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11 新しい学校の1日目から最悪
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「今日から新しいお友達が増えますよ。皆さん、仲良くしてあげてくださいね」
担任の平沢先生の紹介で私は軽く頭を下げた。
「佐々木紬です。よろしくお願いします」
挨拶をして顔をあげると、先には天国と地獄があった。天国な気分になったのは柊君と莉子ちゃんを見つけたことで、不幸な気分になったのはあの子がいたからだった。
私の席は柊君の真後ろで、あの子は柊君の隣の席だった。
「紬ちゃん、よろしくね。私達、とても仲良くなれそうね。私は柊君の従姉妹で東芽依です」
「あ、はい。よろしくお願いします」
確かにあの意地悪な子だけれど、柊君が見ているときは全然雰囲気が違う。可愛らしい微笑みで、全然別人だ。
休み時間は莉子ちゃんもやって来て皆で話すけれど、芽依ちゃんの態度は人当たりが良くてにこにことしていた。
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ
お昼は班ごとに食べるので、芽依さんと柊君も同じ班だった。男の子3人に女の子3人の合計6人の班で、理科の実験もするし社会の自由研究とか、掃除もその班ですると芽依さんは言った。
「今日の給食は苦手なものがないといいなぁ。紬ちゃんは食べられないものってあるぅ?」
「んっと、特にないです」
私は芽依さんの問いかけにそう答えた。
「わぁーー! すごいねぇ。なんでも食べられるなんてすっごぉーい! 尊敬だぁ。」
可愛らしい声が教室じゅうに響く。
「まぁーー、芽依さんは偉いわね! 早速、転入生と仲良しになってあげたのね!」
平沢先生が芽依さんをしきりに褒めていた。
「そんなことないです。紬ちゃんはとっても綺麗で、お母さんの自慢ばかりするけれど良い子だから大好きです……」
その芽依さんの言葉に皆の視線が一斉に集まった。
「なんか、有名画家がお母さんらしいよ?」
「レイコ・ササキって、知ってるよ。雑誌に出てたりするじゃない?」
「自慢ばっかりするんだぁーー。なんか嫌なかんじの子なんだねぇーー」
ヒソヒソ話がどこからともなく聞こえて顔が真っ赤になった。柊君は困ったような顔をしたけれど……その時莉子ちゃんが立ち上げって、芽依さんの前でピタリと止まった。
「紬ちゃんがそんなことを言うわけないでしょう? 自慢ばかりするなんて言ったけれど、いつそんなことを言ったのよ? 休み時間は私も一緒にいたし、授業中はおしゃべりできないでしょう? いい加減なこと言わないでよ」
莉子ちゃんが垂れ目の柔和な目を、この時ばかりはつり上げて怒ってくれた。
「紬ちゃんを虐めると許さないよ! 紬ちゃんも言われっぱなしじゃダメよ。勇気をだして言うのよ。やってないことをやったことにされるのは嫌でしょう?」
私はそう言われても勇気がでなかった。うなづいたけれど、反論するより涙が出てきた。
「まぁ、あれだけ有名人がお母さんなら誰でも話したいと思うわよ。紬さんは少しも悪くないわ」
平沢先生は私が自慢したことを前提にそんな言葉をかぶせてきたのだった。私は礼子さんのことを自慢するどころか、話してもいないのに。
放課後、莉子ちゃんは私に言った。
「担任の平沢先生は芽依がお気に入りなのよ。えこひいき、すごいんだから! 紬ちゃんは、もっと強くなろうね。あいつ、またいろいろ仕掛けてきそうだし……」
「柊君、庇ってくれなかった……」
「あぁ、柊君はね……芽依は柊君の前では、すごく良い子のふりをしているから見抜けないんじゃないかな? 男の子ってわりと鈍いよね。でも、あそこで柊君が庇ったらきっともっと芽依が虐めてきそうだなぁ」
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ
学校から帰ってきて、礼子さんの顔をみたら涙がでてきた。安心したのと、あの時の悔しさがこみ上げてきて、礼子さんに抱きついて泣いていた。
「どうしたの? なんでも話してごらん?」
向いのリビングからその様子を見ていたお祖母ちゃんまでやって来た。今日の出来事を全て話すと、少しだけすっきりした。
「早くも恋のライバル出現ね?」
礼子さんの斜め上の見解に、私は苦笑いした。
「恋のライバルじゃないよ? だって、あの子は……私が嫌いなだけで……」
「その担任はだめだね! 教育者としてあり得ないよ。ここはお祖母ちゃんが文句を言いに学校に行くかね」
「菊名さん。それは、不味いわよ。その芽依って子はよく知らないから真美さんに訊いてみるわ。けど、柊君ってもっと頼りになるかと思いきや残念な子なのかしら……」
「柊君は……よくわからないよ……芽依さんって、とっても上手なんだもん。柊君の前だとすっごいかわいい声だすし、先生の前ではとても良い子なんだ……私はあんなことできないな」
礼子さんはその言葉に笑い出した。
「そんなことできなくていいわよ。でも、その子は要注意ねぇ。また、なにかされたら必ず礼子さんに言うのよ。でも、莉子ちゃんはさすがだわ。正義感が強いからね、あの子は。」
「あぁ、お祖母ちゃんは紬ちゃんが不憫だよ。転入早々、そんな意地の悪い子に目を付けられるなんてねぇ。柊君も罪なことをしてくれたもんだ」
「んーー、やっぱり、紬ちゃんは綺麗だからねぇーー」
「そうだねぇ。うちの紬ちゃんは綺麗だからねぇ」
私は礼子さんとお祖母ちゃんにはメガネが必要だと本気で思った。だって、私はちっとも綺麗じゃないもん。
夜、ベッドにもぐると、学校でのことが思い出されて気持ちが何度も沈んだ。なんで、あそこで言い返せなかったのかな? 朝なんてこなければいいのになぁ。
担任の平沢先生の紹介で私は軽く頭を下げた。
「佐々木紬です。よろしくお願いします」
挨拶をして顔をあげると、先には天国と地獄があった。天国な気分になったのは柊君と莉子ちゃんを見つけたことで、不幸な気分になったのはあの子がいたからだった。
私の席は柊君の真後ろで、あの子は柊君の隣の席だった。
「紬ちゃん、よろしくね。私達、とても仲良くなれそうね。私は柊君の従姉妹で東芽依です」
「あ、はい。よろしくお願いします」
確かにあの意地悪な子だけれど、柊君が見ているときは全然雰囲気が違う。可愛らしい微笑みで、全然別人だ。
休み時間は莉子ちゃんもやって来て皆で話すけれど、芽依ちゃんの態度は人当たりが良くてにこにことしていた。
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ
お昼は班ごとに食べるので、芽依さんと柊君も同じ班だった。男の子3人に女の子3人の合計6人の班で、理科の実験もするし社会の自由研究とか、掃除もその班ですると芽依さんは言った。
「今日の給食は苦手なものがないといいなぁ。紬ちゃんは食べられないものってあるぅ?」
「んっと、特にないです」
私は芽依さんの問いかけにそう答えた。
「わぁーー! すごいねぇ。なんでも食べられるなんてすっごぉーい! 尊敬だぁ。」
可愛らしい声が教室じゅうに響く。
「まぁーー、芽依さんは偉いわね! 早速、転入生と仲良しになってあげたのね!」
平沢先生が芽依さんをしきりに褒めていた。
「そんなことないです。紬ちゃんはとっても綺麗で、お母さんの自慢ばかりするけれど良い子だから大好きです……」
その芽依さんの言葉に皆の視線が一斉に集まった。
「なんか、有名画家がお母さんらしいよ?」
「レイコ・ササキって、知ってるよ。雑誌に出てたりするじゃない?」
「自慢ばっかりするんだぁーー。なんか嫌なかんじの子なんだねぇーー」
ヒソヒソ話がどこからともなく聞こえて顔が真っ赤になった。柊君は困ったような顔をしたけれど……その時莉子ちゃんが立ち上げって、芽依さんの前でピタリと止まった。
「紬ちゃんがそんなことを言うわけないでしょう? 自慢ばかりするなんて言ったけれど、いつそんなことを言ったのよ? 休み時間は私も一緒にいたし、授業中はおしゃべりできないでしょう? いい加減なこと言わないでよ」
莉子ちゃんが垂れ目の柔和な目を、この時ばかりはつり上げて怒ってくれた。
「紬ちゃんを虐めると許さないよ! 紬ちゃんも言われっぱなしじゃダメよ。勇気をだして言うのよ。やってないことをやったことにされるのは嫌でしょう?」
私はそう言われても勇気がでなかった。うなづいたけれど、反論するより涙が出てきた。
「まぁ、あれだけ有名人がお母さんなら誰でも話したいと思うわよ。紬さんは少しも悪くないわ」
平沢先生は私が自慢したことを前提にそんな言葉をかぶせてきたのだった。私は礼子さんのことを自慢するどころか、話してもいないのに。
放課後、莉子ちゃんは私に言った。
「担任の平沢先生は芽依がお気に入りなのよ。えこひいき、すごいんだから! 紬ちゃんは、もっと強くなろうね。あいつ、またいろいろ仕掛けてきそうだし……」
「柊君、庇ってくれなかった……」
「あぁ、柊君はね……芽依は柊君の前では、すごく良い子のふりをしているから見抜けないんじゃないかな? 男の子ってわりと鈍いよね。でも、あそこで柊君が庇ったらきっともっと芽依が虐めてきそうだなぁ」
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ
学校から帰ってきて、礼子さんの顔をみたら涙がでてきた。安心したのと、あの時の悔しさがこみ上げてきて、礼子さんに抱きついて泣いていた。
「どうしたの? なんでも話してごらん?」
向いのリビングからその様子を見ていたお祖母ちゃんまでやって来た。今日の出来事を全て話すと、少しだけすっきりした。
「早くも恋のライバル出現ね?」
礼子さんの斜め上の見解に、私は苦笑いした。
「恋のライバルじゃないよ? だって、あの子は……私が嫌いなだけで……」
「その担任はだめだね! 教育者としてあり得ないよ。ここはお祖母ちゃんが文句を言いに学校に行くかね」
「菊名さん。それは、不味いわよ。その芽依って子はよく知らないから真美さんに訊いてみるわ。けど、柊君ってもっと頼りになるかと思いきや残念な子なのかしら……」
「柊君は……よくわからないよ……芽依さんって、とっても上手なんだもん。柊君の前だとすっごいかわいい声だすし、先生の前ではとても良い子なんだ……私はあんなことできないな」
礼子さんはその言葉に笑い出した。
「そんなことできなくていいわよ。でも、その子は要注意ねぇ。また、なにかされたら必ず礼子さんに言うのよ。でも、莉子ちゃんはさすがだわ。正義感が強いからね、あの子は。」
「あぁ、お祖母ちゃんは紬ちゃんが不憫だよ。転入早々、そんな意地の悪い子に目を付けられるなんてねぇ。柊君も罪なことをしてくれたもんだ」
「んーー、やっぱり、紬ちゃんは綺麗だからねぇーー」
「そうだねぇ。うちの紬ちゃんは綺麗だからねぇ」
私は礼子さんとお祖母ちゃんにはメガネが必要だと本気で思った。だって、私はちっとも綺麗じゃないもん。
夜、ベッドにもぐると、学校でのことが思い出されて気持ちが何度も沈んだ。なんで、あそこで言い返せなかったのかな? 朝なんてこなければいいのになぁ。
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