[完結]愛する人たちに裏切られた私は……

青空一夏

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33 レティシアの幸せ-10

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 ――どうにも最近の会長は、様子がおかしい。

 執務室に入って最初に感じるのは、あの凛とした空気が、少し揺れていること。
 デスクに座ってはいるけれど、視線は書類に向かわず、どこか遠くを見ている。
 スケジュールを読み上げても、返事がワンテンポ遅れるし、明らかに集中していない。

 昼食も、ここ数日まともに口をつけていない。
 商館内の食堂メニューがどれだけ完璧でも、パンとメインディッシュが手つかずのままじゃ意味がない。
 スープだけなんて……病人かっての。

 頬はすっかりこけて、クマがはっきり浮かんでる。
 あのレティシア会長がよ? いったい、何があったっていうの!

 ――いや、わかってる。原因なんて、火を見るより明らか。

 あのゴシップ誌。『ロイヤルミュール・トゥデイ』の最新号。

 ノルディアン大公、ついに結婚か!?
 お相手は、公国社交界の花――若き名門貴族令嬢!

 休憩室に置かれてた一冊を、私は何気なく会長に渡したの。
「こんなの嘘ばかりですね。ノルディアン大公が好きなのは、会長に決まってるのに」
 そう言って、笑い合いたかっただけなのよ。

 まさか、あんなに真に受けるなんて思わなかった。

 ――そう、会長は恋愛に免疫がない。全然ない。
 だからこそ、嘘だって分かる記事に、本気で傷ついちゃった。

 その日から、会長の足取りがほんの少し重くなって、言葉数が減って、笑顔が消えて……
 仕事はこなしているけど、どこか機械的で。
 ボスらしくない。まるで――

 失恋したばかりの思春期の少女じゃないの!

 困ったわ。……どうしよう?

 私はユリウスに相談してみた。
 そしたら、「あれは大公の作戦勝ちですよ」なんて、涼しい顔で言うのよ。

 ……作戦? なによそれ。そんな駆け引きするタイプなの? ノルディアン大公って。腹黒かっ!
まぁ、最愛のレティシア会長を手に入れるには、手段は選ばなそう。

 ここは、すんなりレティシア会長とくっついてもらいますか……

「ボス、ノルディアン公国に仕事入りましたから、すぐ発ちましょう」
「……嫌よ。行きたくないわ」
「ノルディアン大公に会って、真実を確かめるんです! まったく……あんなゴシップ誌を真に受けるなんて。こうなったら――従業員みんなで慰安旅行にしますからねっ!」

  ふふっ、ルーファスちゃんも、連れて行っちゃおう!

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