1 / 1
イケメン騎士団長様は平凡な私に恋をする
しおりを挟む
「ロレーヌ、君は新しく入ってきたメイドでしょう?騎士団の独身寮になぜ配属されたんだ?」
「さぁ、私にもわかりません。でも、多分、私は不細工だからじゃないでしょうか?」
「‥‥」
私はきらめく金髪のイケメン騎士団長様になぜか詰問されていた。
騎士団の独身寮に配属されるのは、確かに年配の女性ばかりで30代の私は珍しかった。
「なんてことだ!僕と同じ32歳じゃないか!」
騎士団長様は私の履歴書を眺めながら、ぶつぶつと悪態のようなものをつくと私を睨み付けた。
「君はそうだなぁー。厨房を手伝え!厨房から出てはいけない!」
「は、はい」
☆
厨房でジャガイモの皮むきを手伝っていると、同僚のエスタさんがやって来た。
「厨房ばかりにいないで、独身寮に来て、シーツを回収するのを手伝ってよ!」
「あ、はい。でも、騎士団長様に‥‥」
「騎士団長様?なに、雲の上の人のことを言っているの?」
「厨房から出てはいけないと、言われました」
「はぁーー?そんなこと言うはずないでしょう?私達、メイドに声をかけてくれるはずもないのに‥‥」
☆
「こら、なんで、ここにいる!厨房に戻れ!」
騎士団の独身寮のシーツを替えていると団長様に怒られた。
なんで、そんなに嫌われるのかな。
私のどこがいけないんだろう。
厨房にばかりいるわけにもいかないので、いろいろ他の仕事をするけれど、その度に叱られたの。
どうしよう?
ここで働かないと妹を食べさせられない‥‥
☆
私はきっと、こんなふうに前髪を長くおろして陰気だから嫌われるのかも‥‥
鏡を見ながら自分で前髪を目がはっきりみえるように切りそろえた。
いつもはしないお化粧もお粉と薄いピンクの口紅だけ塗ってみた。
騎士団長様はむすっとしたままで、たまに舌打ちまでされたの。
どうすれば好かれるんだろう?
クビにだけはなりたくない‥‥
☆
「君は、男を漁りに来ているのか?口紅までつけだして‥‥」
騎士団長様に呼び出されて私はまた叱られているの。
「漁りに?まさか‥‥私はあなたに好かれたくて‥‥どうか嫌わないでください」
「え?君は僕が好きなのか?」
騎士団長様は精悍な顔を赤らめていた。
「好きというか、えっと、なんていうか‥‥あなたに嫌われたら生きていけないとは思っています」
そう、この方に嫌われたら絶対この仕事を辞めさせられるわ。
両親も亡くなって、妹しかいない我が家の死活問題だった。
「そうか?それほどまでに僕を思ってくれるんだね?嬉しいよ」
「?」
なんか、違う気がするけど、まぁ、いいのかな?
☆
それからは、騎士団長様は私に甘々になった。
お昼は一緒に食べるし、夕方は家まで送ってくださる。
妹の誕生日にも、プレゼントをくださって、お優しい。
「あなたに嫌われたら生きていけない」
半年たった私は、文字通りのそんな気持ちになっていたの。
でも、これって夢よ?
メイドに騎士団長様じゃぁ、釣り合うわけがないもん。
私は仕事をやめて引っ越しをした。
自分の気持ちに気がついた今は、もうそばにはいられないから‥‥
☆
「ロレーヌ!こんなところにいたのか?探したぞ」
薬草を天日干ししていると、切なくなるようなバリトンボイスがした。
「僕が嫌いになったのかい?」
ここで、私は「はい」って言わなきゃいけないはずなのに言いたくなかった。
「仕事を辞めて薬草なんか干して魔法使いにでもなるのかい?だったら、一番最初に僕に魔法をかけて?身分のことなら問題ない。僕の母上もメイドだった。代々、僕の父上は身分など気にしない」
それなら、私はなにも我慢しない‥‥
「騎士団長様、私を妻にしてください。あなたに嫌われたら生きていけないんです」
「知ってるよ。もちろんだ!」
完
閑話
「やれやれ、やっとあの堅物が結婚してくれるのか。全く、あいつのタイプを見つけるのに苦労したよ」
「あぁ、庇護欲そそる薄幸の美女だろう?」
「そう、自分が美人だって自覚がない美女な。なかなかいなくてやっと見つけて」
「うん、うん。独身寮のメイドに雇ったんだよな?」
この国の王子三人が仕組んだ甘い罠だということに堅物騎士団長は生涯、気がつかなかった。
おかげで、ロレーヌは幸せになれたので、めでたし、めでたし、なのでした。
「さぁ、私にもわかりません。でも、多分、私は不細工だからじゃないでしょうか?」
「‥‥」
私はきらめく金髪のイケメン騎士団長様になぜか詰問されていた。
騎士団の独身寮に配属されるのは、確かに年配の女性ばかりで30代の私は珍しかった。
「なんてことだ!僕と同じ32歳じゃないか!」
騎士団長様は私の履歴書を眺めながら、ぶつぶつと悪態のようなものをつくと私を睨み付けた。
「君はそうだなぁー。厨房を手伝え!厨房から出てはいけない!」
「は、はい」
☆
厨房でジャガイモの皮むきを手伝っていると、同僚のエスタさんがやって来た。
「厨房ばかりにいないで、独身寮に来て、シーツを回収するのを手伝ってよ!」
「あ、はい。でも、騎士団長様に‥‥」
「騎士団長様?なに、雲の上の人のことを言っているの?」
「厨房から出てはいけないと、言われました」
「はぁーー?そんなこと言うはずないでしょう?私達、メイドに声をかけてくれるはずもないのに‥‥」
☆
「こら、なんで、ここにいる!厨房に戻れ!」
騎士団の独身寮のシーツを替えていると団長様に怒られた。
なんで、そんなに嫌われるのかな。
私のどこがいけないんだろう。
厨房にばかりいるわけにもいかないので、いろいろ他の仕事をするけれど、その度に叱られたの。
どうしよう?
ここで働かないと妹を食べさせられない‥‥
☆
私はきっと、こんなふうに前髪を長くおろして陰気だから嫌われるのかも‥‥
鏡を見ながら自分で前髪を目がはっきりみえるように切りそろえた。
いつもはしないお化粧もお粉と薄いピンクの口紅だけ塗ってみた。
騎士団長様はむすっとしたままで、たまに舌打ちまでされたの。
どうすれば好かれるんだろう?
クビにだけはなりたくない‥‥
☆
「君は、男を漁りに来ているのか?口紅までつけだして‥‥」
騎士団長様に呼び出されて私はまた叱られているの。
「漁りに?まさか‥‥私はあなたに好かれたくて‥‥どうか嫌わないでください」
「え?君は僕が好きなのか?」
騎士団長様は精悍な顔を赤らめていた。
「好きというか、えっと、なんていうか‥‥あなたに嫌われたら生きていけないとは思っています」
そう、この方に嫌われたら絶対この仕事を辞めさせられるわ。
両親も亡くなって、妹しかいない我が家の死活問題だった。
「そうか?それほどまでに僕を思ってくれるんだね?嬉しいよ」
「?」
なんか、違う気がするけど、まぁ、いいのかな?
☆
それからは、騎士団長様は私に甘々になった。
お昼は一緒に食べるし、夕方は家まで送ってくださる。
妹の誕生日にも、プレゼントをくださって、お優しい。
「あなたに嫌われたら生きていけない」
半年たった私は、文字通りのそんな気持ちになっていたの。
でも、これって夢よ?
メイドに騎士団長様じゃぁ、釣り合うわけがないもん。
私は仕事をやめて引っ越しをした。
自分の気持ちに気がついた今は、もうそばにはいられないから‥‥
☆
「ロレーヌ!こんなところにいたのか?探したぞ」
薬草を天日干ししていると、切なくなるようなバリトンボイスがした。
「僕が嫌いになったのかい?」
ここで、私は「はい」って言わなきゃいけないはずなのに言いたくなかった。
「仕事を辞めて薬草なんか干して魔法使いにでもなるのかい?だったら、一番最初に僕に魔法をかけて?身分のことなら問題ない。僕の母上もメイドだった。代々、僕の父上は身分など気にしない」
それなら、私はなにも我慢しない‥‥
「騎士団長様、私を妻にしてください。あなたに嫌われたら生きていけないんです」
「知ってるよ。もちろんだ!」
完
閑話
「やれやれ、やっとあの堅物が結婚してくれるのか。全く、あいつのタイプを見つけるのに苦労したよ」
「あぁ、庇護欲そそる薄幸の美女だろう?」
「そう、自分が美人だって自覚がない美女な。なかなかいなくてやっと見つけて」
「うん、うん。独身寮のメイドに雇ったんだよな?」
この国の王子三人が仕組んだ甘い罠だということに堅物騎士団長は生涯、気がつかなかった。
おかげで、ロレーヌは幸せになれたので、めでたし、めでたし、なのでした。
37
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
強面系悪役令嬢はお見合いに全敗しました……
紅葉ももな(くれはももな)
恋愛
申し訳ございません! 私のような者は貴女の伴侶として相応しくありませんのでこの度の婚約のお話はなかった事にさせていただきたく存じます」
父親譲りの強面でお見合いに全敗したフェリシテの運命の旦那様はいずこに?
竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
みゅー
恋愛
シーディーは竜帝の寵姫となったが、病気でその人生を終えた。
気づくと、同じ世界に生まれ変わっており、今度は幸せに暮らそうと竜帝に関わらないようにしたが、何故か生まれ変わったことが竜帝にばれ……
すごく短くて、切ない話が書きたくて書きました。
【完結】オネェ伯爵令息に狙われています
ふじの
恋愛
うまくいかない。
なんでこんなにうまくいかないのだろうか。
セレスティアは考えた。
ルノアール子爵家の第一子である私、御歳21歳。
自分で言うのもなんだけど、金色の柔らかな髪に黒色のつぶらな目。結構可愛いはずなのに、残念ながら行き遅れ。
せっかく婚約にこぎつけそうな恋人を妹に奪われ、幼馴染でオネェ口調のフランにやけ酒と愚痴に付き合わせていたら、目が覚めたのは、なぜか彼の部屋。
しかも彼は昔から私を想い続けていたらしく、あれよあれよという間に…!?
うまくいかないはずの人生が、彼と一緒ならもしかして変わるのかもしれない―
【全四話完結】
王子の影武者と婚約した令嬢、“フラれた女”として王都で噂されているけど気にしません!
大井町 鶴
恋愛
王子と見紛う青年の正体は、極秘に育てられた影武者だった。
任務、それは王子として振る舞い、誰にも正体を悟られないこと。
だが彼の前に現れたのは、王子が婚約者にと選ぶことになる、宰相の令嬢。
(惹かれてはいけないのに、惹かれる)
気持ちを抑えてクールに振る舞う彼に、彼女はこう言った。
「殿下が、殿下ではない……そんな気がしたのです」
聡くて大胆な彼女と、正体を隠す影武者。
これは、海辺の別荘でふたりが静かに幸せを育むまでのヒミツのお話。
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
まさかの王子三人の罠ぁぁぁ!!!笑
良かったねぇ!
ところで、タイトルの方、平凡ではなく、灰凡になってますが…間違いでしょうか??それとも故意でしょうか?(´・ω・`)?
お読みいただき、ありがとうございます(*´▽`*)❀
おぉーー。このようなところに来ていただき感謝であります。
誤字でございました。💦
ありがとーございます😊
コメントいただき、ありがとうございました◝(⑅•ᴗ•⑅)◜..°♡