(完結)妹が捨てた婚約者を拾ってみたら・・・・・・

青空一夏

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2 やっぱり婚約者に飽きた妹 

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 私達は恋愛をするお年頃になっていき、フレイヤはダニエル・マース様に恋をした。ダニエル様はマース伯爵家の次男で、王宮で文官として働いている。すらりと背の高い男性で、その繊細な顔立ちは女性のように美しい。
 
「お姉様、聞いて! ダニエル様との婚約が決まったわ」

連日ダニエル様に交際を迫ったフレイヤは望み通りの結果を得た。この国では貴族同士の婚姻は親が決めることが多いが、家格が釣り合っている場合は恋愛結婚も許される。

「まぁ、良かったわね。フレイヤはダニエル様のお顔が大好きだと、いつも言っていたものね」

「そうよ。あの綺麗な顔を見ているだけで気分がいいわ。うっとりしちゃう。それにとても優しいのよ」

 のろけて嬉しがるフレイヤに、もちろん私も我が事のように喜んだ。鼻歌まじりにダニエル様とのデートの支度をするフレイヤ。

 
「どうかしら? お姉様。このドレス、私に似合っているわよね?」


 念入りにお化粧をして、蜂蜜色の髪はしっかりウェーブがきいている。ドレスの色はマゼンダ。蛍光がかった濃いピンクで目が痛い。


「そ、そうね。なんていうか・・・・・・えぇと、相変わらずのはっきりした色で似合っているわよ。うん、存在感があって良いと思うわ」

「うふ。存在感! もちろん私ほど可愛ければ当然ですわ」

 コロコロと笑いながら満足げにデートに出かけた。







「やれやれ。フレイヤがこのままダニエル様と、うまくいってくれれば万々歳だな」

「そうね、お父様。まぁ、大丈夫と思うわ。あの子、ダニエル様の綺麗なお顔が好きって言ってたし」

「はぁ、顔ね。」

 フレイヤがご機嫌でデートに向かった後、私とお父様はサロンでお茶を飲む。私とお父様は、とても気が合う。

「ジュリアもそろそろ相手を決めなければいけないなぁ。気になる男性はいるかい?」

「私はまだいいわよ。それにこのゴーサンス伯爵家を継ぐのだから、恋愛結婚は諦めているわ」

「おいおい、何を言うんだね? ジュリアは好きな男を婿にしていいんだよ。そうだ、ローガン・トンプソン副騎士団長補佐はどうだい? トンプソン侯爵家の三男でがっしりとした体躯のキリッとした男だよ」

「あぁ、とても女性に人気があるみたいね? 考えておくわ」

「ローガン様は、騎士団長にいずれなる方だと専らの評判だよ。よく考えてみなさい。」

 忘れ物を取りに帰ったフレイヤが私達の会話を聞いていたことに、私は少しも気がつかなかった。








★*☆*







「私ね、ダニエル様に飽きちゃったわ。なんかもう、ときめかないのよ」

 婚約成立から三ヶ月後、フレイヤは爆弾発言をする。私とお父様は顔を見合わせため息をつき、お母様はダニエル様がきっとフレイヤに酷いことをしたに違いないと決めつけた。

「可哀想なフレイヤ! あなた、マース伯爵家に抗議してくださいな。きっと、ダニエル様がフレイヤに酷いことをしたんですわ」

「アバ、落ち着きなさい」

「あなたはジュリアばかりをかわいがるから、フレイヤの気持ちがわからないのですわ」

 フレイヤのことを話す両親の会話はいつもかみあわない。





★*☆*





「妹のフレイヤが申し訳ないことをして、なんて言ったらいいか・・・・・・」

 フレイヤの婚約解消後、夜会で会ったダニエル様に、私は姉として丁重に詫びる。

「いいえ・・・・・・ジュリア様が謝ることではないですから。僕にそれだけ魅力がないということですからね。情けないです」

 綺麗な顔がぎゅっと辛そうに歪む。可哀想に・・・・・・なにか元気づける方法はないかしら? 彼はすらりとしているけれど、痩せ過ぎな気がするし目の下には隈ができていた。

「ダニエル様、ちゃんと食事は召し上がっていらっしゃる?」

「え?」

 ダニエル様は綺麗な顔を子犬ように傾げて、キラキラな瞳で私を見つめた。


 かわいいぃーー!!
 うちのジョンみたい!!


 ちなみにジョンは私が最近飼った犬で、嬉しい言葉をかけられるとダニエル様のように、キラキラの瞳で首を傾げるとてもキュートな子犬だ。
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