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21 ルーファスの幸せ-1
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※ざまぁばかりで食傷気味かと思いますので、ルーファスの幸せを先に書きます。ルーファスを心配する声も多かったので。早めに投稿してしまいました。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
ぼくは、いい子だって言われたかった。
泣いたり、わがままを言ったりしたら、お母さまの具合が悪くなるから、いつも静かにしていた。
屋敷は広いだけで、ちっともきれいじゃなかった。
庭の花は枯れていて、草が好き勝手に生えていた。廊下にはほこりが積もり、壁紙もところどころ破れて、めくれたままになっていた。
「メイドが足りない」
そう言いながら、マリーはよくため息をついていた。
マリーは、ぼくのことが好きじゃないんだと思う。目が合ってもすぐに逸らされるし、世話はしてくれるけど、優しい声をかけてくれたことなんて一度もない。
お父さまは……きっと、ぼくのことなんて見えていない。
名前を呼ばれた記憶もないし、一緒に食事をしたこともない。
ぼくの存在は、お父さまにとって、いてもいなくても同じなのかもしれない。
お母さまが死んで、しばらくしてから、ぼくたちは屋敷を出た。
行く場所はなくて、夜は橋の下や、建物の影で寝た。
雨が降ると、とても冷たかった。マリーは自分のコートをぎゅっと体に巻きつけて、ぼくのことは見ようともしなかった。
お父さまは黙ったまま、背を向けていた。
食べ物もほとんどなくて、お腹が鳴っても、誰も何も言わなかった。まるで、ぼくなんて最初からいなかったみたいに。
そんなある日、お父さまが突然、ぼくに手紙を持たせた。
「レティシア会長に会ったら、その手紙を渡しなさい」
そう言って、手を引いて歩き出した。
着いたのは、大きな建物の前だった。
立派なのに、なんだかこわくて、ぼくなんて入っちゃいけない場所みたいに思えた。
胸がきゅっと縮こまって、体がもっと小さくなった気がした。
後ろを振り向くと、もうお父さまもマリーもいない。
入口の扉はひときわ大きくて、魔道具で自動的に開く仕組みになっていた。
でも、それは「認識された者」だけが通れる仕掛けだと、あとで知った。
ぼくは扉の前で、ただ立っているしかできない。
どうしよう。ちゃんと、会長さんに会わせてもらえるのかな?。
不安で一歩も動けずにいると、後ろから、やわらかな声がした。
「あら、坊や。こんなところでなにをしているの? ここはね、大人がお仕事をする場所なのよ。お父様とお母様はどこ?」
びっくりして振り向くと、キラキラと銀色に光る髪の、きれいな女の人が立っていた。
すみれ色のひとみに見とれていると、その人はあまい香りのする小さなキャンディを、ぼくの手にそっとのせてくれた。
「れ、れちしあ……かいちょうさんに、あの……あいたいの……」
「まぁ! レティシア会長は私よ」
そのきれいな人は、ぼくに、にっこりとほほえんでくれたんだ。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
ぼくは、いい子だって言われたかった。
泣いたり、わがままを言ったりしたら、お母さまの具合が悪くなるから、いつも静かにしていた。
屋敷は広いだけで、ちっともきれいじゃなかった。
庭の花は枯れていて、草が好き勝手に生えていた。廊下にはほこりが積もり、壁紙もところどころ破れて、めくれたままになっていた。
「メイドが足りない」
そう言いながら、マリーはよくため息をついていた。
マリーは、ぼくのことが好きじゃないんだと思う。目が合ってもすぐに逸らされるし、世話はしてくれるけど、優しい声をかけてくれたことなんて一度もない。
お父さまは……きっと、ぼくのことなんて見えていない。
名前を呼ばれた記憶もないし、一緒に食事をしたこともない。
ぼくの存在は、お父さまにとって、いてもいなくても同じなのかもしれない。
お母さまが死んで、しばらくしてから、ぼくたちは屋敷を出た。
行く場所はなくて、夜は橋の下や、建物の影で寝た。
雨が降ると、とても冷たかった。マリーは自分のコートをぎゅっと体に巻きつけて、ぼくのことは見ようともしなかった。
お父さまは黙ったまま、背を向けていた。
食べ物もほとんどなくて、お腹が鳴っても、誰も何も言わなかった。まるで、ぼくなんて最初からいなかったみたいに。
そんなある日、お父さまが突然、ぼくに手紙を持たせた。
「レティシア会長に会ったら、その手紙を渡しなさい」
そう言って、手を引いて歩き出した。
着いたのは、大きな建物の前だった。
立派なのに、なんだかこわくて、ぼくなんて入っちゃいけない場所みたいに思えた。
胸がきゅっと縮こまって、体がもっと小さくなった気がした。
後ろを振り向くと、もうお父さまもマリーもいない。
入口の扉はひときわ大きくて、魔道具で自動的に開く仕組みになっていた。
でも、それは「認識された者」だけが通れる仕掛けだと、あとで知った。
ぼくは扉の前で、ただ立っているしかできない。
どうしよう。ちゃんと、会長さんに会わせてもらえるのかな?。
不安で一歩も動けずにいると、後ろから、やわらかな声がした。
「あら、坊や。こんなところでなにをしているの? ここはね、大人がお仕事をする場所なのよ。お父様とお母様はどこ?」
びっくりして振り向くと、キラキラと銀色に光る髪の、きれいな女の人が立っていた。
すみれ色のひとみに見とれていると、その人はあまい香りのする小さなキャンディを、ぼくの手にそっとのせてくれた。
「れ、れちしあ……かいちょうさんに、あの……あいたいの……」
「まぁ! レティシア会長は私よ」
そのきれいな人は、ぼくに、にっこりとほほえんでくれたんだ。
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