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10 楽しいトレッキング
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いよいよ、トレッキングの日が来た。
「山登りじゃなくて、ピクニックみたいなものよ。お弁当は、おにぎらずを作ろう」
礼子さんは前日に張り切って、おにぎらずの具を用意していた。
「おかか、梅干しは当たり前だけれど、卵焼きや焼き肉を入れたりが楽しいのよ。彩りがかわいいから朝早く起きてつくろうね!」
礼子さんに言われるとウキウキして、とても楽しい気分になるんだ。
私はレモン色の携帯で目覚ましをセットする。買ってもらってから、ずっとクビに掛けている。
ピッピッピの音で目を覚ましてキッチンを覗くと、礼子さんが海苔の上にご飯を乗っけて折り紙のように折っていた。
「海苔を真ん中まで切って、それでほらこの4隅に具を置いて折っていくと……ほらぁーー不思議なかわいい綺麗なおにぎらずに……。」
ぶつぶつ言う礼子さんと私も一緒に作った。ラップで巻いて半分に切ると断面がとても綺麗だった。
「すっごい綺麗だね! 礼子さん、大成功だよね?」
麦茶を水筒にいれる礼子さんに、私は笑いかけた。
「そうだね。二人で作ったから、きっとおいしいよ。 お昼はおにぎらずだから、朝はクロワッサンと目玉焼きにベーコンだな。ちゃっちゃっと作って食べちゃおう」
私がパンをトーストして礼子さんが目玉焼き、ベーコン係。お皿に盛るのは礼子さんの係で紅茶は私。日によって変る係ごっこは遊びみたいで楽しい。
お祖母ちゃんは私達が散らかしたキッチンを、ニコニコしながら片付けていた。
「そんなおにぎりが流行っているのかい? 面白いねぇ」
お祖母ちゃんはそう言いながら感心していた。
「菊名さん。あとでかたずけるから、そのままでいいよ」
「いいんだよ。こうやって、孫の顔を見て朝ご飯を一緒に食べるなんて嬉しいじゃないか? 礼子は再婚しないし、健一のところにも子供はできないしね……ほんとうに、子供がいるって嬉しいね」
「ふふふ。でしょう? だから、私が引き取って正解だったのよ。」
礼子さんが胸を張った。私の心がくすぐったい……ほんわか温かい……
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ
外にでるとすばらしく良い天気で、ワクワクする気分とドキドキの不安な気持ちが入り混じる。
礼子さんの車から眺める景色は朝日に照らされてキラキラと眩しい。どこまでも楽しい日になりそうな予感に満ちていたけれど……あの女の子の意地悪な目つきを思い出す……やっぱりちょっと怖い……
待ち合わせの駐車場に着くと、駆け寄ってくる柊君と暖君の姿にホッとした。
「元気だった? 今日はすっごく天気が良くて良かったね!」
柊君の声に頷くと、暖君が、
「もうすぐ莉子ちゃんも来るからね。優しい子だから大丈夫だよ」
にっこりしながらそう言った。
優しい子か……あの子は私以外には優しいのかな……駐車場の砂利を見つめながら考えていると、
「お待たせぇーー。貴女が紬ちゃん? 私は莉子よ。仲良くしようね」
可愛い声に顔をあげて、この前の子じゃないことに驚いた。
長い髪を三つ編みにした垂れ目の優しげな顔立ちに、にっこりすると莉子ちゃんも笑い返してくれた。この子なら仲良くなれそう……
莉子ちゃんのお兄ちゃんの律君も混じって、私達はわいわいとおしゃべりしながら、なだらかな山を歩いていく。
大人達は前と後ろに別れてマドレーヌポプリンのオーナーシェフと啓吾先生は先頭だ。私達子供を挟んで、後ろに礼子さんと真美さん、莉子ちゃんママの愛子さん。
「レンゲツツジとあっちがアヤメだね。これはヤマホタルブクロだ」
莉子ちゃんと植物の当てっこをしてわからなければ写メをとって、自分の宿題にした。柊君はずっと側にいてくれて、莉子ちゃんがにこにことそれを見ていた。
「そっか……柊君の好きな子って……ふふふ。芽依ちゃんからは私が守ってあげるよ」
「芽依ちゃんってだぁれ?」
「柊君の従姉妹よ。すっごい意地悪な子だけれど柊君や暖君の前では、良い子かな? 相手によって態度を変える面白い子だよ」
私はカフェタンポポに来た女の子のことを話したら、莉子ちゃんは鼻の頭に皺をよせた。
「それ、それよ」と言った。
従姉妹の芽依ちゃんとの対決は学校が始まってすぐに訪れることを、私はその時は思ってもいなかった。
私は柊君と一緒に勉強することを約束して別れた。礼子さんは週に2回は絵の指導がてら私を啓吾先生のところに連れて行く。
家族ぐるみのお付き合いはカウンセリングの場でもあり、会話の練習の場にもなって人との距離感がそこでずいぶん学べたと思う。
柊君と暖君、莉子ちゃんに律君は生涯の私の友人になった。楽しい夏休みは、あっという間に過ぎていった。
「山登りじゃなくて、ピクニックみたいなものよ。お弁当は、おにぎらずを作ろう」
礼子さんは前日に張り切って、おにぎらずの具を用意していた。
「おかか、梅干しは当たり前だけれど、卵焼きや焼き肉を入れたりが楽しいのよ。彩りがかわいいから朝早く起きてつくろうね!」
礼子さんに言われるとウキウキして、とても楽しい気分になるんだ。
私はレモン色の携帯で目覚ましをセットする。買ってもらってから、ずっとクビに掛けている。
ピッピッピの音で目を覚ましてキッチンを覗くと、礼子さんが海苔の上にご飯を乗っけて折り紙のように折っていた。
「海苔を真ん中まで切って、それでほらこの4隅に具を置いて折っていくと……ほらぁーー不思議なかわいい綺麗なおにぎらずに……。」
ぶつぶつ言う礼子さんと私も一緒に作った。ラップで巻いて半分に切ると断面がとても綺麗だった。
「すっごい綺麗だね! 礼子さん、大成功だよね?」
麦茶を水筒にいれる礼子さんに、私は笑いかけた。
「そうだね。二人で作ったから、きっとおいしいよ。 お昼はおにぎらずだから、朝はクロワッサンと目玉焼きにベーコンだな。ちゃっちゃっと作って食べちゃおう」
私がパンをトーストして礼子さんが目玉焼き、ベーコン係。お皿に盛るのは礼子さんの係で紅茶は私。日によって変る係ごっこは遊びみたいで楽しい。
お祖母ちゃんは私達が散らかしたキッチンを、ニコニコしながら片付けていた。
「そんなおにぎりが流行っているのかい? 面白いねぇ」
お祖母ちゃんはそう言いながら感心していた。
「菊名さん。あとでかたずけるから、そのままでいいよ」
「いいんだよ。こうやって、孫の顔を見て朝ご飯を一緒に食べるなんて嬉しいじゃないか? 礼子は再婚しないし、健一のところにも子供はできないしね……ほんとうに、子供がいるって嬉しいね」
「ふふふ。でしょう? だから、私が引き取って正解だったのよ。」
礼子さんが胸を張った。私の心がくすぐったい……ほんわか温かい……
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ
外にでるとすばらしく良い天気で、ワクワクする気分とドキドキの不安な気持ちが入り混じる。
礼子さんの車から眺める景色は朝日に照らされてキラキラと眩しい。どこまでも楽しい日になりそうな予感に満ちていたけれど……あの女の子の意地悪な目つきを思い出す……やっぱりちょっと怖い……
待ち合わせの駐車場に着くと、駆け寄ってくる柊君と暖君の姿にホッとした。
「元気だった? 今日はすっごく天気が良くて良かったね!」
柊君の声に頷くと、暖君が、
「もうすぐ莉子ちゃんも来るからね。優しい子だから大丈夫だよ」
にっこりしながらそう言った。
優しい子か……あの子は私以外には優しいのかな……駐車場の砂利を見つめながら考えていると、
「お待たせぇーー。貴女が紬ちゃん? 私は莉子よ。仲良くしようね」
可愛い声に顔をあげて、この前の子じゃないことに驚いた。
長い髪を三つ編みにした垂れ目の優しげな顔立ちに、にっこりすると莉子ちゃんも笑い返してくれた。この子なら仲良くなれそう……
莉子ちゃんのお兄ちゃんの律君も混じって、私達はわいわいとおしゃべりしながら、なだらかな山を歩いていく。
大人達は前と後ろに別れてマドレーヌポプリンのオーナーシェフと啓吾先生は先頭だ。私達子供を挟んで、後ろに礼子さんと真美さん、莉子ちゃんママの愛子さん。
「レンゲツツジとあっちがアヤメだね。これはヤマホタルブクロだ」
莉子ちゃんと植物の当てっこをしてわからなければ写メをとって、自分の宿題にした。柊君はずっと側にいてくれて、莉子ちゃんがにこにことそれを見ていた。
「そっか……柊君の好きな子って……ふふふ。芽依ちゃんからは私が守ってあげるよ」
「芽依ちゃんってだぁれ?」
「柊君の従姉妹よ。すっごい意地悪な子だけれど柊君や暖君の前では、良い子かな? 相手によって態度を変える面白い子だよ」
私はカフェタンポポに来た女の子のことを話したら、莉子ちゃんは鼻の頭に皺をよせた。
「それ、それよ」と言った。
従姉妹の芽依ちゃんとの対決は学校が始まってすぐに訪れることを、私はその時は思ってもいなかった。
私は柊君と一緒に勉強することを約束して別れた。礼子さんは週に2回は絵の指導がてら私を啓吾先生のところに連れて行く。
家族ぐるみのお付き合いはカウンセリングの場でもあり、会話の練習の場にもなって人との距離感がそこでずいぶん学べたと思う。
柊君と暖君、莉子ちゃんに律君は生涯の私の友人になった。楽しい夏休みは、あっという間に過ぎていった。
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