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7 オリビア、無理に微笑む
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※嫁いできた頃に少し時間軸が戻ります。オリビア視点です。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
私は、このお屋敷でとても煙たがれているようだ。けれど、どんなに嫌われようと、やるべきことはしなくてはならない。
「パリノ公爵家の土地、不動産、貴重品、美術品、その他の資産が含まれる資産リストと租税記録を持ってきなさい。生産物や領地での契約書も全部よ。それから、請求書の類いもね」
私はサロンで紅茶を嗜みながら、三人の執事に向かって言った。最初は渋っていた執事達も『持ってこないのなら、ベンジャミン家からは一切お金は援助できないわ』と言うと、続々とつけ払いの請求書を持ってきた。なんと、驚くことに、毎日のようにドレスや宝石を買っていたことがわかった。
「これは大変な金額ではありませんか! それに、毎日のように観劇やオペラに行くなんてあり得ませんよ」
(クロエ様にこれほど貢がれていたとは! これほどまでに夢中だったとは思わなかった)
お父様からお金の管理の仕方を、私は幼い頃から学んできた。一介の商人が大富豪になれたのは、お父様の手腕と発想力のおかげだった。加えて、お金の動きを常にみずから管理し、他人任せにしないということだった。私がサロンで帳簿や請求書を綿密にチェックしていると、ハミルトン様が血相を変えていらっしゃった。
「なにを、勝手なことをしている?」
ハミルトン様は、顔を怒りで歪ませていた。
「これから、ベンジャミン家のお金を融通するのです。私がチェックするのは当然だと思います」
「むぅ。生意気だな、女のくせに!」
「女だから、お金の勘定をしてはいけないのですか?」
私は穏やかな口調で、ハミルトン様に尋ねた。
「平民出身だと、これほど品がないのか?貴族の常識も知らないのだな? 女だからというよりは、高貴な生まれの者は、お金の話題はするものじゃない。下品なことなのだ。まして、公爵夫人みずからが、金勘定をするなど恥ずかしいことだと思わないのか?」
「全く、思いません。お金の流れを正確に把握しておくのは生きるためには必要なことですわ」
「ふん。見た目も冴えないうえに、金勘定が得意な下品な女が妻とは! 神様、私がどんな罪を犯したというのです?」
ハミルトン様は天を仰いでいる。私は、憧れの男性に呆れられて、目の前で天を仰がれたの。悲しかったわ。けれど、これにはパリノ公爵家の使用人たちが心から驚いた。もちろん、私の三人の護衛侍女たちも必死で怒りをこらえていた。
「公爵様、なにか悪いものでも召し上がりましたか? 奥様は素晴らしい美貌の女性ですよ」
パリノ家の使用人たちが口々に言い、非難の眼差しでハミルトン様を見る。
「はっ!! なにをバカなことを!この女に魅了の魔法でもかけられたか? あぁ、さては、ベンジャミン家は邪道な魔法を使えるのか? だから、怪しげな発明をいくつも思いつき大富豪になれたのだな。なんて、恐ろしい一族だ。この国では魅了の魔法を使う者は死罪だぞ」
「公爵様! お言葉が過ぎますぞ!」
さすがに、執事たちはハミルトン様をたしなめた。なぜ、パリノ公爵家をたてなおそうとしている私に、そんな言葉が言えるのだろう? 『推し』だった男性にこれほど嫌われるなんて思ってもみなかった。ハミルトン様の心にはクロエ様がいる。泣いたからといって、ハミルトン様の心が手に入るわけではない。
だから、涙が出そうになったけれど、私は無理に微笑んだのだった。
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私は、このお屋敷でとても煙たがれているようだ。けれど、どんなに嫌われようと、やるべきことはしなくてはならない。
「パリノ公爵家の土地、不動産、貴重品、美術品、その他の資産が含まれる資産リストと租税記録を持ってきなさい。生産物や領地での契約書も全部よ。それから、請求書の類いもね」
私はサロンで紅茶を嗜みながら、三人の執事に向かって言った。最初は渋っていた執事達も『持ってこないのなら、ベンジャミン家からは一切お金は援助できないわ』と言うと、続々とつけ払いの請求書を持ってきた。なんと、驚くことに、毎日のようにドレスや宝石を買っていたことがわかった。
「これは大変な金額ではありませんか! それに、毎日のように観劇やオペラに行くなんてあり得ませんよ」
(クロエ様にこれほど貢がれていたとは! これほどまでに夢中だったとは思わなかった)
お父様からお金の管理の仕方を、私は幼い頃から学んできた。一介の商人が大富豪になれたのは、お父様の手腕と発想力のおかげだった。加えて、お金の動きを常にみずから管理し、他人任せにしないということだった。私がサロンで帳簿や請求書を綿密にチェックしていると、ハミルトン様が血相を変えていらっしゃった。
「なにを、勝手なことをしている?」
ハミルトン様は、顔を怒りで歪ませていた。
「これから、ベンジャミン家のお金を融通するのです。私がチェックするのは当然だと思います」
「むぅ。生意気だな、女のくせに!」
「女だから、お金の勘定をしてはいけないのですか?」
私は穏やかな口調で、ハミルトン様に尋ねた。
「平民出身だと、これほど品がないのか?貴族の常識も知らないのだな? 女だからというよりは、高貴な生まれの者は、お金の話題はするものじゃない。下品なことなのだ。まして、公爵夫人みずからが、金勘定をするなど恥ずかしいことだと思わないのか?」
「全く、思いません。お金の流れを正確に把握しておくのは生きるためには必要なことですわ」
「ふん。見た目も冴えないうえに、金勘定が得意な下品な女が妻とは! 神様、私がどんな罪を犯したというのです?」
ハミルトン様は天を仰いでいる。私は、憧れの男性に呆れられて、目の前で天を仰がれたの。悲しかったわ。けれど、これにはパリノ公爵家の使用人たちが心から驚いた。もちろん、私の三人の護衛侍女たちも必死で怒りをこらえていた。
「公爵様、なにか悪いものでも召し上がりましたか? 奥様は素晴らしい美貌の女性ですよ」
パリノ家の使用人たちが口々に言い、非難の眼差しでハミルトン様を見る。
「はっ!! なにをバカなことを!この女に魅了の魔法でもかけられたか? あぁ、さては、ベンジャミン家は邪道な魔法を使えるのか? だから、怪しげな発明をいくつも思いつき大富豪になれたのだな。なんて、恐ろしい一族だ。この国では魅了の魔法を使う者は死罪だぞ」
「公爵様! お言葉が過ぎますぞ!」
さすがに、執事たちはハミルトン様をたしなめた。なぜ、パリノ公爵家をたてなおそうとしている私に、そんな言葉が言えるのだろう? 『推し』だった男性にこれほど嫌われるなんて思ってもみなかった。ハミルトン様の心にはクロエ様がいる。泣いたからといって、ハミルトン様の心が手に入るわけではない。
だから、涙が出そうになったけれど、私は無理に微笑んだのだった。
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