(本編完結・番外編不定期更新)愛を教えてくれた人

青空一夏

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番外編

7 生きたくても生きられなかった人がいる一方で その2(紬視点)

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 生きたくても生きられなかったお母さん(礼子さん)は、今はもうこの世にいない。先日おこなわれた葬儀には、たくさんの方が来てくださった。

 そして今、目の前にいるこの真理子さんは私の産みの母だけれど、距離感は違う星に住んでいるように感じるほど遠い。お金に困っていることや、結月が置き去りにした子供の世話が大変なことを私達に愚痴るけれど、誰も共感はしなかった。

「そうだ。この子を施設に入れるわ。こんな子要らないもの。育てられないし、無理だもの」
 真理子さんはそう言うと二カッと笑った。

「そうやってまた貴女は捨てるんですね。要らないから。無理だから。そんなことばかりしていると、自分も皆から捨てられて誰も周りにはいなくなるのに」

「だって、育てられる余裕がないのだからしょうがないでしょう? あんたは、お金持ちだからそんなことが言えるのよ! 礼子の遺産だってガッポリ入って、自分だってたっぷり稼いでるもんね?」

「この子達は施設になんかいれませんよ。私が引き取りますから。この子達がいなければ生きていけるなら、私が引き受けます」

「紬ちゃん! そんなことしちゃダメだよ! 真理子! お前は疫病神だよ。紬ちゃんの幸せを壊す気かい! 結月の子供なんてなぜ紬ちゃんが育てなきゃならないんだい!」

 お祖母ちゃんは泣きながら真理子さんを責めた。

「お祖母ちゃん。いいんだよ。これはね、お母さん(礼子さん)への恩返しでもあるんだよ。お母さん(礼子さん)は引き取らなくてもいい私を引き取ってくれたんだよ。それで私は愛をいっぱいもらって、今ここにいるんだ。だから、私もお母さん(礼子さん)のしたことと同じ事をしようと思う。お母さん(礼子さん)の遺産もあるし、子供が何人いたってびくともしないよっ!!ね! 柊!」

「あぁ、そうだね。お母さん(礼子さん)の遺産の一部で『多動性障害の子供を応援する組織』みたいなものをつくることも考えているんです。少しでも僕たちはそういうことで悩んでいる人達の助けをしたいなって思っているんです。そんなこともしようとしているのに、血が繋がったこの子達を見捨てるなんてできませんよ」

「ふん! ご立派なことですこと! さすがだわよね。じゃぁ、この子達はここに置いていくわ。そうと決まったら私は帰るわ。やっぱり返すって言われても引き取らないわよ。返すって言われると困るからもう二度とここには来ないわ。あっはは」

 真理子さんは、にやりと笑いながら、猛スピードで帰っていった。昔の私を捨てた時のように・・・・・・可哀想な人だと思う。

「桜に、お兄ちゃんとお姉ちゃんができたよ」

 私はお腹を撫でてそう言った。お母さん(礼子さん)、これって間違ってないよね?窓から入ってくるそよ風が私の髪をゆらせた。まるでお母さん(礼子さん)が撫でてくれたようだった。
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