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35 レティシアの幸せ-12
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私は、ノルマンディー大公からの告白に自ら返事をしなかったにもかかわらず、往来で彼を責めてしまった。今、大公にお姫様抱っこをされているが、恥ずかしくてたまらない。
お城に着いても、私は大公の膝の上に座らされ続けており、とても落ち着かない。そこへ、貴族社会のゴシップ誌『ロイヤルミュート・トゥデイ』に掲載されていた若い女性が紅茶を持って現れた。
「あなたは、雑誌でノルマンディー大公と一緒に写っていた方ですよね?」
「はい。私はアリサ・ハクスリーと申します。ハクスリー伯爵家の次女でございます。そして、大公閣下の秘書を務めております。現在、あの雑誌社とは訴訟中ですの。なにしろ、私の婚約者のレイモンドがすっかり怒っておりまして」
「婚約者?」
「ええ、大公の後ろに立っている男性、彼が私の婚約者ですわ」
「え? 近衛騎士?」
私の目に映ったのは、近衛騎士の制服を纏った筋肉隆々の男性だった。彼はにっこりと微笑んでいるが、その眼光は鋭く威圧感がある。
「近衛騎士団長のレイモンドと申します。アリサの婚約者でもあります。実は、あの写真には続きがありまして。大公閣下、早くお見せして、誤解を解かれた方がよろしいかと」
ノルマンディー大公は静かに頷き、私を抱きかかえてサロンから書斎へと向かった。大きなデスクから一枚の絵写を取り出すと、私の髪にそっとキスを落とし、その絵写を私の手に渡した。私を抱えたまま元のサロンへと戻る。
私は、その絵写をじっと見つめた。それは、雑誌に掲載されたものには含まれていない部分まで写っていた。アリサ様の隣には、レイモンド近衛騎士長が立っている。さらに、大公が優しく視線を向けていたのは、アリサ様のドレスの裾に抱きついている5歳くらいの少女だった。その少女の横で膝をつき、微笑んでいるのは、ノルマンディー大公の妹、シェリル様。以前、他の雑誌で見たことがある方だ。どうやら、この少女はシェリル様の子供らしい。
つまり、あの記事は全くのねつ造。嘘だらけのいい加減なものだった。
「そう、つまり私の視線は実は姪に向いているのですが、角度によってはアリサを見ているように映る。側にいた人々を意図的に削っているのですよ。ですから、あの雑誌社には即日抗議をし、現在訴訟中です。レイモンド、私、そしてアリサの両親も原告となっています」
「えっ……大公様が仕組んだのではなかったんですか? てっきり……」
ビッキーの小さな呟きを、ノルマンディー大公は聞き逃さなかった。もちろん、私も。
「それは少々心外だな。私がそのような策を弄するとお思いか? 確かにレティシア嬢のことは愛しているが、部下二人を巻き込んでまでそんなことをするわけがないだろう? 現に今、訴訟中だ」
――え? ビッキーったら、そんなことを思っていたの?
「そんなことより、いつお二人はご結婚されますの? そうだ、一緒に合同結婚式などいかがでしょう? あんなくだらない記事が大嘘だということを、全世界に発信できますわ」
アリサ様は、心躍るような口調で提案した。
「いや、私はレティシア嬢と二人きりで神秘的な結婚式をするつもりだ。もちろん、レティシア嬢が望むなら、どんな結婚式でもいい」
ノルマンディー大公は、甘く蕩けるような笑顔を私に向けた。
「いいえ、大公閣下。ここは四人で……」
アリサ様は、四人での結婚式をしきりに提案している。
私はようやく我に返り、ノルマンディー大公の膝からそっと降ろしてもらった。次の瞬間、顔を真っ赤にしながら、思わず叫んでしまった。
だって、だって……
「私、まだノルマンディー大公から正式に結婚を申し込まれていません!」
あ、これって催促したみたい? 恥ずかしい……
。:+* ゚ ゜゚ *+:。。:+* ゚ ゜゚ *+:。
※次話:結婚式の予定です!
お城に着いても、私は大公の膝の上に座らされ続けており、とても落ち着かない。そこへ、貴族社会のゴシップ誌『ロイヤルミュート・トゥデイ』に掲載されていた若い女性が紅茶を持って現れた。
「あなたは、雑誌でノルマンディー大公と一緒に写っていた方ですよね?」
「はい。私はアリサ・ハクスリーと申します。ハクスリー伯爵家の次女でございます。そして、大公閣下の秘書を務めております。現在、あの雑誌社とは訴訟中ですの。なにしろ、私の婚約者のレイモンドがすっかり怒っておりまして」
「婚約者?」
「ええ、大公の後ろに立っている男性、彼が私の婚約者ですわ」
「え? 近衛騎士?」
私の目に映ったのは、近衛騎士の制服を纏った筋肉隆々の男性だった。彼はにっこりと微笑んでいるが、その眼光は鋭く威圧感がある。
「近衛騎士団長のレイモンドと申します。アリサの婚約者でもあります。実は、あの写真には続きがありまして。大公閣下、早くお見せして、誤解を解かれた方がよろしいかと」
ノルマンディー大公は静かに頷き、私を抱きかかえてサロンから書斎へと向かった。大きなデスクから一枚の絵写を取り出すと、私の髪にそっとキスを落とし、その絵写を私の手に渡した。私を抱えたまま元のサロンへと戻る。
私は、その絵写をじっと見つめた。それは、雑誌に掲載されたものには含まれていない部分まで写っていた。アリサ様の隣には、レイモンド近衛騎士長が立っている。さらに、大公が優しく視線を向けていたのは、アリサ様のドレスの裾に抱きついている5歳くらいの少女だった。その少女の横で膝をつき、微笑んでいるのは、ノルマンディー大公の妹、シェリル様。以前、他の雑誌で見たことがある方だ。どうやら、この少女はシェリル様の子供らしい。
つまり、あの記事は全くのねつ造。嘘だらけのいい加減なものだった。
「そう、つまり私の視線は実は姪に向いているのですが、角度によってはアリサを見ているように映る。側にいた人々を意図的に削っているのですよ。ですから、あの雑誌社には即日抗議をし、現在訴訟中です。レイモンド、私、そしてアリサの両親も原告となっています」
「えっ……大公様が仕組んだのではなかったんですか? てっきり……」
ビッキーの小さな呟きを、ノルマンディー大公は聞き逃さなかった。もちろん、私も。
「それは少々心外だな。私がそのような策を弄するとお思いか? 確かにレティシア嬢のことは愛しているが、部下二人を巻き込んでまでそんなことをするわけがないだろう? 現に今、訴訟中だ」
――え? ビッキーったら、そんなことを思っていたの?
「そんなことより、いつお二人はご結婚されますの? そうだ、一緒に合同結婚式などいかがでしょう? あんなくだらない記事が大嘘だということを、全世界に発信できますわ」
アリサ様は、心躍るような口調で提案した。
「いや、私はレティシア嬢と二人きりで神秘的な結婚式をするつもりだ。もちろん、レティシア嬢が望むなら、どんな結婚式でもいい」
ノルマンディー大公は、甘く蕩けるような笑顔を私に向けた。
「いいえ、大公閣下。ここは四人で……」
アリサ様は、四人での結婚式をしきりに提案している。
私はようやく我に返り、ノルマンディー大公の膝からそっと降ろしてもらった。次の瞬間、顔を真っ赤にしながら、思わず叫んでしまった。
だって、だって……
「私、まだノルマンディー大公から正式に結婚を申し込まれていません!」
あ、これって催促したみたい? 恥ずかしい……
。:+* ゚ ゜゚ *+:。。:+* ゚ ゜゚ *+:。
※次話:結婚式の予定です!
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