（完）家族に逆らえなかった夫が泣きついてきました……妹と従姉妹を優先してきたのは貴方ですよね？

5 秘密の会話

　ヴィセンテ家具店から少しばかり離れた場所に、豪奢な馬車がとまっていた。その馬車はきらびやかな装飾が施され、馬は艶々とした毛並みをなびかせて、御者の服も高価な生地で作られていることがわかる。


　そこに、ゆったりと座っている紳士は老人と言ってもいい年代だが、眼光はするどく威厳に満ちた顔つきは近寄りがたいほどの風格を備えていた。

　隣の若い男は、歳の頃は20代前半といったところか……金髪碧眼の美青年で、その老紳士になにやら報告をしていた。





「あの子は元気なのか？」

「えぇ、元気というか……大丈夫です。私が守ります」

「……例の件にヴィセンテ男爵家が関わっているのは、間違いないんだな？」

「はい」

「そうか……証拠を掴みしだい、あの子を連れてくるように……」

「はい、お祖父様」

　そんな会話が、短い時間でさっとかわされ、若い男は馬車を降り老貴族を乗せた馬車は走り去って行く。

　若い男は、そのままヴィセンテ家具店の裏口から建物の中に消えていった。



☆彡★彡☆彡




　一方、老紳士を乗せた豪奢な馬車はどんどんと走り進み、大きな門の前で止まる。

「アーヴィング公爵様、お帰りなさいませ」

　門番は最敬礼をし、そのまま馬車は門の中へと消えていった。