(完結)婚約破棄して気づいた気持ちを受け取ってという貴方・・・

青空一夏

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ウィリアム王子の判決(アメリア視点)

「王子様の処分は、しばらくお待ちください」

 宰相様の声に伯母様は、片方の眉をつり上げた。明らかに不快そうな表情に、お母様もお父様もはらはらしている。伯母様は、目を細めて宰相様をじっと見つめた。

「貴方が、かつての私の恋人だったことは、遠い昔の話だ。私の王子に対する処分は、誰も止めることはできない。この王子も、ダイヤモンド鉱山で働けばよい。このような愚か者が次期王になってはこの国は終わりだ。王家の血筋のもっとまともな者を新たに後継者にすれば良い。それが民の為にもなろう。ウィリアム王子よ。お前の王子としての地位も貴族の地位も剥奪とする!」

「それは、いけません! この王子は、おそらくサマンサ様から良からぬ術をかけられています。今までの愚かな振る舞いが魔法のせいであったなら、どうして本人だけを責めることができましょう? サマンサ様も捕らえたうえで、事の真相を把握なさって、公正な判断をお願いしたい」
 
 伯母様の迫力に、躊躇もせずにきっぱりと言い切った様は、流石としか言えない。その言葉をうけて、叔母様は
ゆっくりと、王子様に近づき、その瞳を覗き込んだ。

「・・・・・・これは、間違いなく禁忌の”魅了の魔法”だな。腑抜けになっていたのは、これのせいもあるな・・・・・・ 小賢しい術を使ったものよ。ウィリアム王子よ。私の目を見つめ心のなかで唱えるのだ」

『誰にも支配されない心を復活させたまえ! 私は自分自身で考え行動する自由を奪わせない。 ”魅了の魔法”から私は解放される』

 伯母様が紡いだ言葉を、繰り返し王子様は復唱する。その間ずっと、伯母様は王子の頭上から”蒼い光のシャワー”を降らせた。

 
 その後、王子様は、初めて私を優しい眼差しで見つめて謝罪したのだった。

「済まない。本当に、申し訳ないことをしてしまった。どう償っていいものか、わからない・・・・・・」

 王子は、私に跪いた。

「今すぐ、なかったことにはできません。ですが、謝罪は受け入れましょう。今後、立派な王になられるようお祈りしております」

(もう、この王子様と私の人生の道が交わることはないだろう。けれど、魔法で侵された意識のもとでの非礼なら王子様だけの責任ではないはず)

「王子よ。宰相と私の姪に感謝するが良い。貴方の処分は保留にしょう。今後の一年、貴方の行いを私はこの国にいて、しかと監視しておるぞ! その経過を見てから判決を下すとしよう。宰相もアメリアも、この私の判断に異論はあるまい」

「もちろんですわ!」

 私は、柔らかく微笑んだ。

「ご明断でございます! 蒼の称号をもつ魔女様に祝福あれ」

 宰相様は深く頷き、伯母様に跪き手の甲にキスをした。

 その光景に、お母様とお父様は悪戯っぽい微笑を浮かべた。

「しかし、この王子が娘にしたことを考えると、今ひとつ、すっきりしないな」

 お父様はお母様に、ぼそぼそと呟いた。お母様も、その点は同意するらしく頷いていた。

「エリザベスお姉様。いくら、”魅了の魔法”にかかっていたとしても、傷つけられた愛娘の母としてはいまひとつ、すっきりしませんわ」

「うむ、わかっているさ。だからこその、一年の保留だ。この判定は厳しいものとなる。自らを戒め、言動に気をつけ、毎日を無駄なく精進しなければ、私は一年後必ず王子を炭鉱に送る。その判断にはエリヤン子爵家の者の評価も加味される。これで、どうかな?」

「えぇ、悪くないです。エリヤン子爵家は、ウィリアム王子の言動を一つ残らず見ていましょう。そして、今後は二度と、私の娘の近づくことがないよう望みます」

 お母様のその最後の言葉に、王子様は悲しげな表情を浮かべながら私の顔を見つめたのだった。

(なぜ、今さら、そんな顔をして私を見るの?)

 伯母様は、なおも言葉を続けた。

「さて、王子の処分は一年の保留だ。その間、血も吐くような努力をすれば炭鉱行きは免れる。次は、サマンサ・ジャクソン公爵令嬢に移るとしようか。まずは、その女狐を捕まえなければな」

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