマリアンなんかと知り合いなんだ?
私たちがなおもマリアンを批判していると、マリアンのバックから一匹の子猫が顔をのぞかせた。それがシャァーと威嚇しながらテレーゼと私の顔を引っ掻いていく。頬がヒリヒリと痛み、涙目になった。
「こんのぉーー、くそ猫。ただじゃおかないぞ」
子猫を捕まえきつく締めあげようとすると、スネイプ侯爵夫人の平手が飛んできた。
「可愛い猫ちゃんになんてことするのです! 動物愛護協会に通報しますよ! マリアンさんに酷いことを言うから引っ掻かれたのですわ。自業自得です」
なぜ、引っ掻かれたわたしが怒られるのだ? おかしいよ。
「見下げ果てた女というのはそこにいるスタインフェルド男爵夫人だと思うがね。それに比べてマリアンさんは素晴らしい女性だと思う」
さらに、思いがけず妻の悪口をスネイプ侯爵閣下に言われて、相手が高位貴族だということも失念し、抗議の声をあげた。
「なんの根拠があってそのようなことをおっしゃるのですか? そこのマリアンは仕事もせず遊びまわっていたと聞いています。そうだろう? テリーザ。スネイプ侯爵閣下に説明しなさい。そちらの男性に忠告したい。そこのマリアンには夫がいますし、家の仕事を妹に押し付ける怠け者ですよ」
「わたしの大事な女性を侮辱しないでいただきたい。マリアンさんの夫とスタインフェルド男爵夫人がとても仲が良いのをご存じですか?」
素晴らしく容姿の良い男性が不快そうな表情を浮かべてわたしの妻を睨む。まるで毛虫でも見るような眼差しに心底気分が悪くなった。
「わたしの妻をそれ以上侮辱するのなら名誉毀損で訴えますよ。テリーザは誰よりも心優しい貞淑で可愛い自慢の妻なのです!」
「ほぉ、このわたしを訴える? わたしはスネイプ侯爵の弟だ。自分よりも上位の貴族を訴えるなんて度胸があるな?」
「スネイプ侯爵閣下の弟君? で、でも、家督を継いでいないならどうせ平民だろう? わたしはスタインフェルド男爵だ」
「あぁ、残念。わたしは母方のマコーレ子爵を継いでいる。つまり君よりは上だ」
「そ、そんなぁ。なぜマリアンがこんな高貴な方達と知り合いなんだ? ただの怠け者の身の程しらずな妹泣かせの非道な姉ですよ。テリーザはお金も融通したし時間だって不当に奪われた。毎日のようにノースカット画廊に手伝いに行ってたのがなによりの証拠です」
「なっ、なんの証拠があって私がワトキンさんと良い仲だなんて言うのですか? 酷い侮辱です。スネイプ侯爵夫人だってそう思いますよね?」
「いいえ。あなたは軽蔑すべき女性だと思いますし、私はマリアンさんとは親友になろうと決めています」
「あっははは。こんな虚言癖のあるお姉様と親友になる? マリアンお姉様の言うことは信じてはいけませんわ。いったいなにを吹き込まれたのか知りませんが、お姉様は髪飾りを作って小銭を稼ぐしか脳がない嘘つきです」
その瞬間、テリーザの頭に水が落ちて来た。ファーガソン画廊でわたしが体験したときと同じだし、ノースカット画廊でもアンやマヤにおかしな水が落ちてきた状況と似ている。あの不思議な水は毛がびょんびょん伸びるもので、彼女達の顔は数時間ごとに剃らなければ眉毛も鼻毛も顎まで届く。今もその効き目は薄れず、彼女達は常に顔そりカミソリを携帯していた。
テリーザの顔が毛むくじゃらになったら大変だ! どうしよう!
「マリアンって画家をご存じ?」
「スネイプ侯爵夫人、もちろん知ってますわ。今、どこに行っても彼女の話題で持ちきりだもの」
「ふふふ。それはあなたのお姉様ですよ」
「・・・・・・」
言葉を失って呆然とするテレーゼをクスクスと笑いながら、スネイプ侯爵閣下の弟と名乗るイケメンがペーパーウエイトの底にあるボタンを押した。
男女の会話が流れて、それが次第に色めいた声に変わっていく。その声がまさかのワトキンと妻テレーゼの声だった。男女が愛をかわす密やかなる愛の旋律が部屋いっぱいに響き渡る。
うっ、嘘だろう?
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「おっ、お姉様。なぜここにいらっしゃったのですか? スネイプ侯爵閣下の連れってどういうことでしょうか? その男性はどなたですか? まさかワトキンさんを裏切っていたのですか? 子供までいるのにはしたない! マリアンお姉様を見損ないました」
妻のテリーザはすっかり取り乱していた。このダメ姉を今まで支えてきたのだから怒るのも当たり前だ。
「人妻のくせにそのような男と連れだって、我が屋敷に来るとは見下げ果てた女だな。スネイプ侯爵閣下、このような者達とお知り合いなはずないでしょう? なにかのお間違いでは?」
わたしはスネイプ侯爵閣下に尋ねた。
だって、おかしいだろう? なぜ怠け者のマリアンなんかと知り合いなんだ?
私たちがなおもマリアンを批判していると、マリアンのバックから一匹の子猫が顔をのぞかせた。それがシャァーと威嚇しながらテレーゼと私の顔を引っ掻いていく。頬がヒリヒリと痛み、涙目になった。
「こんのぉーー、くそ猫。ただじゃおかないぞ」
子猫を捕まえきつく締めあげようとすると、スネイプ侯爵夫人の平手が飛んできた。
「可愛い猫ちゃんになんてことするのです! 動物愛護協会に通報しますよ! マリアンさんに酷いことを言うから引っ掻かれたのですわ。自業自得です」
なぜ、引っ掻かれたわたしが怒られるのだ? おかしいよ。
「見下げ果てた女というのはそこにいるスタインフェルド男爵夫人だと思うがね。それに比べてマリアンさんは素晴らしい女性だと思う」
さらに、思いがけず妻の悪口をスネイプ侯爵閣下に言われて、相手が高位貴族だということも失念し、抗議の声をあげた。
「なんの根拠があってそのようなことをおっしゃるのですか? そこのマリアンは仕事もせず遊びまわっていたと聞いています。そうだろう? テリーザ。スネイプ侯爵閣下に説明しなさい。そちらの男性に忠告したい。そこのマリアンには夫がいますし、家の仕事を妹に押し付ける怠け者ですよ」
「わたしの大事な女性を侮辱しないでいただきたい。マリアンさんの夫とスタインフェルド男爵夫人がとても仲が良いのをご存じですか?」
素晴らしく容姿の良い男性が不快そうな表情を浮かべてわたしの妻を睨む。まるで毛虫でも見るような眼差しに心底気分が悪くなった。
「わたしの妻をそれ以上侮辱するのなら名誉毀損で訴えますよ。テリーザは誰よりも心優しい貞淑で可愛い自慢の妻なのです!」
「ほぉ、このわたしを訴える? わたしはスネイプ侯爵の弟だ。自分よりも上位の貴族を訴えるなんて度胸があるな?」
「スネイプ侯爵閣下の弟君? で、でも、家督を継いでいないならどうせ平民だろう? わたしはスタインフェルド男爵だ」
「あぁ、残念。わたしは母方のマコーレ子爵を継いでいる。つまり君よりは上だ」
「そ、そんなぁ。なぜマリアンがこんな高貴な方達と知り合いなんだ? ただの怠け者の身の程しらずな妹泣かせの非道な姉ですよ。テリーザはお金も融通したし時間だって不当に奪われた。毎日のようにノースカット画廊に手伝いに行ってたのがなによりの証拠です」
「なっ、なんの証拠があって私がワトキンさんと良い仲だなんて言うのですか? 酷い侮辱です。スネイプ侯爵夫人だってそう思いますよね?」
「いいえ。あなたは軽蔑すべき女性だと思いますし、私はマリアンさんとは親友になろうと決めています」
「あっははは。こんな虚言癖のあるお姉様と親友になる? マリアンお姉様の言うことは信じてはいけませんわ。いったいなにを吹き込まれたのか知りませんが、お姉様は髪飾りを作って小銭を稼ぐしか脳がない嘘つきです」
その瞬間、テリーザの頭に水が落ちて来た。ファーガソン画廊でわたしが体験したときと同じだし、ノースカット画廊でもアンやマヤにおかしな水が落ちてきた状況と似ている。あの不思議な水は毛がびょんびょん伸びるもので、彼女達の顔は数時間ごとに剃らなければ眉毛も鼻毛も顎まで届く。今もその効き目は薄れず、彼女達は常に顔そりカミソリを携帯していた。
テリーザの顔が毛むくじゃらになったら大変だ! どうしよう!
「マリアンって画家をご存じ?」
「スネイプ侯爵夫人、もちろん知ってますわ。今、どこに行っても彼女の話題で持ちきりだもの」
「ふふふ。それはあなたのお姉様ですよ」
「・・・・・・」
言葉を失って呆然とするテレーゼをクスクスと笑いながら、スネイプ侯爵閣下の弟と名乗るイケメンがペーパーウエイトの底にあるボタンを押した。
男女の会話が流れて、それが次第に色めいた声に変わっていく。その声がまさかのワトキンと妻テレーゼの声だった。男女が愛をかわす密やかなる愛の旋律が部屋いっぱいに響き渡る。
うっ、嘘だろう?
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