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18 オズワルドの因果応報-2
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レティシアからの手紙――彼女が私を恋しく思う言葉が綴られていると期待していた。だが、そこにあったのは……
レティシアが率いるオックスリー商会は、異国からの希少なヴィンテージワインや蒸留酒、上質なドレス用生地や紳士服用生地、高品質な鞍や手綱などの馬具に馬車、高級食器や銀製品、希少なスパイスや食材など、数え切れないほどの商品を取り扱っていた。
ルーベルト公爵家は、これまでこれらの商品を親族価格で掛け売りにより調達していた。しかし、離縁により、通常価格かつ即時支払いを求められることとなったのだ。
「やばい……。そうだった。当たり前になっていて、すっかり忘れていた……」
請求書には、ルーベルト公爵家が購入した品々の詳細が整然と記されていた。中でも目を引くのは、カミーユが求めた香水や化粧品、精緻な刺繍が施された高級ドレス生地、そして私が嗜んでいたヴィンテージワインだ。その通常価格を目の当たりにし、思わず息を呑んだ。
「これほど高価だったのか? 私は毎食、こんなにも高価なワインを嗜んでいたのか?一本5金貨程度と認識していたが、実際には20金貨もする代物だったとは……。しかも、毎日1本、ときには2本、3本と開けていたのに……」
「今までが身の程知らずだったんですよっ! 一日1本だけでも、年間7,300金貨になります。たかがワインだけでね。安いワインを飲んでいたら良かったものを……」
マリーの態度は明らかに変わっていた。レティシアがいた頃は礼儀正しい侍女だったが、今は苛立ちを隠さず、言葉遣いもぞんざいだ。レティシアが出て行ってからは、ずっとこんな調子だった。
請求書には手紙も添えられ、こう記されていた。
今までは仕入れ価格で取引させていただきましたが、すでに家族ではなくなった以上、優遇措置は改めさせていただきます。
なんてことだ……。私はいかに贅沢な生活を当たり前としていたか、今になって愕然とした。
執事のエミールを呼び、手紙の内容を確認させ、ルーベルト公爵家の帳簿と照らし合わせた。すると、レティシア自身のために使われた商品は請求から除外されていた。
「さすが奥様でございますね。あの方は何事にもきちんとなさるお方でしたから、ご自身に関わるものは除外されたのでしょう。本来であれば、ルーベルト公爵夫人であった時期のものなどは、こちらに請求できるお立場ですのに」
「これが通常価格なのか? こんなにも高価だったとは……」
エミールは一瞬、小馬鹿にしたような薄笑いを浮かべ、心底私を間抜けだと思っているような目で見た。思わずムッとした私が声を荒げる。
「私は生粋の貴族だ。生活必需品の一般的な価格など知るわけがないだろう?」
「知らなきゃいけなかったんですよ、あなたはね。私は何度も報告しようとしましたよね? でも、あなたはいつものらりくらりと遊びほうけ、聞く耳を持たなかったじゃないですか」
エミールはそう吐き捨てると、あらかじめ荷物をまとめていたのだろう。「辞めます」と一言だけ告げ、トランク一つでルーベルト公爵家を去った。
執事や侍女長といった有能な者たちが次々と去り、残されたのは使い物にならない使用人ばかり。新たに雇おうにも――。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※「オズワルドのざまぁ、まだ足りないぞ」、と思う方は💓をお願いします!
※ 1金貨=現代日本でいえば1万。
※5金貨=5万、20金貨=20万、7,300金貨=7,300万。つまり、ワインだけでこの金額。しかもこれ一日1本と換算した額なので、毎食飲めば……
※宣伝です。
「死に戻りの悪女、公爵様の溺愛になりました」が先日完結しました。王太子のざまぁは、日曜日の夕方に投稿予定です。どうぞ、お暇があれば、お立ち寄りください!
レティシアが率いるオックスリー商会は、異国からの希少なヴィンテージワインや蒸留酒、上質なドレス用生地や紳士服用生地、高品質な鞍や手綱などの馬具に馬車、高級食器や銀製品、希少なスパイスや食材など、数え切れないほどの商品を取り扱っていた。
ルーベルト公爵家は、これまでこれらの商品を親族価格で掛け売りにより調達していた。しかし、離縁により、通常価格かつ即時支払いを求められることとなったのだ。
「やばい……。そうだった。当たり前になっていて、すっかり忘れていた……」
請求書には、ルーベルト公爵家が購入した品々の詳細が整然と記されていた。中でも目を引くのは、カミーユが求めた香水や化粧品、精緻な刺繍が施された高級ドレス生地、そして私が嗜んでいたヴィンテージワインだ。その通常価格を目の当たりにし、思わず息を呑んだ。
「これほど高価だったのか? 私は毎食、こんなにも高価なワインを嗜んでいたのか?一本5金貨程度と認識していたが、実際には20金貨もする代物だったとは……。しかも、毎日1本、ときには2本、3本と開けていたのに……」
「今までが身の程知らずだったんですよっ! 一日1本だけでも、年間7,300金貨になります。たかがワインだけでね。安いワインを飲んでいたら良かったものを……」
マリーの態度は明らかに変わっていた。レティシアがいた頃は礼儀正しい侍女だったが、今は苛立ちを隠さず、言葉遣いもぞんざいだ。レティシアが出て行ってからは、ずっとこんな調子だった。
請求書には手紙も添えられ、こう記されていた。
今までは仕入れ価格で取引させていただきましたが、すでに家族ではなくなった以上、優遇措置は改めさせていただきます。
なんてことだ……。私はいかに贅沢な生活を当たり前としていたか、今になって愕然とした。
執事のエミールを呼び、手紙の内容を確認させ、ルーベルト公爵家の帳簿と照らし合わせた。すると、レティシア自身のために使われた商品は請求から除外されていた。
「さすが奥様でございますね。あの方は何事にもきちんとなさるお方でしたから、ご自身に関わるものは除外されたのでしょう。本来であれば、ルーベルト公爵夫人であった時期のものなどは、こちらに請求できるお立場ですのに」
「これが通常価格なのか? こんなにも高価だったとは……」
エミールは一瞬、小馬鹿にしたような薄笑いを浮かべ、心底私を間抜けだと思っているような目で見た。思わずムッとした私が声を荒げる。
「私は生粋の貴族だ。生活必需品の一般的な価格など知るわけがないだろう?」
「知らなきゃいけなかったんですよ、あなたはね。私は何度も報告しようとしましたよね? でも、あなたはいつものらりくらりと遊びほうけ、聞く耳を持たなかったじゃないですか」
エミールはそう吐き捨てると、あらかじめ荷物をまとめていたのだろう。「辞めます」と一言だけ告げ、トランク一つでルーベルト公爵家を去った。
執事や侍女長といった有能な者たちが次々と去り、残されたのは使い物にならない使用人ばかり。新たに雇おうにも――。
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※5金貨=5万、20金貨=20万、7,300金貨=7,300万。つまり、ワインだけでこの金額。しかもこれ一日1本と換算した額なので、毎食飲めば……
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