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ジョセフィーヌはすぐに医師の手当てを受けた。
しかし、思いのほか鞭の跡は深く、柔らかな肌にまで食い込んでいた。
「命に別状はありませんが……あれではあの白磁のように滑らかな肌に、傷跡が一生残ってしまうでしょう。何ともお気の毒なことです。あれほどお美しいのに……肩を露出するようなドレスは、もうお召しになれないでしょう」
「……なんと……」
レアンドルは申し訳なさに顔を伏せ、深くうなだれた。
やがてジョセフィーヌが目を覚ます。彼女は自室の寝台に横たえられていた。
傍らではレアンドルが静かに付き添い、心配そうな眼差しで彼女を見つめている。
「大丈夫か? ジョセフィーヌの幸せは必ず守ると誓ったのに、愚息のせいでこんなことに……すまない。聖女の君なら、鞭の傷も癒せるのだろうか?」
「……残念ながら、この傷は治せませんわ。なぜか聖女の癒しの力は、自分には使うことができないのです」
「っ……そうか……。私にできることなら何でも言ってくれ。どうしてほしい? クロードは私の息子だが、ジョセフィーヌの気が済むなら、どんな罰でも与えるつもりだ。ジョセフィーヌと同じように、肩に鞭を……」
ジョセフィーヌは慌てて彼の手を取り、首を横に振った。
そんなことは望んでいない。
「婚約破棄させてくだされば、それで十分ですわ。サラとあのような関係になっている殿下に嫁ぐことなどできません。このままでは、サラに生まれた子を私が育てろと命じられかねませんもの」
「……確かに、そうだな。本当に申し訳ないことをした。まさか、あれほどまでにクロードが愚かだったとは……ジョセフィーヌ、君にどう償えばいいのか……。何でもしてやりたい気持ちはあるが、何をすればよいのかわからない」
レアンドルは苦く息を吐いた。
ジョセフィーヌは小さく唇を噛み、ためらいながらも意を決したように口を開いた。
「……では、ひとつだけお願いがございます。 陛下にしかできないことです。もし、私を傷物と思い、情けをかけてくださるのなら……その……私を……陛下の妻にしてくださいませんか?」
「……え? 私は君より一回り以上も年上だぞ。こんなおじさんで、本当にいいのか?」
レアンドルは思わず息を呑んだ。
「陛下はおじさんなんかではありません! 私にとっては出会ったあの日からずっと……特別な方でした。もちろん、この思いはひっそりと胸の奥に閉じ込めておくつもりでした。けれど、何でもしてくださるとおっしゃるなら、陛下の妻になりたいです……わがままでしょうか?」
ジョセフィーヌは顔を真っ赤にしながら、それでも真っ直ぐに彼を見つめた。
その瞬間、レアンドルはわずかに目を見開き、朗らかに笑った。
「実を言えば……私もずっと心のどこかで、君のことが気になっていたのだ。一人の女性としてね」
彼はゆっくりと手を伸ばし、ジョセフィーヌの髪を指先で撫でた。
ジョセフィーヌの瞳が大きく揺れる。
レアンドルはその頬に手を添え、低く囁いた。
「正直に言えば、君のような女性を妃に迎えられることが、とても嬉しい……」
頬に触れる手があたたかい。
ジョセフィーヌは胸の奥から、安堵と幸福が込み上げてくるのを感じた。
レアンドルの顔がゆっくりと近づき、そっと唇が触れた。
確かめ合うように角度を変えて、何度も優しく唇が重なっていく。
温かな息が混ざり、甘い震えがジョセフィーヌの身体を包む。
「んっ……はぁ……」
微かな吐息が漏れた後、レアンドルは彼女の額に唇を落とし、優しく言葉を紡いだ。
「ジョセフィーヌを、私の正妃として迎えよう。一生大事にし、君の悲しむことは絶対にしないと誓おう」
その言葉に、ジョセフィーヌは柔らかく微笑んだ。
頬を伝う喜びの涙が、宝石のようにきらめいたのだった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
ここまでお読みいただきありがとうございます!
あと数話で完結予定です。ざまぁ回になります。
しかし、思いのほか鞭の跡は深く、柔らかな肌にまで食い込んでいた。
「命に別状はありませんが……あれではあの白磁のように滑らかな肌に、傷跡が一生残ってしまうでしょう。何ともお気の毒なことです。あれほどお美しいのに……肩を露出するようなドレスは、もうお召しになれないでしょう」
「……なんと……」
レアンドルは申し訳なさに顔を伏せ、深くうなだれた。
やがてジョセフィーヌが目を覚ます。彼女は自室の寝台に横たえられていた。
傍らではレアンドルが静かに付き添い、心配そうな眼差しで彼女を見つめている。
「大丈夫か? ジョセフィーヌの幸せは必ず守ると誓ったのに、愚息のせいでこんなことに……すまない。聖女の君なら、鞭の傷も癒せるのだろうか?」
「……残念ながら、この傷は治せませんわ。なぜか聖女の癒しの力は、自分には使うことができないのです」
「っ……そうか……。私にできることなら何でも言ってくれ。どうしてほしい? クロードは私の息子だが、ジョセフィーヌの気が済むなら、どんな罰でも与えるつもりだ。ジョセフィーヌと同じように、肩に鞭を……」
ジョセフィーヌは慌てて彼の手を取り、首を横に振った。
そんなことは望んでいない。
「婚約破棄させてくだされば、それで十分ですわ。サラとあのような関係になっている殿下に嫁ぐことなどできません。このままでは、サラに生まれた子を私が育てろと命じられかねませんもの」
「……確かに、そうだな。本当に申し訳ないことをした。まさか、あれほどまでにクロードが愚かだったとは……ジョセフィーヌ、君にどう償えばいいのか……。何でもしてやりたい気持ちはあるが、何をすればよいのかわからない」
レアンドルは苦く息を吐いた。
ジョセフィーヌは小さく唇を噛み、ためらいながらも意を決したように口を開いた。
「……では、ひとつだけお願いがございます。 陛下にしかできないことです。もし、私を傷物と思い、情けをかけてくださるのなら……その……私を……陛下の妻にしてくださいませんか?」
「……え? 私は君より一回り以上も年上だぞ。こんなおじさんで、本当にいいのか?」
レアンドルは思わず息を呑んだ。
「陛下はおじさんなんかではありません! 私にとっては出会ったあの日からずっと……特別な方でした。もちろん、この思いはひっそりと胸の奥に閉じ込めておくつもりでした。けれど、何でもしてくださるとおっしゃるなら、陛下の妻になりたいです……わがままでしょうか?」
ジョセフィーヌは顔を真っ赤にしながら、それでも真っ直ぐに彼を見つめた。
その瞬間、レアンドルはわずかに目を見開き、朗らかに笑った。
「実を言えば……私もずっと心のどこかで、君のことが気になっていたのだ。一人の女性としてね」
彼はゆっくりと手を伸ばし、ジョセフィーヌの髪を指先で撫でた。
ジョセフィーヌの瞳が大きく揺れる。
レアンドルはその頬に手を添え、低く囁いた。
「正直に言えば、君のような女性を妃に迎えられることが、とても嬉しい……」
頬に触れる手があたたかい。
ジョセフィーヌは胸の奥から、安堵と幸福が込み上げてくるのを感じた。
レアンドルの顔がゆっくりと近づき、そっと唇が触れた。
確かめ合うように角度を変えて、何度も優しく唇が重なっていく。
温かな息が混ざり、甘い震えがジョセフィーヌの身体を包む。
「んっ……はぁ……」
微かな吐息が漏れた後、レアンドルは彼女の額に唇を落とし、優しく言葉を紡いだ。
「ジョセフィーヌを、私の正妃として迎えよう。一生大事にし、君の悲しむことは絶対にしないと誓おう」
その言葉に、ジョセフィーヌは柔らかく微笑んだ。
頬を伝う喜びの涙が、宝石のようにきらめいたのだった。
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ここまでお読みいただきありがとうございます!
あと数話で完結予定です。ざまぁ回になります。
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