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キャメロン王子と婚約
しおりを挟むぞっとして、私はおもいっきり悲鳴をあげた。
すぐに護衛騎士が部屋に飛び込んできてイザヤは取り押さえられた。
お父様が血相を変えてやってきて、イザヤの頬をおもいっきり殴り倒した。
「今後はアリッサに二度と近づけぬようお前は辺境の地で一生を終えるのだ。忌々しい女どもも連れていくがいい」
イザヤは私に向かって叫んだ。
「助けてくれ!アリッサ。お金はあとで返そうと思っていたんだ!女は、ただ、あいつらが言い寄ってくるから誘惑されただけなんだ!」
私はイザヤが唾を飛ばし、涙と鼻水でグチャグチャになった顔を無感情で見つめた。
ここにいる男は私の知らない男だ。
すっかり恋の夢から覚めた私はもう涙もでなかった。
☆
私は翌日、王宮で従兄弟達に慰められていた。
私のお母様は王の妹なので王子と王女は従兄弟にあたる。
「がっかりすることないわ!アリッサ、だって、お兄様がいるじゃない?元からの予定通りキャメロンお兄様と婚約すればいいのよ?」
ローリエ王女が私の頭を子供のようになでながら言った。
「え?だって、キャメロン様はケイラ・ブレイク侯爵令嬢と婚約しているでしょう?」
「あら、そんなの婚約破棄すればいいのよ。もともと、第二王子のキャメロンお兄様はエバン公爵家に婿入りするはずだったのよ?それを、アリッサがエバン侯爵に無理矢理イザヤのばかをお婿さんにしたいというものだから‥‥全くキャメロンお兄様も、もっと早くアリッサのことを好きだと言っていれば良かったのに‥‥ずっとお兄様はメリッサが大好きだったのよ?」
キャメロン王子は顔を赤くして下を向いている。
「お兄様!ほら、ここは早く告白してアリッサをすぐにでも自分のものになさる時ですよ!」
「あぁ、その‥‥メリッサ、わたしと婚約してくれないだろうか?」
キャメロン王子を私はまるで初めて見るように観察してしまう。
ブロンドに水色の瞳が美しい、まさに王子様らしいその素敵な容姿になぜ気がつかなかったのだろう?
幼い頃から一緒にいることが多すぎて恋愛対象とは思っていなかったからかなぁ。
「メリッサ、今すぐキャメロンのことを愛して無くても一緒に愛を育てていけばいい。キャメロンのお前に対する思いは本物だ。わたしが保証しよう」
フィリップ第一王子が力強い声でおっしゃっる。
「はい、謹んでお受けします」
私は幸せの予感に震えて返事をした。
ごめんなさい。イザヤ様、あなたのことなど私はすぐに忘れられそうです。
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