(完)人柱にされそうになった聖女は喜んで死にました。

青空一夏

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前編ーー命は惜しくありません。ですが、人柱はごめんですわ!

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「婚約破棄だ! もうこの国に必要のないお前は、これから新しく作る堤防の人柱にするよ。公爵令嬢で聖女の人柱なら民衆も納得してくれるよ。お前が全ての災いを引き受けて死んでくれれば皆が幸せになるんだ! はっはっはっはっはぁーー」
ついさきほどまで婚約者だったオスカー・オリー国王陛下が声も高らかにそう私に宣言すると、王家主催の舞踏会ではそれを祝福するように優雅な曲が奏でられた。

オスカー国王陛下がにっこりと微笑みながら手を取る相手は私の従姉妹のローゼッタ・ボニー侯爵令嬢で新しい聖女様だ。ピンクの髪と瞳をキラキラさせて私をあざ笑うローゼッタの顔を私は決して忘れない。

私の周りを王家の騎士達が囲み「インチキ聖女め! お前のせいで民衆が死んだんだ!」と唾を吐く。私は乱暴に引きずられるように地下牢へと連れて行かれるのだった。



☆☆☆



私が聖女になったのはわずか5歳の頃でそれと同時にオスカー王太子殿下の婚約者になった。未来がよめた私は次々と天災を予言した。先王(オスカーの父)は私の意見を参考に善政を行い国は繁栄したが、2年前に事故で先王夫妻が亡くなると新たにオスカー王太子殿下が国王に即位した。

そしてことごとく私の予言を聞きながらもそれが反映されない政治を行った結果、人災とも言うべく災害があちらこちらで起こり民衆は怒り暴動が各地で起きていた。

例えば今回の川の氾濫は1年半も前から私が予言していたことなのに、堤防を作るお金だけは民衆から特別危機対策徴収という形で取り立て肝心の堤防にはお金を出し惜しみし、いい加減なものを作らせたのだ。

そのお金のほとんどはオスカー国王陛下や要職に就いている取り巻きの高位貴族達の懐に流れていった。私があれほど大がかりな堤防を築くように言ったのに……できたのはその十分の一の規模のお粗末なものであった。

予言どおりの降り続く大雨に川は凄まじく氾濫し家は流され多くの民衆が死んだ。
「なぜ私の言うように大がかりな堤防を築かなかったのですか? 民衆あっての王族や貴族ではありませんか? 民を疎かにしてはこの国はいずれ滅びますよ」
私の意見にオスカー国王陛下は笑い、優秀な聖女などもう必要ないと言い切った。

「堤防が決壊して民衆がいくら死のうともいいではないか! どうせ虫けらのような者達だ。それよりお前が去年やった大がかりな魔物制御のご祈祷は素晴らしかったよ! お陰で魔の森から出られなくなったあいつらに怯える必要なんてすっかりなくなったからな! ふふふふふ、お前は少々やりすぎたんだよ。魔物をすっかり封じ込めてしまえば自分の価値がなくなることにもっと早く気がつくべきだったな? 有能な力のある聖女はもういらない。綺麗な顔の可愛い聖女こそ民衆の望みだ!」
魔物の脅威がなくなった以上、オスカー国王陛下にとって私は既に用済みというわけだった。







「お前の両親が毎日のようにやって来ては、お前を解放しろとうるさいんだよなぁ。ウザいからさきほど断頭台に送ってやったよ。あの世で両親が待っていると思えば人柱になるのもそれほど怖くないよな? 礼はいらない」
ある日、私が軟禁されている部屋にわざわざやって来たオスカー国王陛下は楽しそうに言った。


両親も殺され、私も新たに作る堤防の人柱にされることがいよいよ正式に貴族議会と平民議会で決まったと言う。
牢屋にまで聞こえてくる民衆の歓喜の声に私は耳を疑った。

「インチキ聖女のせいで川が氾濫したらしいぞ! 殺せ。殺せ。予言しながら被害を未然に防げなかった聖女なんていらない! 人柱といわず今すぐ殺せ!」
そのような言葉が毎日こだまするようになっていく。

オスカー国王陛下の言論統制は成功したようだ。私をすっかり悪者に仕立てあげて怒りと不満の矛先を王家や高位貴族から私に向けさせたのだ。

「愚かな民衆。聖女がなんでもできるわけではないのに。洪水を防ぐのは国の仕事であって政策の問題なのに。聖女は万能ではないわ。結局、あの者達も不満をどこかにぶつけたいだけなのよね」

私は王家や貴族、民衆の為の人柱にはならない。どうせ死ななければならない命ならもっと有効活用しましょう。そう、私は喜んで死にましょう。でもそれはあいつらを喜ばせる為ではないわ。

私こそが、この国を破滅の道へと向かわせてあげましょう。
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