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4 カルヴァン視点
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(カルヴァン視点)
「カルヴァン様、少しお話があります。クリスマスパーティのエスコートをリネータにお願いされましたよね?」
マージ・ドゥルイット伯爵令嬢が声をかけてきた。彼女はリネータ様の親友でいつも一緒にいる子だ。
「はい、今年はとても嬉しいクリスマスになりそうですよ。元からリネータ様は可愛かったけれど、今は可憐な感じでもっと綺麗になりましたよね」
「はい、リネータはお兄様のせいで痩せてしまったのですわ。リネータのお兄様は他の女性と婚約が決まったそうですのよ。可哀想にとてもしょげていたので、気分転換したかったのでしょう。エスコートを引き受けてくださってありがとうございます」
「お兄様といえばヒース様ですよね? そう言えば、ヒース様は養子でしたね。確かエヴァーツ伯爵の亡くなった弟夫妻の子供でしたっけ?」
「その通りですわ。リネータはヒース様に幼い頃から憧れていたのですが、もうすぐダニカ・ソルト侯爵令嬢と婚約するそうですから、とても落ち込んでいましたの。ダイエットというよりは、その悲しみで食欲がなくなったのだと思います」
「あぁ、だから痩せたのですか? 食べられなくなるほど、・・・・・・そんなにヒース様が好きなのですね」
わたしの急に楽しかった気分が萎んでいく。
「えぇ。そう言えば、カルヴァン様はヒース様と同じ金髪に碧眼ですわね。だからカルヴァン様とクリスマスパーティに行きたがったのかしら? とにかく私の大親友なのです。よろしくお願いします」
さらに胸のもやもやが広がる。
(わたしはヒース様の代わりなのか? 初めて見た時から可愛いと思っていたのに、わたしに好意を持ってくれたから誘ってくれたのじゃなかったのか)
クリスマスパーティには一緒に行けることが決まったのに、心はずっと遠くにあることがわかり、楽しい時間になるはずだったパーティが途端に色あせてしまう。
リネータ様にドレスを送りたかったけれどきっと迷惑だろうな。自分が一人で有頂天になっていたことが恥ずかしい。
翌日のこと、リネータ様が話しかけてきたけれど、沈んだ気持ちのままで笑顔になれなかった。リネータ様の顔もどこかぎこちない。わたしといてもヒース様を思いだしてしまうのかも。
「クリスマスパーティの件なのですが、やはり一緒に行くのはやめにしませんか? とても楽しめそうにもないのです」
気づけばわたしはそのような冷たい言葉を吐いていた。
「・・・・・・ですよね。想う方がいながら、そうではない異性と一緒にいても楽しくはありませんよね?」
リネータ様が悲しそうな顔でそう言った。
(自分の気持ちを言っているのか。ずいぶん、はっきり言う女性だったのだな)
「わかっていらっしゃるのなら、もうこちらから言うことはありません。やはり本当に好きな方と過ごすクリスマスでなくてはいけないです」
わたしは虚しい気分でリネータ様にそう言って顔も見ずにその場を去った。彼女が涙をためてわたしを見つめていたことも知らずに。
ゆるやかな巻き毛の黒髪は艶やかで、黒曜石のような大きな瞳と愛らしい唇、最高に可愛いリネータ様の心は血の繋がっていない兄ヒース様に囚われている。
身代わりは嫌だった。好きな子には自分自身を見てほしい。だから、わたしはリネータ様を諦める。
「カルヴァン様、少しお話があります。クリスマスパーティのエスコートをリネータにお願いされましたよね?」
マージ・ドゥルイット伯爵令嬢が声をかけてきた。彼女はリネータ様の親友でいつも一緒にいる子だ。
「はい、今年はとても嬉しいクリスマスになりそうですよ。元からリネータ様は可愛かったけれど、今は可憐な感じでもっと綺麗になりましたよね」
「はい、リネータはお兄様のせいで痩せてしまったのですわ。リネータのお兄様は他の女性と婚約が決まったそうですのよ。可哀想にとてもしょげていたので、気分転換したかったのでしょう。エスコートを引き受けてくださってありがとうございます」
「お兄様といえばヒース様ですよね? そう言えば、ヒース様は養子でしたね。確かエヴァーツ伯爵の亡くなった弟夫妻の子供でしたっけ?」
「その通りですわ。リネータはヒース様に幼い頃から憧れていたのですが、もうすぐダニカ・ソルト侯爵令嬢と婚約するそうですから、とても落ち込んでいましたの。ダイエットというよりは、その悲しみで食欲がなくなったのだと思います」
「あぁ、だから痩せたのですか? 食べられなくなるほど、・・・・・・そんなにヒース様が好きなのですね」
わたしの急に楽しかった気分が萎んでいく。
「えぇ。そう言えば、カルヴァン様はヒース様と同じ金髪に碧眼ですわね。だからカルヴァン様とクリスマスパーティに行きたがったのかしら? とにかく私の大親友なのです。よろしくお願いします」
さらに胸のもやもやが広がる。
(わたしはヒース様の代わりなのか? 初めて見た時から可愛いと思っていたのに、わたしに好意を持ってくれたから誘ってくれたのじゃなかったのか)
クリスマスパーティには一緒に行けることが決まったのに、心はずっと遠くにあることがわかり、楽しい時間になるはずだったパーティが途端に色あせてしまう。
リネータ様にドレスを送りたかったけれどきっと迷惑だろうな。自分が一人で有頂天になっていたことが恥ずかしい。
翌日のこと、リネータ様が話しかけてきたけれど、沈んだ気持ちのままで笑顔になれなかった。リネータ様の顔もどこかぎこちない。わたしといてもヒース様を思いだしてしまうのかも。
「クリスマスパーティの件なのですが、やはり一緒に行くのはやめにしませんか? とても楽しめそうにもないのです」
気づけばわたしはそのような冷たい言葉を吐いていた。
「・・・・・・ですよね。想う方がいながら、そうではない異性と一緒にいても楽しくはありませんよね?」
リネータ様が悲しそうな顔でそう言った。
(自分の気持ちを言っているのか。ずいぶん、はっきり言う女性だったのだな)
「わかっていらっしゃるのなら、もうこちらから言うことはありません。やはり本当に好きな方と過ごすクリスマスでなくてはいけないです」
わたしは虚しい気分でリネータ様にそう言って顔も見ずにその場を去った。彼女が涙をためてわたしを見つめていたことも知らずに。
ゆるやかな巻き毛の黒髪は艶やかで、黒曜石のような大きな瞳と愛らしい唇、最高に可愛いリネータ様の心は血の繋がっていない兄ヒース様に囚われている。
身代わりは嫌だった。好きな子には自分自身を見てほしい。だから、わたしはリネータ様を諦める。
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