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1 気絶した私
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「ハイジ! 君の誕生日にぜひ見せたいものがあるんだ!」
私がアパートに帰るなり、はしゃぎながら駆け寄ってきた夫。
「え? なぁに? 私、今とても疲れているのよ。夜勤で患者さんのお世話をしていて、くたくただわ。寝かせてちょうだいよ」
私は夫のハリーに頼んだけれど聞く耳を持たない。
「なんてわがままなのさ! 僕がハイジの為にどうしても見て欲しいのに、この優しい気持ちがわからないのかい?」
目をつりあげて怒る夫に私もしぶしぶと従った。
馬車で30分ほどの距離に大層立派な豪邸が建っていた。
「じゃぁじゃぁああ~~ん! この家に入ってみてよぉ~~」
「へ? なに、これ? 誰の家なの?」
「さぁ、まずは中に入って!」
私が中に入るとそこにいたのは夫の両親と義姉だった。
「あらぁ~~ずいぶん、遅かったのねぇ? さぁ、皆でお祝いしましょう?」
その家の廊下には手すりがついていたしキッチンの流しはやけに低い。どうやら私より頭一つ分背が低い義母や義姉の身長にあわせて作られているようだった。
「さぁ、ハイジさん! こっちの部屋を見てちょうだい」
義母が満面の笑みで1階を案内して回った。リビングの横にある部屋にはすでに義母の荷物が運び込まれており、かなり広い部屋だ。
「ここは私専用の部屋なのよ。どう? 素敵でしょう?」
「はぁ。すごいですねぇ」
私は義母の自慢めいた口調に苦笑しながらもうなづいた。
続きの間には義父のゴルフ道具と趣味の釣り道具が並べられていた。
「ここは夫の趣味の部屋で、この奥の部屋が私達の寝室なのよ」
義母は嬉しそうに微笑んだけれど、私は早く家に帰って寝たい思いでいっぱいだった。
ところが夫は一向に帰る気配もなく、満面の笑みを浮かべて2階を案内しようとする。義姉は夫の身体を優しく押しのけて、
「あぁ、ハリーじゃなくて2階はあたしが案内するわねぇ~~! さぁ、上がってぇ~~」
いそいそと階段を鼻歌まじりに上がっていった。
「真ん中の部屋はこれから産まれる子供部屋よ。で右端があたしの部屋。左端はあたしの犬と猫と鳥の部屋。あたし、夫からペットが多すぎるって怒られちゃったのよ。だから離婚しようと思って家出してきちゃった。だって犬や猫を減らせって言うのよ? 酷いと思わない?」
左端の部屋には犬と猫が3匹ずつ。鳥は5羽もいたのだった。おまけに義姉のお腹には子供がいる。私だって動物は好きだけれど飼う数には限度というものがある。
義姉の夫の気持ちもわからないでもないが、義両親はそうは思っていないようだった。
「そんな男とは別れてここに住めばいいのよ。ここは広いし部屋も余っているし」
にこにこと微笑む義母はどこまでも義姉に甘い母親なのだった。
「3階は僕が案内するよ。ほら、見てよ。空に限りなく近いでしょう? 天窓から夜空の星を眺めたらとても良い夢が見られそうだよ」
夫のハリーはうっとりしながら空を見上げた。ただし、今は朝方で空には星なんてひとつもない。
3階は確かに眺めはいいけれど空に限りなく近いなんて大げさすぎる。あまり広くないそこは屋根裏部屋のような空間で半分以上が物干しスペースになっていた。
「はぁーー。とてもすばらしい家をお建てになったのですね? こんな立派な家がよく建てられましたねぇ?」
私の言った言葉に義両親は、耳障りな声で笑い出した。
「なにを言っているのよ? この家はハイジさんが建てたのよ? あなたとハリーの家じゃないのぉ~~」
「はぁ~~!?」
夜勤明けの私は眠さとショックで気を失ったのだった。
私がアパートに帰るなり、はしゃぎながら駆け寄ってきた夫。
「え? なぁに? 私、今とても疲れているのよ。夜勤で患者さんのお世話をしていて、くたくただわ。寝かせてちょうだいよ」
私は夫のハリーに頼んだけれど聞く耳を持たない。
「なんてわがままなのさ! 僕がハイジの為にどうしても見て欲しいのに、この優しい気持ちがわからないのかい?」
目をつりあげて怒る夫に私もしぶしぶと従った。
馬車で30分ほどの距離に大層立派な豪邸が建っていた。
「じゃぁじゃぁああ~~ん! この家に入ってみてよぉ~~」
「へ? なに、これ? 誰の家なの?」
「さぁ、まずは中に入って!」
私が中に入るとそこにいたのは夫の両親と義姉だった。
「あらぁ~~ずいぶん、遅かったのねぇ? さぁ、皆でお祝いしましょう?」
その家の廊下には手すりがついていたしキッチンの流しはやけに低い。どうやら私より頭一つ分背が低い義母や義姉の身長にあわせて作られているようだった。
「さぁ、ハイジさん! こっちの部屋を見てちょうだい」
義母が満面の笑みで1階を案内して回った。リビングの横にある部屋にはすでに義母の荷物が運び込まれており、かなり広い部屋だ。
「ここは私専用の部屋なのよ。どう? 素敵でしょう?」
「はぁ。すごいですねぇ」
私は義母の自慢めいた口調に苦笑しながらもうなづいた。
続きの間には義父のゴルフ道具と趣味の釣り道具が並べられていた。
「ここは夫の趣味の部屋で、この奥の部屋が私達の寝室なのよ」
義母は嬉しそうに微笑んだけれど、私は早く家に帰って寝たい思いでいっぱいだった。
ところが夫は一向に帰る気配もなく、満面の笑みを浮かべて2階を案内しようとする。義姉は夫の身体を優しく押しのけて、
「あぁ、ハリーじゃなくて2階はあたしが案内するわねぇ~~! さぁ、上がってぇ~~」
いそいそと階段を鼻歌まじりに上がっていった。
「真ん中の部屋はこれから産まれる子供部屋よ。で右端があたしの部屋。左端はあたしの犬と猫と鳥の部屋。あたし、夫からペットが多すぎるって怒られちゃったのよ。だから離婚しようと思って家出してきちゃった。だって犬や猫を減らせって言うのよ? 酷いと思わない?」
左端の部屋には犬と猫が3匹ずつ。鳥は5羽もいたのだった。おまけに義姉のお腹には子供がいる。私だって動物は好きだけれど飼う数には限度というものがある。
義姉の夫の気持ちもわからないでもないが、義両親はそうは思っていないようだった。
「そんな男とは別れてここに住めばいいのよ。ここは広いし部屋も余っているし」
にこにこと微笑む義母はどこまでも義姉に甘い母親なのだった。
「3階は僕が案内するよ。ほら、見てよ。空に限りなく近いでしょう? 天窓から夜空の星を眺めたらとても良い夢が見られそうだよ」
夫のハリーはうっとりしながら空を見上げた。ただし、今は朝方で空には星なんてひとつもない。
3階は確かに眺めはいいけれど空に限りなく近いなんて大げさすぎる。あまり広くないそこは屋根裏部屋のような空間で半分以上が物干しスペースになっていた。
「はぁーー。とてもすばらしい家をお建てになったのですね? こんな立派な家がよく建てられましたねぇ?」
私の言った言葉に義両親は、耳障りな声で笑い出した。
「なにを言っているのよ? この家はハイジさんが建てたのよ? あなたとハリーの家じゃないのぉ~~」
「はぁ~~!?」
夜勤明けの私は眠さとショックで気を失ったのだった。
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