[完結]愛する人たちに裏切られた私は……

青空一夏

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36 レティシアの幸せ−13

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 澄み渡る青空の下、今日は私の結婚式。人生で最高に幸せな日が始まろうとしている。

 厳かに響く鐘の音が、ノルディアン公国の城塔の上から鳴り渡った。
 目の前にそびえるのは、金と白を基調とした荘厳な大聖堂。その姿はまるで、天へと祈りを捧げるように伸び、太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。

 扉が開かれる。私は、足を踏み入れた。
 高く広がる天井。そこには精巧な細工が施された水晶のシャンデリアが吊るされているが、昼間の今は静かにその存在を示している。
 祭壇の奥から差し込む陽光がステンドグラスを透かし、床に美しい虹の模様を描いていた。

 私は、ゆっくりと歩を進めた。
 ──そう、これはただの結婚式じゃない。ノルディアン公国の未来を賭けた、「大公妃戴冠の儀」。
 私の人生を決定づける、最初で最後の「婚礼」だ。

 視線が一斉に注がれているのを感じる。
 公国の貴族たち、祖国グランセリカ王国の面々、遠方から訪れた使節団――そして、長年私を支えてくれたオックスリー商会の人々。

 その中には、もちろんユリウスの姿もあった。彼はいつもと変わらぬ落ち着いた笑顔で、「仕事ではこれからも支えますよ」と軽く言ってくれた。
 そして最後に、「何より、レティシア様の幸せが一番です」と、心からの祝福を贈ってくれたのだ。

 そんな彼ら全員が、今、息を呑むようにしてこちらを見つめていた。
 
 胸の奥に、わずかな緊張が残っていた。
 けれど、ノルディアン大公が愛しさをたたえた瞳で見つめ、そっと微笑んでくれた瞬間――その柔らかな笑顔に包まれるようにして、私は少しずつ落ち着きを取り戻していった。



 私のドレスは、オックスリー商会傘下の仕立て屋たちが、丹精込めて仕立ててくれたものだ。柔らかな絹が幾重にも重ねられ、淡い金糸の刺繍が光を受けて静かに輝いている。身にまとう感触は驚くほど軽やかで、まるで羽根のようだった。

 けれど、心のどこかにずしりと重さを感じていた。
 それはこのドレスの重みではなく――今日、私は大公妃になる。
 この国を背負う者として歩む、その責任の重さだった。

 でも、不思議と足取りは軽かった。
 過去の涙も痛みも、すべてが私の背中を押している。だからこそ、私は前を向いて歩ける。

「レティシア、汝はこの国の未来を担う大公妃たる者として、ここに誓いを立てるか」

 司祭の声が大聖堂に響き渡る。私は、真っ直ぐにノルディアン大公の目を見つめて、誓う。
 迷いなど、もうひとつもなかった。

「はい。私、レティシアは……ノルディアン大公閣下と、この国と、そして民に誓います。命尽きるその日まで、共に歩み、守り抜くと」

 大聖堂に、一拍の静寂。
 次の瞬間、花びらが舞った。天井から舞い落ちた薔薇の花びらが、私の肩に、髪に降り注ぐ。
 そして、ノルディアン大公が近づいてくる。

 「……美しいな」

 その言葉は、他の誰にも聞こえないほど小さく、でも私の胸にはっきりと届いた。

 私は彼の手を取り、かつて感じたことのないほどの喜びを胸いっぱいに抱きしめる。
 こんな日が本当に来るなんて、夢のようで――でも、確かに私は今、ここにいる。

 あの日々があったからこそ、私はここまで来られた。
 裏切りも、痛みも、不安も。何度も立ち止まりそうになったけれど、それでも諦めずに、自分自身を信じて歩いてきた。
 そのすべてが、今、報われた気がした。

 ノルディアン大公の隣に立つことは、ただの幸せではない。
 この国の未来を共に担うという、大きな責任を意味する。
 けれど私は、もう迷わない。
 彼となら、どんな道でも歩いていけると、心からそう思えるから。

 大聖堂に、祝福の鐘が何度も鳴り響く。
 金糸のドレスが光を受けて揺れ、花の舞う中、私たちは一歩、未来へと踏み出した。

 ──これが、私の物語の結末。
 私は、大好きな人と結ばれて、幸せになった。
 


本編完結
⊹ ࣪˖ ┈ ┈ ˖ ࣪⊹ ┈ ┈ ⊹ ࣪˖ ┈ ┈ ˖ ࣪⊹

あと数話、結婚後のレティシアたちの様子や、ユリウスの恋なども描いていくかもしれないので、本編完結としておきますね。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
たくさんの❤️や応援、感想も感謝しております。
引き続き、お読みいただけるとうれしいです( *ᴗˬᴗ)⁾⁾ 
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