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番外編
4 莉子ちゃんの恋ーその1(莉子ちゃん視点)
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私は吉田莉子、お父さんはマドレーヌポプリンのオーナシェフだ。
私の初恋は幼馴染みで東医院の長男の暖くん。中学卒業前後でお互いの気持ちを確かめあって付き合ってきたけれど、高校が離れ離れになってお互いの目標が違ってくると、やっぱりすれ違いって多くなる。
だから、私達は紬ちゃんにはナイショだけれど何度も別れの危機を迎えていたんだ。忙しいとお互い連絡できないことも多くなっていた。
でも、暖君には連絡しなくても紬ちゃんには連絡するし、暖君の電話より紬ちゃんの電話を優先する私だった。なんでって? 暖君は好きだけれど、一生絶対死ぬまでつきあうのは多分紬ちゃんだから。男に冷めてるって言わないでほしいな・・・・・・
私は、彼氏中心の生活は送りたくないだけだ。自分の時間は限られているから、計画的に使う必要がある。優先順位をきっちりつけて生活するのが私のスタイル。
私の優先順位は料理と紬ちゃんが同列で1番。2番が家族で3番が暖君。
紬ちゃんだって、柊君は1番じゃないって言う。柊君とあんなにべったりで、お互いが絶対一緒にいないとダメってぐらい熱々だけれど、それでも紬ちゃんの1番大事な人は礼子さんだ。
私達女って割と冷静で頭を働かせる生物だよ。彼氏が1番なんてダメだ。今の時代は仕事や親友、紬ちゃんの場合なら大恩人礼子さん、それが彼氏より優先されてもいいと思う。
高校を卒業すると暖君は地元の大学の医学部に入って、私はマドレーヌポプリンで修行の日々をおくった。医学部は大変そうだったけれど、大学生同士で合コンがあったり女の子からたくさんの告白をうけるようになった暖君は、私に「もっとデートの時間が取れないか?」と聞いてきた。
「ごめん、無理! 私は暖君と違って学生じゃないんだよ。もう社会人なんだ」
「だって、お父さんの店でしょ? 休むことなんて簡単だよね?」
暖君が言った何気ないその言葉は、私を一気に冷めさせたんだ。私はこの仕事に誇りをもっているし、将来お父さんに負けないくらいのシェフになろうと思っている。簡単に休みなんてとれないし、そんな気持ちにはなれないってなんでわかってくれないのかな? もちろん、紬ちゃんにはこんなことは相談できなかったから、兄貴に聞いてみたんだ。
「暖君って間違ってるよね。こんなに頑張っている私に店をずる休みしろ、ってそそのかすなんてさ」
「莉子、人それぞれ生きる世界があって、どれが正解じゃねーーんだよ。暖君の世界はそうでも、莉子の世界はそうじゃねーーってだけさ。どっちも悪くねーーけど、そんなんで壊れるなら、それだけの仲だったってことさ」
そうだよね。確かに、それで壊れたらそれまでだよね。私はいろいろ考えていったん距離を置くことに決めたんだ。
「ごめんね。私は今、この仕事を精一杯しなきゃならないんだよ。だから、それで寂しいって言うのなら、学生は学生同士で、同じ時間のサイクルで生活している彼女をつくりなよ」
私が暖君にそう宣言したのは高校を卒業した年の秋だった。
暖君との恋は一度終わったけれど、紬ちゃんとはラブラブだったよ。紬ちゃんも今大学生で、おまけに都内で滅多に会えなくなった。彼女の休みは土日だし、絵を描き始めると集中するから真夜中に描いて朝方寝ることもある。それは彼女の常識。
一方、私は土日祭日は超絶忙しい。夜中なんかに起きてたら朝の仕込みに起きられないから夜は早く就寝する。生活リズムは全く違う。それでも、お互いラインできるときはして、返信はお互いの都合がいい時に返す。
尊重し合って尊敬しあって認め合っているから、返信が遅くなっても許せるし全然気にならない。これが1番の距離感。
友情と恋は違うけれど暖君ともこんな距離感でいたかったよ・・・・・・
私の初恋は幼馴染みで東医院の長男の暖くん。中学卒業前後でお互いの気持ちを確かめあって付き合ってきたけれど、高校が離れ離れになってお互いの目標が違ってくると、やっぱりすれ違いって多くなる。
だから、私達は紬ちゃんにはナイショだけれど何度も別れの危機を迎えていたんだ。忙しいとお互い連絡できないことも多くなっていた。
でも、暖君には連絡しなくても紬ちゃんには連絡するし、暖君の電話より紬ちゃんの電話を優先する私だった。なんでって? 暖君は好きだけれど、一生絶対死ぬまでつきあうのは多分紬ちゃんだから。男に冷めてるって言わないでほしいな・・・・・・
私は、彼氏中心の生活は送りたくないだけだ。自分の時間は限られているから、計画的に使う必要がある。優先順位をきっちりつけて生活するのが私のスタイル。
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紬ちゃんだって、柊君は1番じゃないって言う。柊君とあんなにべったりで、お互いが絶対一緒にいないとダメってぐらい熱々だけれど、それでも紬ちゃんの1番大事な人は礼子さんだ。
私達女って割と冷静で頭を働かせる生物だよ。彼氏が1番なんてダメだ。今の時代は仕事や親友、紬ちゃんの場合なら大恩人礼子さん、それが彼氏より優先されてもいいと思う。
高校を卒業すると暖君は地元の大学の医学部に入って、私はマドレーヌポプリンで修行の日々をおくった。医学部は大変そうだったけれど、大学生同士で合コンがあったり女の子からたくさんの告白をうけるようになった暖君は、私に「もっとデートの時間が取れないか?」と聞いてきた。
「ごめん、無理! 私は暖君と違って学生じゃないんだよ。もう社会人なんだ」
「だって、お父さんの店でしょ? 休むことなんて簡単だよね?」
暖君が言った何気ないその言葉は、私を一気に冷めさせたんだ。私はこの仕事に誇りをもっているし、将来お父さんに負けないくらいのシェフになろうと思っている。簡単に休みなんてとれないし、そんな気持ちにはなれないってなんでわかってくれないのかな? もちろん、紬ちゃんにはこんなことは相談できなかったから、兄貴に聞いてみたんだ。
「暖君って間違ってるよね。こんなに頑張っている私に店をずる休みしろ、ってそそのかすなんてさ」
「莉子、人それぞれ生きる世界があって、どれが正解じゃねーーんだよ。暖君の世界はそうでも、莉子の世界はそうじゃねーーってだけさ。どっちも悪くねーーけど、そんなんで壊れるなら、それだけの仲だったってことさ」
そうだよね。確かに、それで壊れたらそれまでだよね。私はいろいろ考えていったん距離を置くことに決めたんだ。
「ごめんね。私は今、この仕事を精一杯しなきゃならないんだよ。だから、それで寂しいって言うのなら、学生は学生同士で、同じ時間のサイクルで生活している彼女をつくりなよ」
私が暖君にそう宣言したのは高校を卒業した年の秋だった。
暖君との恋は一度終わったけれど、紬ちゃんとはラブラブだったよ。紬ちゃんも今大学生で、おまけに都内で滅多に会えなくなった。彼女の休みは土日だし、絵を描き始めると集中するから真夜中に描いて朝方寝ることもある。それは彼女の常識。
一方、私は土日祭日は超絶忙しい。夜中なんかに起きてたら朝の仕込みに起きられないから夜は早く就寝する。生活リズムは全く違う。それでも、お互いラインできるときはして、返信はお互いの都合がいい時に返す。
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